二つのプレートがその境界に沿って相互に横にずれ動く時に生成される断層(図)。海洋底拡大説の中からまったく新しく誕生した概念で,カナダのウィルソンJ.Tuzo Wilson(1908-93)によって1965年にはじめて提案された。トランスフォームとは一つの収束型または発散型のプレート境界(それぞれ海溝(T)と中央海嶺(R)に対応する)から別のプレート境界へ置き換える,または変換するという意味で,R-R型,R-T型,T-T型のトランスフォーム断層が存在するが,海嶺と海嶺をずらしてつなぐR-R型が最も数が多い。
トランスフォーム断層沿いには,ずれの向きに平行な水平横ずれを示す発震機構をもつ浅い地震がひんぱんに起こる。断層崖を潜水艇から観察して,横ずれによってつくられたとみられる破砕粘土やずれあとを見いだしたとの報告もある。
トランスフォーム断層は隣りあう中央海嶺と垂直である必要はなく,かなり斜めなものもいくつか知られている。しかし,中央海嶺に上昇してくるマントル物質の流動特性を考えると,海嶺とトランスフォーム断層が直交するときが最もエネルギー損失が小さいので,海嶺と断層はしだいに直交する傾向をもつ。
トランスフォーム境界が完全に横ずれでなく,わずかながらも発散の成分をもつ時には,トランスフォーム断層に沿って少しずつ海底が生成拡大する。これをもれ型トランスフォームとよび,カリフォルニア湾内にはそのような状態が進行中である。
北アメリカ西部のサン・アンドレアス断層はトランスフォーム断層が上陸したものである。細かく見ると,ところどころで二次的な断層を伴っている。
→断裂帯
執筆者:小林 和男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
プレート境界の一つで、これに沿って横ずれ運動が生じる断層。1965年にカナダのウィルソンJ. T. Wilson(1908―1993)によって命名された。海嶺(かいれい)では新しいプレートが生産され、海溝ではプレートが沈み込んで消費される(消滅する)のだが、トランスフォーム断層は横ずれ境界のため、プレートが生産されることも消費されることもない。海嶺と海嶺を結ぶものがもっとも多いが、海嶺と海溝、海溝と海溝を結ぶものも知られている。海嶺と海嶺を結ぶトランスフォーム断層は大西洋中央海嶺などで多くみられる。
海嶺を見かけ上、右ずれになるようにずらしているとき、トランスフォーム断層では左横ずれ運動が生じており、左横ずれに起因する地震が発生する。トランスフォーム断層は、通常の横ずれ断層とは異なり、断層のどの部分でも変位量は一定であり、その両側の海嶺の位置で突如、断層が消滅する。これは、海嶺を過ぎると両側のブロックで相対運動がなくなるためである。相対運動がなくなった部分は、断層破砕があるため断裂帯(フラクチャーゾーンfracture zone)とよばれるが、断層としては活動しないため地震は発生しない。また、トランスフォーム断層では、断層の長さよりも変位量が大きくなることがおこりうる。トランスフォーム断層に沿って急峻(きゅうしゅん)な海底谷(こく)が走っていることが多く、谷壁には海洋地殻深部の斑糲(はんれい)岩、超塩基性岩などが露出している。北アメリカ西海岸のサンアンドレアス断層は、海嶺と海嶺とを結ぶトランスフォーム断層が陸上に現れている例とされている。
[村田明広]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
(斎藤靖二 神奈川県立生命の星・地球博物館館長 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
… すれ違うプレート境界ではプレートの生産も消費も起こらず,両側のプレートがこすれ合って地震帯が生じる。これがトランスフォーム断層で,その端はどこかで中央海嶺や海溝などの他のプレート境界とつながっている。海嶺と海嶺をつなぐトランスフォーム断層は中央海嶺に普遍的にみられる。…
…(3)二つのプレートが水平にすれ違って動いている境界。この境界面をトランスフォーム断層という。北米西岸のカリフォルニア州を縦走するサン・アンドレアス断層はこの例である。…
※「トランスフォーム断層」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新