断裂帯(読み)だんれつたい(その他表記)fracture zone

改訂新版 世界大百科事典 「断裂帯」の意味・わかりやすい解説

断裂帯 (だんれつたい)
fracture zone

トランスフォーム断層の延長上の海底に見られる崖状または溝状の細長い地形中央海嶺を切るトランスフォーム断層上では,横ずれ型の地震がしばしば起こるが,その海溝両側の延長上には横ずれは存在しないから地震は起こらない。しかし,断層を隔てた海底の年齢の差は延長上どこまでも続く。水深は海底の年齢が古いほど深いので,断層の延長線上に時には高さ1000mに達することもある崖状の地形ができる。北緯40°付近の北アメリカ西岸沖からハワイ付近まで約4000kmもほぼ東西に直線的に続いているメンドシノ断裂帯はその典型である。東太平洋ではメンドシノ断裂帯と平行に,約600kmの間隔をおいてマレー,モロカイ,クラリオン,クリッパートン,ガラパゴス,マルケサス,イースターなどの断裂帯がある。大西洋インド洋の断裂帯は崖の下にも海嶺状の高まりがあって,見かけ上は谷状の地形をしている。谷底の水深はかなり深く,壁面にはやや変成した斑レイ岩や蛇紋岩化したカンラン岩など地殻マントル深部に由来する岩石が露出している所もある。大西洋のチェーン,ロマンシュ,ビーマ,チャーリー・ギブズ,インド洋のオーエンなどの断裂帯が知られている。

 断裂帯に沿って磁気異常の縞模様も大きくずれている(縞状磁気異常)。地形が確認される前に,磁気異常のずれとして発見された断裂帯も多い。断裂帯の走る方向は,かつての海底拡大の方向をそのまま残しているから,過去プレート運動を知る上で断裂帯の研究は重要である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「断裂帯」の意味・わかりやすい解説

断裂帯
だんれつたい

海底地形が著しく不連続になっている所。海底地形図をみると、所々で海底が切断されたり、食い違ったりしているようにみえる場所があるが、こうした地帯をいう。断裂帯は一種の大断層であるが、成因は通常の横ずれ断層とまったく異なる。これは、海嶺(かいれい)の中軸谷と直角方向に生じた亀裂(きれつ)が、海洋底拡大とともに成長したものと考えられる。

 東部太平洋でみられる断裂帯は2000~3000キロメートルにわたり直線的で、東西方向にほぼ等間隔で何本も並行して走っており、それらを境に海底に南北で数百メートルの段差がみられ、比高2000~3000メートルに及ぶ海底崖(がい)をなしている所もある。水平方向のずれの量は、地磁気の縞(しま)模様などから数百キロメートルに達すると推定される。大規模な断裂帯は東部太平洋に多くみられるが、同様な構造は各地に存在している。

[勝又 護]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「断裂帯」の意味・わかりやすい解説

断裂帯
だんれつたい
fracture zone

大洋底の中央海嶺から出て,それに直交する方向に走る巨大な海底断層崖。東北太平洋には北からメンドシノ断裂帯マレー断裂帯クラリオン断裂帯など,長さ 3000~4000km,垂直変位が 2000~3000mに及ぶ巨大な断裂帯が東西に平行に走っており,ハワイ沖まで達している。断裂帯を境にして地殻の厚さや重力も異なっており,断裂帯が地殻深くまで及んでいることを示している。断裂帯は中央海嶺でトランスフォーム断層として生じた地殻の不連続が,大洋底の拡大とともに遠くまで及んだものと考えられている。

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岩石学辞典 「断裂帯」の解説

断裂帯

地殻の最上部地帯で,ここの岩石は極限強さ(ultimate strength)よりも軽い重量が加わる状態である[Van Hise : 1896].この条件では岩石は破砕により変形が行われる.

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世界大百科事典(旧版)内の断裂帯の言及

【海底地形】より

… 大陸棚外縁shelf edgeshelf break―傾斜の著しい増加が起こる大陸棚の外縁の狭い地帯。 断裂帯fracture zone急峻な斜面または非対称断面を有する海嶺,舟状海盆または海底崖によって特徴づけられる不規則な海底地形を有する非常に長い直線状の地帯。 地形区province周囲の地域と著しい対照的特徴をもつ一群の類似した地形によって区別される地域。…

【海底地形】より

…これはプレートが離れていくという考え方によって説明できる。プレートが生産され離れていくにしたがい,トランスフォーム断層の痕跡は大洋底に伸び出し断裂帯を形成する。断裂帯は海山,トラフ,海底崖などを伴うきわめて細長い地帯で,プレート運動の方向を示す過去の構造帯であり,地震活動はみられない。…

※「断裂帯」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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