同害刑と訳され,〈目には目を,歯には歯を〉の語で表現されている刑罰である。最古には許されていた無制限の復讐(フェーデ)を制限して,受けた害と同一の害を加害者側に加えることしか許さない制裁形態である。この点で,最古の状態からは一歩前進した刑罰形態である。制裁の主体は,本来は被害者ないしその親族であるが,徐々に国家的機関がこれに取って代わる傾向がある。同害刑は,現実には,生命および身体に対する危害の場合にもっとも多く行われる。同害刑の理念は,極端には,報復のための加害の形態も同じであることを要求する。例えば,妊婦を殴打して流産させた場合に,殴打者の妊娠した妻を殴打して流産させるといったごとくである。しかし,現実には,そこまでは徹底していない。また同害刑は反映刑spiegelnde Strafeの一種である。反映刑とは,刑罰が加えられる理由は刑罰自体が語るべきであるとの理念に基づくものであって,この場合に,刑罰には犯罪事実が反映させられる。例えば,火災時の窃盗の場合の火刑のごときものであって,これには同害刑と共通するものがある。同害刑は,ハンムラピ法典をはじめ古代オリエントの諸法やイスラム法には強く現れているが,アーリヤ系民族の場合には,その痕跡は,希薄であるか,皆無である。
執筆者:塙 浩
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同害報復刑、反座刑ともいう。被害者が受けたと同種の害を加害者に加え、または同種の方法で加害者を害するものである。タリオの語は、古代ローマの十二表法の規定「もし彼が他人の四肢を分離せしめ、妥協ととのわざるときは、タリオたるべし」(第八表2)に由来するが、すでに古く『ハムラビ法典』や『旧約聖書』の「出エジプト記」やコーランにもみられる。このようなタリオは、前記のほか古代ギリシアや古代中国においてもみられるが、ゲルマンやインドにはなかったとされている。多くの場合タリオは比較的早い段階で消滅し、国家の定める特定の刑罰か、あるいは財産による損害賠償へと変化したが、その基本的考え方は応報であり、この考え方は刑罰の歴史に大きな影響を与えた。
[佐藤篤士]
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…このようにして刑罰は復讐の中にまず姿を現し,しかも,復讐行為は完全な適法行為たる性格を持つ。しかし,時とともに比較的早くに一部では,復讐が無制限に広がることを,一つには同害報復すなわちタリオ(同害刑)により,また一つには加害者を委付することにより制限する傾向が生じる。中央権力の多少の成長とともに,裁判が出現しても,復讐制は並存し,しかも,裁判は被害者(原告)による弾劾を原則とすると同時に賠償金主義をとるにすぎない。…
※「タリオ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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