日本大百科全書(ニッポニカ) 「フェーデ」の意味・わかりやすい解説
フェーデ
ふぇーで
Fehde ドイツ語
中世西ヨーロッパで、封建貴族や都市間に行われた合法的私戦。中世封建社会では、すべての自由人に、侵害された自己の権利を、裁判手続に訴えることなく、実力で回復する権利が認められていた。この実力行使の結果発生する戦いがフェーデであった。ゲルマン古来の「血の復讐(ふくしゅう)」から発展したものであるが、一定の形式的手続を踏む必要があった点で、「血の復讐」と区別される。たとえば、3日以内に相手に通告しなかった場合は、合法的フェーデとは認められなかった。10世紀以降、教会を中心に、「神の休戦」「神の平和」という形で、フェーデを制限・禁止しようとする動きがおこり、有力諸侯や国王はこれを利用して、領内の治安維持、警察権を自己の手に集中しようと努め、ここから近代的国家権力が発展していった。ドイツでもたびたびラント平和令が発布されたが、領邦的分裂が著しかったため実効をもたず、1495年の「永久平和令」は、いちおうフェーデの全面的非合法化を達成したとはいえ、中世末から近世初頭にかけて貴族や騎士や都市間のフェーデは、ほとんど日常の現象となっていた。
[平城照介]