タカナ(読み)たかな

日本大百科全書(ニッポニカ) 「タカナ」の意味・わかりやすい解説

タカナ
たかな / 高菜
[学] Brassica juncea Czern. var. integrifolia (Stokes) Kitam.

アブラナ科(APG分類:アブラナ科)の越年草。中央アジア原産の葉菜。カラシナの仲間であるが、葉は広く多肉質で、葉縁の切れ込みはなく、長さ60~80センチメートルと大きい。古く中国を経て日本に伝えられたもので、中国大陸で品種分化が進み、中国大陸南部、台湾、マレー諸島、インドなどでは品種も多く、重要野菜の一つとなっている。日本では、ナガサキタカナ(長崎高菜)、オオバタカナ(大葉高菜)、カワゴエナ(川越菜)、カツオナ(鰹菜)、アオバタカナ(青葉高菜)、ヒロシマムラサキタカナ(広島紫高菜)、ミイケタカナ(三池高菜)などの品種がある。温暖な気候に適し、おもに西日本に栽培されるが、盛岡市のナンブバショウナ(南部芭蕉菜)、山形市のセイサイ(青菜)など、東北地方に伝わって土着した品種もあり、地域の漬物用として栽培されている。秋に播種(はしゅ)して、暖地では2~3月に収穫するが、東北地方では寒さで枯れるので、雪の降る前に収穫する。

[星川清親 2020年11月13日]

食品

日本でのおもな利用法は葉の漬物である。一例をあげれば、福岡県三池(みいけ)のミイケタカナは漬物として企業化され、大量に栽培されている。山形県の青菜(せいさい)漬けは蔵王(ざおう)のスキー場土産(みやげ)物として知られる。和歌山県のめはりずしは、おいしさに目を見張るの意味で、タカナの葉の漬物で包んだすしである。タカナはまた煮て食べてもよい。福岡県博多(はかた)地方のカツオナは、博多名物ちり鍋(なべ)に欠かせない野菜で、うま味が強く、かつお節のかわりになるということから、その名がつけられている。

[星川清親 2020年11月13日]


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改訂新版 世界大百科事典 「タカナ」の意味・わかりやすい解説

タカナ (高菜)
Brassica juncea (L.) Czern.et Coss.var.integlifolia (Stokes) Sinsk.

アブラナ科の一年草。西アジア原産の種子からマスタードをつくるカラシナは,中国で葉菜として多くの品種が育成されたが,タカナはその一つである。野菜としてのカラシナ類の栽培は古く,日本へは奈良時代~平安時代初期のころ中国から渡来したものらしい。葉は一般に切れ込まず大型で幅が広い。中肋は細いものや広いものがあり,断面は半月形をしている。葉色は緑色または紫色を帯びるものがある。また葉面がちりめん状になるものもある。九州で多く栽培され,〈長崎タカナ〉〈三池タカナ〉〈カツオナ〉などの品種がある。多肉性タカナは古く中国より導入されたが,現存のものは1905年に四川省から導入されたもので,日本の各地に土着し,〈山形青菜〉や〈柳河タカナ〉となった。タカナ類は最近では関東でも栽培が増えている。おもに漬物にするが,油でいためてもよい。
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栄養・生化学辞典 「タカナ」の解説

タカナ

 [Brassica juncea(integliflolia group)].フウチョウソウ目アブラナ科アブラナ属の越年草.カラシナの変種の一つ.食用にする.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のタカナの言及

【カラシナ(芥子菜∥芥菜)】より

…また春先にとう立ちした花茎も柔らかく利用することができる。カラシナは東アジアで多くの品種が分化しており,ネカラシナ,キガラシ,セリフォン,銀糸芥(ぎんしかい),アザミナ,タカナ,多肉性タカナ,大心菜(だいしんさい)(ザーサイ)などが含まれる。芥子【平岡 達也】【新田 あや】 カラシナの野生種はセイヨウカラシナで,関東以西の都市近郊の河川敷や堤防を中心に帰化している。…

※「タカナ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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