チガヤ(その他表記)Imperata cylindrica(L.)P.Beauv.var.major(Nees)C.E.Hubbard

改訂新版 世界大百科事典 「チガヤ」の意味・わかりやすい解説

チガヤ
Imperata cylindrica(L.)P.Beauv.var.major(Nees)C.E.Hubbard

山地原野日当りのよい草地,河原や河川堤防などに群生するイネ科多年草。地下に細長い根茎が横にはう。茎は散生して,細く,高さ30~70cmで,2~3節があり,葉は2~3枚で,線形,長さ20~40cm,幅は7~12mm,先端はしだいに長くとがり,節にはふつう毛があるが,この節に毛がある品種をフシゲ(節毛)チガヤ,毛のないものをケナシチガヤとして区別する。初夏に花が咲く。茎の先に長さ10~20cm,幅1cmくらいの白い尾状の花序を出し,やや一方に傾く。元来円錐花序であるが,短い枝が主軸に沿って立つのと,小穂に長く白い絹毛が多いので全体に単穂状に見える。小穂は披針形で,長さ4mmくらい,基盤に長さ12mmほどの絹毛が束生する。日本全土から中国,東南アジア,インド,アフリカに広く分布する。学名の基本変種I.cylindrica(L.)P.Beauv.は茎の節に毛のないやや大型の種で地中海地方に見られる。根茎が漢方薬の白茅根(はくぼうこん)で,止血利尿発汗の効がある。チガヤの若い花序がまだ葉鞘(ようしよう)内にあるものは甘味があり,子どもはツバナといって食べる。小穂は絹毛が多いので詰物に,またかつては火口(ほくち)に使われた。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「チガヤ」の意味・わかりやすい解説

チガヤ
ちがや / 血茅
[学] Imperata cylindrica (L.) Raeusch. var. koenigii (Retz.) Pilg.
Imperata cylindrica (L.) Beauv. var. major (Nees) C.E.Hubbard

イネ科(APG分類:イネ科)の多年草。根茎は鱗片(りんぺん)に覆われ、発達して深く地中を横にはい、きわめてじょうぶで、地上部が焼き払われても枯死しない。稈(かん)は直立し、高さ30~80センチメートル。4~6月、稈頂に白毛に覆われた円柱状の円錐(えんすい)花序をつくる。小穂は長さ約4ミリメートル、小花は2個。小穂は対(つい)をなしてほぼ同形、基盤とともに白い長毛がある。小穂は成熟すると脱落しやすいが、小花穂の軸と花序の分枝は長く残る。雄しべは2本。日当りのよい平地に群生し、日本全土、およびアジア、アフリカ、ヨーロッパの暖地に広く分布する。若い花序は甘味があり、ツバナ(茅花)と称し、子供が食べる。

[許 建 昌 2019年8月20日]

薬用

地下を長く横に走っている細い根茎を、漢方では茅根(ぼうこん)または白(はく)茅根と称する。これには、利尿、止血作用のほか、身体内部の熱を除く作用(清熱)があるため、小便不利、浮腫(ふしゅ)、血尿、鼻血、吐血、口渇、腎炎(じんえん)、黄疸(おうだん)、肺炎などの治療に用いる。また、蟯虫(ぎょうちゅう)駆除作用もあるといわれている。

[長沢元夫 2019年8月20日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「チガヤ」の意味・わかりやすい解説

チガヤ
Imperata cylindrica var. koenigii; cogon grass

イネ科の多年草で各地の原野や川の堤などに群生する。アジア,アフリカの温帯から熱帯に広く分布し,また北アメリカに帰化している。白色の細長い根茎が地中を長くはってふえる。稈は細く節に毛をもち,線形の葉が互生する。春に円錐花序をなして多数の花をつける。この花をツバナと呼ぶことがある。根茎は利尿,止血などの薬用とされ,甘味剤にもされる。秋に,葉が赤くなるので,盆栽として観賞されることもある。

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百科事典マイペディア 「チガヤ」の意味・わかりやすい解説

チガヤ

イネ科の多年草。日本全土の野原や堤防に普通にはえ,アジア,アフリカの暖帯に広く分布する。長い地下茎から束生する茎は高さ30〜70cmで,節には白毛がある。春に開花。花穂は円柱形で,小穂の基部から出た白い長軟毛に包まれる。若い花穂はツバナ(茅花)といい,甘味があり,食べられる。地下茎は薬用(茅根(ぼうこん))とする。

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世界大百科事典(旧版)内のチガヤの言及

【カヤ(茅∥萱)】より

…ススキ,オギ,チガヤなど,主として屋根をふく材料に用いられるイネ科の植物の総称。古来〈刈屋(かりや)の約〉とか〈上屋(かや)の意〉などその語源について諸説があるが,金思燁によれば〈茅〉にあたる古代朝鮮語が,母音子音ともに日本語の〈カヤ〉に対応しており,朝鮮語に基づく可能性が強い。…

【ちまき(粽)】より

…また,《古今名物御前菓子図式》(1761)には,葛(くず)ちまき,小倉ちまきなどの記載があり,これらは葛,ようかん,ういろうを材料とした水仙ちまき(葛ちまき),ようかんちまき,ういろうちまきなどとして現在でも端午の節句が近づくと菓子屋の店頭で見ることができる。ところで,日本語のちまきは飯や餅をチガヤなどの葉で巻き込んだための名であり,漢字を使うようになったとき,これに〈粽〉の字をあてたものである。文字とともに中国での風習も導入された結果,5月5日の節物として認識されることが多くなったわけだが,今でも全国的に見れば盆や正月の食物としているところも少なくない。…

※「チガヤ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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