コトバンクはYahoo!辞書と技術提携しています。

ナトリウムと代謝異常 なとりうむとたいしゃいじょう

家庭医学館の解説

なとりうむとたいしゃいじょう【ナトリウムと代謝異常】

 血液中のナトリウム濃度が正常以下に低下している状態を低ナトリウム血症、正常以上に上昇した状態を高ナトリウム血症といいます。
◎低(てい)ナトリウム血症(けっしょう)
 ナトリウム濃度が、135mEq/ℓ(ミリ当量毎リットル)以下に低下しています。
●原因
 原因としては、つぎのような場合があります。
①脱水時に、水分よりもナトリウムのほうが多く失われた場合
 ナトリウムが、嘔吐(おうと)や下痢(げり)などにより失われたり、広範囲のやけどなどで皮膚から失われたり、副腎皮質機能低下症(ふくじんひしつきのうていかしょう)(アジソン病など)や利尿薬(りにょうやく)などにより腎臓(じんぞう)から失われたりしたときにおこります。また、急性膵炎(きゅうせいすいえん)では腹腔内(ふくくうない)に、腸閉塞(ちょうへいそく)では腸管内にナトリウムが失われてもおこります。
②体内の総ナトリウム量は増加しているのに、それを上まわる水分がたまり、血液中のナトリウムが薄められた場合
 慢性心不全(まんせいしんふぜん)(「心不全とは」)や慢性腎不全(まんせいじんふぜん)(「慢性腎不全」)、肝硬変(かんこうへん)(「肝硬変」)、ネフローゼ症候群(「ネフローゼ症候群」)などの病気によって現われる浮腫(ふしゅ)(むくみ)にともなっておこります。
③浮腫をともなわずに、体内に過剰の水分がたまり、血液中のナトリウムが薄められた場合
 心因性多飲症(しんいんせいたいんしょう)とADH(抗利尿(こうりにょう)ホルモン)分泌異常症(ぶんぴついじょうしょう)(SIADH)が原因になります。
 心因性多飲症では、不安や葛藤(かっとう)などの精神的な原因で大量の水分をとるために、血液が薄められ、低ナトリウム血症となります。
 また、SIADHでは、不適切に抗利尿ホルモンが分泌(ぶんぴつ)されるため、尿として排泄(はいせつ)されるはずの水分が体内にたまり、低ナトリウム血症となります。
●治療
 ①の場合、生理食塩水か生理食塩水より高濃度の食塩水を点滴して、ナトリウムを補給します。
 ②の場合、1日1000mℓ以下の水分と、1日5~7g以下の塩分の制限をし、原因となっている病気を治療します。
 ③のうち心因性多飲症では、精神的原因に対する心理療法が主体となります。薬物療法としては、精神安定剤を補助的に使用することもあります。
 SIADHでは、重症の場合に1日400~500mℓ、軽症の場合に1日800~1000mℓの水分制限を行ない、同時に、ナトリウムの補給が必要なこともあります。効果が不十分なときは、抗利尿ホルモンの作用を抑えて、尿量を多くする塩酸デメチルクロルテトラサイクリンという薬剤を服用します。
 血清ナトリウム濃度が、120mEq/ℓ以下の高度の低ナトリウム血症で、意識障害などの神経症状をともなうときは、非常に危険な状態です。ナトリウムの補給と水分の排泄を促進するために、高濃度の食塩水の点滴とループ利尿薬の静脈注射が必要です。この場合、急激にナトリウム濃度を正常化させると、脳幹(のうかん)の橋(きょう)に障害をおこし、呼吸まひなど、さらに危険な状態をひきおこしてしまいますので、徐々に正常化させる必要があります。
◎高(こう)ナトリウム血症
 ナトリウム濃度が、145mEq/ℓ以上に上昇しています。
●原因
 原因としては、つぎのような場合があります。
①体内の総ナトリウム量が増加した場合
 腎機能障害のある患者さんにナトリウムが過剰に使用されたときにおこります。また、クッシング症候群(「クッシング症候群」)や原発性アルドステロン症(「原発性アルドステロン症」)、ステロイド治療など、副腎皮質ホルモンが過剰な状態では、ホルモンの作用により尿中へのナトリウムの排泄量が減り、高ナトリウム血症となります。
②水分が多く失われた場合
 糖尿病で著しい高血糖状態にあるときや尿崩症(にょうほうしょう)(中枢性(ちゅうすうせい)尿崩症、腎性(じんせい)尿崩症)では、多量の尿が排泄されるため、体内の水分が欠乏し、血液は濃縮されて高ナトリウム血症となります。昏睡で水分がとれないときにもおこります。
③寡飲性高(かいんせいこう)ナトリウム血症
 この病気の場合、のどの渇きを感じる神経のはたらきが低下しているため、水分をとる量が減り、血液は濃縮されてきます。この血液の濃縮によって、うながされるはずの抗利尿ホルモンの分泌も不十分なため、尿の排泄量は減らず、血液は濃縮されたままとなり、高ナトリウム血症となります。
●治療
 ①の場合には、原因の除去や原因となる病気の治療を行ないます。
 ②のうち、中枢性尿崩症で水分が多く失われた場合は、抗利尿ホルモンを鼻腔内(びくうない)に噴霧します。中枢性尿崩症以外で水分が多く失われた場合には、水分を口から摂取させるか、点滴にて補給します。これらの場合で、急激にナトリウム濃度を正常化させると、脳浮腫(のうふしゅ)をおこす危険性があるので、徐々に正常化させる必要があります。
 ③の寡飲性高ナトリウム血症の場合、1日1000mℓ以上の水分をとるようにします。さらに、高脂血症(こうしけっしょう)治療薬のクロフィブラートや抗てんかん薬のカルバマゼピンを使用して、尿中へナトリウムを排泄させるか、抗利尿ホルモンを鼻腔内に噴霧します。

出典|小学館家庭医学館について | 情報

今日のキーワード

俳句甲子園

1998年から松山市で開かれる全国高等学校俳句選手権大会。高校生が5人1組で句の優劣をディベートで競い合う。チームでの勝敗とは別に、個人の最優秀句も選ぶ。今年は過去最多の41都道府県から121校、15...

続きを読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android