ウクライナ南東部にある世界有数の大炭田。原語を略してドンバスともいう。ドン川支流のドネツ川沿岸に位置し、炭田の東部はロシア連邦の北カフカス地区に入り込んでいる。面積4100平方キロメートルにも及ぶ同地には莫大(ばくだい)な原料炭埋蔵量があるばかりでなく、ソ連の無煙炭埋蔵量の大部分が賦存していた。地区別では東部に無煙炭、西部に原料炭を産出する。夾炭(きょうたん)層は古生代石炭紀に形成されたもので、海成層と淡水成層の互層からなっている。炭質は灰分ならびに硫黄(いおう)分が多いという欠点があるが、ソ連の中心部に存在し、付近に鉄鉱採掘地およびウクライナ工業地帯を控えているなどきわめて地の利に恵まれていたため、古くからソ連第一の産炭地として発展してきた。年生産量は1980年代に2億3000万トンを超えたこともあったが、1990年代に入ると生産量は大幅に減少し、約6000万トン程度になった。
炭層は炭田中央部で200枚を超えるが、半分近くは0.45メートル以下の薄層である。残りの炭層も比較的薄く、大部分1.75メートル以下である。炭層の傾斜も緩傾斜から急傾斜までさまざまである。また、当炭田は開発の歴史が古いため、炭坑の深部化も進んでいる。稼行深度は平均で600メートルを越え、出炭の35%以上は700メートル以深からもたらされている。深部化に伴ってガス突出の発生も増加し、これに対する対策と研究が熱心に行われている。急傾斜炭層は炭質がよく、ガス突出の危険が少ないため、急傾斜および薄層の機械化採炭に対する関心が高まり、技術開発が進められている。さらに緩傾斜層についても採炭区画の上部から下方へ向かって採炭を進める卸向き採炭法や、逆に下部から上方へ向かって採炭を進める昇り向き採炭法などを採用し、深部移行に伴う生産規模の拡大を図っている。
[木下重教・樋口澄志]
ウクライナ東部とロシアにまたがる大炭田。ドンバスDonbassとも呼ばれる。炭田のある領域は約6万km2で,深さ1800m未満。埋蔵量は約1900億tといわれ,褐炭から無煙炭までさまざまな炭種のものがあるが,その大半はコークス用強粘結炭である。大規模な複向斜で夾炭層は石炭紀に属し,総炭層数は300をこえる。そのうち炭厚が0.40~2.5mのものが約100枚あるが,その多くは1~1.2m以下で1.8~2.5mのものは少ない。石炭紀下部では,採炭対象となるのは炭田の南西部と西部に分布し,炭厚平均0.7~0.8mの炭層が4~8枚ある。石炭紀中部では炭層数が最も集中している地区では30枚に達するが,可採炭層数は東と北に向かって規則的に減少し,炭層の薄化,分岐も著しい。石炭紀上部は薄い炭層が多い。おもな炭坑のあるのは,ドネツク,マケエフカ,ゴルロフカGorlovka(以上ウクライナ),シャフティ(ロシア)などである。薄い炭層と深部化のため,生産量は年々減少しつつある。北にいくと岩塩,カリ塩なども産し,化学工業都市も育っている。地表は乾燥したステップのゆるい丘陵で,標高は200~300m程度,地表は黄土の変化した褐色土がおおう。経済地理的には,この地方とはるか西方のドニエプル沿岸諸都市,大型水力発電所,鉄鉱石産地等と一体とされてドネツ・プリドニエプル経済地域が設定されている。基幹産業部門,機械工業部門,エネルギー部門の突出した重工業地帯であるほか,酪農,テンサイなどを含む発達した農業地帯でもあり,交通の便もきわめてよいという特色をもつ。
執筆者:渡辺 一夫+大橋 脩作
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…(1)クリボイ・ログ地方(ドニエプロペトロフスク州) 鉄鉱石の豊富な埋蔵地で,1881年以来採鉱されており,鉄の含有率は68%に達する。(2)ドネツ炭田(ドンバスとも呼ぶ。ルガンスク州とドネツク州) 豊富な石炭埋蔵量を誇り,推定埋蔵量は635億~762億t。…
※「ドネツ炭田」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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