翻訳|anthracite
石炭類を石炭化度によって4区分(無煙炭,歴青炭,亜歴青炭,褐炭)に分類する場合,最も石炭化度の高いものを無煙炭という。生成地質年代としては古生代のものが多いが,生成年代が若い石炭でも火山作用による熱の影響で無煙化している場合があり,日本ではこれを煽石(せんせき)と呼び工業規格の分類上はこれも無煙炭に含めている。外観は黒光りしており,質は緻密(ちみつ)で堅い。成分として炭素分が多く揮発分が少なく,燃えるときは青黄色の短い炎をあげ,煙はほとんど出ない。火付きは悪いが発熱量は高く火力が強いので,家庭用,鉄道用,船舶用(とくに軍艦)の燃料として,練炭や豆炭に加工した形も含めて珍重され,価格も高かった。近年は,これらの消費先がほとんど石油・ガスに移り,無煙炭の需要は減退している。国内では,昭和30年代から40年代の初めにかけて200~250万tの生産があったが,現在はほとんどゼロである。しかし化学工業用や電極製造用に特殊な用途があるので,昭和30年代後半からの年間100万t前後の輸入が続いていた。平成に入ってその量は増加傾向となり,95年には356万tを輸入している。無煙炭の資源は比較的少なく,世界の石炭類の確認可採埋蔵量(石炭当量換算)の約5%である。ロシア,インド,アメリカに多く,量は少ないが朝鮮半島やベトナムでは埋蔵量のほとんどが無煙炭である。無煙炭のなかで比較的揮発分の多いものを,半無煙炭semi-anthraciteと呼ぶこともある。
執筆者:穂積 重友
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もっとも石炭化度の高い石炭で、JIS(ジス)(日本産業規格)では燃料比(固定炭素と揮発分の比)4.0以上のものと定義している。炭素含有量が90%以上あり、黒色の半金属光沢を有し、電気抵抗も急激に低下(1010Ω・cm以下)する。非粘結性で揮発分は少なく、燃焼するときは短い炎で燃え、煙をほとんど出さない。これが無煙炭の語源となっている。古くはそのまま燃料にするか、あるいは練炭、炭素れんがなどの原料として重宝されていた。産業用としては、鋳物用コークスの原料や高炉への吹込み原料として用いられる。ほとんど液化はしないが、ガス化原料としては使える。瀝青炭(れきせいたん)に近いものを半無煙炭といい、高炉用コークス製造用の配合原料としての用途もある。同じく炭素含有量が90%以上あるが灰色を呈する比較的多孔質の石炭があり、煽石(せんせき)とよばれる。これは、地中でマグマの作用によって急速に乾留作用を受けて生成したもので、無煙炭とは区別される。
[大内公耳・荒牧寿弘]
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石炭化度のもっとも高い石炭.工業分析で求めた水分や揮発分が少なく,一方,固定炭素は多い.元素分析で測定した炭素量は,通常,90質量%(daf)以上で,粘結性は示さない.JIS規格では,燃料比(=固定炭素/揮発分)が4.0以上の石炭をさす.日本では,鉄鉱石の焼結,ニッケル精錬,れん炭・豆炭用としておもに利用されている.[別用語参照]石炭の元素分析
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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