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ソリトン soliton

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

ソリトン
soliton

線形波動の要素としての波。一定の波形を保ちながら伝播する。浅い水の水面波,気体中のプラズマ,電気回路,格子振動などの問題において,積分可能な非線形波動方程式が数多く知られている。その解は一般に安定なパルスであるソリトンとさざ波とから成るが,エネルギーや運動量の大部分はソリトンによって伝達されるので,これらの体系のふるまいはソリトンの集りの運動として理解される。ソリトンが 1965年に発見されてから,非線形波動現象の理解は革新的な進歩をとげた。磁区などの境界面,生体高分子による信号やエネルギーの伝達,血流など多くの現象がソリトンの概念を用いて論じられている。

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知恵蔵の解説

ソリトン

粒子の特徴をもつ孤立波。波の1つの盛り上がりだけが進む。19世紀前半、英スコットランドの運河で、船が止まった後にできる波として見つかった。この波は非線形方程式の解であることが、理論研究でわかった。互いにぶつかっても姿を変えないなど粒子らしさがあるので、語尾に粒子名のような“on"がついた。安定していて高密度にできるので、光通信などで応用研究が進む。寄り添う波の頂を結ぶ線が孤立波の波形を描き、全体としてソリトンを形づくるとき、包絡ソリトンという。

(尾関章 朝日新聞記者 / 2007年)

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デジタル大辞泉の解説

ソリトン(soliton)

粒子のようにふるまう孤立した波、すなわち空間的に局在する非線形の波動。伝播(でんぱ)するときにも波形や速度を変えず、また互いに衝突しても形を変えずに通り抜ける性質をもつ。1965年に米国のN=J=ザブスキーとM=D=クルスカルが発見し、命名した。

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百科事典マイペディアの解説

ソリトン

孤立波solitary waveとも。エネルギーが集中し,その形を変えずに伝わっていく波。このような波が出会うと,衝突後もそれぞれの形を保ちながら離れていく。水面を伝わる孤立波に初めて注目して研究したのは,スコットランドの造船技術者ラッセルJohn Scott Russel〔1808-1882〕で,それ以来,多くの人によって孤立波の研究が続けられてきた。
→関連項目孤立波

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大辞林 第三版の解説

ソリトン【soliton】

孤立した非線形の波動で、波形や速度を変えずに伝播でんぱし、衝突しても互いに波形が変わらずに通りぬける性質をもつもの。1965年にアメリカのザブスキーとクルスカルが数値解析によりこの性質の波動を見つけ、ソリトンと名づけた。物理学の各分野で、また数学的にも重要な概念になっている。孤立波。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ソリトン
そりとん
soliton

線形現象の一つで、非線形方程式に従う、粒子のようにふるまう孤立波。波形や速度などの性質を変えずに伝搬し、互いに衝突しても、その性質を変えずに、互いを通り抜ける波のこと。1965年にザブスキーNorman Zabusky(1929― )とクルスカルMartin Kruskal(1925―2006)が、KdV(コルトベーク・ド・フリースKorteweg-de Vries)方程式を研究中に、同じ方向に進む孤立波どうしが、追い越しの前後で波形を変えずに粒子のようにふるまう数値解を発見。粒子性をもつ波として、孤立波の英語solitary waveに粒子を表すときに使う-onを加味して、ソリトンと名づけられた。量子力学の逆散乱問題(物理現象の因果関係を逆方向にたどる)を応用すると、この方程式が解析的に解けることがわかり、KdV方程式以外にも、非線形シュレーディンガー方程式、サイン・ゴルドン方程式、戸田格子方程式などの分散性非線形方程式に応用が広がっている。ソリトンは波動問題だけでなく、物性物理、微分幾何学、場の量子論などに広く応用されている。とくに、安定して高伝送容量にできる光ソリトンを使った光通信システムの高度化に対する期待が高まり、実用化に向けて大きく進展している。[山本将史]

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世界大百科事典内のソリトンの言及

【孤立波】より

…しかし非線形の方程式は一般に解を求めることが困難な場合が多く,これらの方程式に従う非線形波動の研究が著しく発展したのは,20世紀の後半,電子計算機で非線形方程式を数値的に解くことが容易にできるようになってからのことである。 1966年にN.J.ザブスキーとM.D.クラスカルは計算機による数値実験の結果,コルテベーグ=ド・フリース方程式を満たす波の中にいくつかの鋭い孤立波が現れ,それらが互いにほぼ独立に運動することや,衝突すると互いに相手の中を通り抜けてそのまま進行を続けることなどを見いだし,このような孤立波をソリトンsolitonと名付けた。その後,他の非線形波動方程式においてもソリトンが発生することがわかった。…

【素励起】より

… 今まで例として述べた素励起では,異なる運動量をもつ状態の間の相互作用は弱いが,場合によっては,その相互作用が強く,それに起因する非線形性を通して空間に局在した例も可能である。このような素励起はソリトンsolitonと呼ばれる。【福山 秀敏】。…

【非線形力学】より

…これはもちろん可積分系であり,各振動子の変位のフーリエ分解によって固有モードが得られ,さらに波数の連続体近似によって線形波動方程式,で表されることになる。 一方,一次元非線形波動を示す典型として古くからKdV(コルトベーグ=ド・フリース)方程式,が知られていたが,やはり1960年代の終りにその局在進行波解が発見され,ソリトンsolitonと名づけられた。戸田は(4)を展開せずに連続体近似するとそれがKdV方程式となることを示し,また(4)の素解の中にソリトンに相当するものを発見した。…

※「ソリトン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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