無煙炭(読み)むえんたん(英語表記)anthracite

翻訳|anthracite

日本大百科全書(ニッポニカ)「無煙炭」の解説

無煙炭
むえんたん
anthracite

もっとも石炭化度の高い石炭で、JIS(ジス)(日本工業規格)では燃料比(固定炭素と揮発分の比)4.0以上のものと定義している。炭素含有量が90%以上あり、黒色の半金属光沢を有し、電気抵抗も急激に低下(1010Ω・cm以下)する。非粘結性で揮発分は少なく、燃焼するときは短い炎で燃え、煙をほとんど出さない。これが無煙炭の語源となっている。古くはそのまま燃料にするか、あるいは練炭、炭素れんがなどの原料として重宝されていた。産業用としては、鋳物用コークスの原料や高炉への吹込み原料として用いられる。ほとんど液化はしないが、ガス化原料としては使える。瀝青炭(れきせいたん)に近いものを半無煙炭といい、高炉用コークス製造用の配合原料としての用途もある。同じく炭素含有量が90%以上あるが灰色を呈する比較的多孔質の石炭があり、煽石(せんせき)とよばれる。これは、地中でマグマの作用によって急速に乾留作用を受けて生成したもので、無煙炭とは区別される。

[大内公耳・荒牧寿弘]

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百科事典マイペディア「無煙炭」の解説

無煙炭【むえんたん】

石炭のJISによる4分類(褐炭亜歴青炭歴青炭・無煙炭)の一つで炭化度の最も高いもの。黒色で金属のような光沢をもち,青黄色の炎を出して燃え,ほとんど煙を出さない。炭素の含有量は日本産のものでだいたい79〜91%,発熱量8000kcal/kg以上。一般に古生代の地層に多いが,日本には新生代の石炭が無煙炭化したものが多い。火付きは悪いが火力が強く燃料,ガスやカーバイドの原料,練炭・豆炭の原料として珍重され価格も高かった。より炭化度の進んだものを(せん)石(天然コークス)といい,石灰焼成などに使用。
→関連項目アパラチア炭田一般炭練炭

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「無煙炭」の解説

無煙炭
むえんたん
anthracite

炭化が進んで煤煙を出さないで燃焼する石炭。固定炭素の含有量は 93~95%以上。揮発分が少いため短炎で燃える。非粘結性でコークスにはならない。着火点が約 490℃で火はつきにくいが,火力が強く一定温度を保って燃え続ける。比重 1.3~1.8。外国の無煙炭は古生代のものが多いのに対し,日本の無煙炭は新生代古第三紀で若い地質時代のものが多く,火成岩の貫入や地殻変動によって急に炭化が進んでできたものである。筑豊炭田の煽 (せん) 石,天草炭田の瓦ヶ炭などがこの顕著な例。用途は燃料,練炭,電極の原料など。

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化学辞典 第2版「無煙炭」の解説

無煙炭
ムエンタン
anthracite

石炭化度のもっとも高い石炭.工業分析で求めた水分や揮発分が少なく,一方,固定炭素は多い.元素分析で測定した炭素量は,通常,90質量%(daf)以上で,粘結性は示さない.JIS規格では,燃料比(=固定炭素/揮発分)が4.0以上の石炭をさす.日本では,鉄鉱石焼結,ニッケル精錬,れん炭・豆炭用としておもに利用されている.[別用語参照]石炭の元素分析

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岩石学辞典「無煙炭」の解説

無煙炭

最も石炭化した石炭で,しばしば硬炭(hard coal)と同義に用いられる.比重は1.3~1.8,黒色亜金属光沢を示す.ほとんど煤煙を出さず,短焔または無焔で燃焼する.着火は遅いが火力は強い.固定炭素の含有量は普通93~95%.無烟炭も同義.

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世界大百科事典 第2版「無煙炭」の解説

むえんたん【無煙炭 anthracite】

石炭類を石炭化度によって4区分(無煙炭,歴青炭,亜歴青炭,褐炭)に分類する場合,最も石炭化度の高いものを無煙炭という。生成地質年代としては古生代のものが多いが,生成年代が若い石炭でも火山作用による熱の影響で無煙化している場合があり,日本ではこれを煽石(せんせき)と呼び工業規格の分類上はこれも無煙炭に含めている。外観は黒光りしており,質は緻密(ちみつ)で堅い。成分として炭素分が多く揮発分が少なく,燃えるときは青黄色の短い炎をあげ,煙はほとんど出ない。

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