改訂新版 世界大百科事典 「ナヒチェバン自治共和国」の意味・わかりやすい解説
ナヒチェバン[自治共和国]
Nakhichevan'
ザカフカスのアゼルバイジャン共和国に属する自治共和国。小カフカス山脈の南西部に位置し,北はアルメニア共和国と隣接し,南はアラス(アラクス)川がイラン,トルコとの国境をなす。アゼルバイジャン共和国の西の飛地となっており,アラス川流域に平野が開ける。面積5500km2,人口36万7100(2003)。首都ナヒチェバン。この地域は前8~前7世紀には古代国家メディアの一部をなし,前6世紀以降はアケメネス朝ペルシアの支配下にあった。1世紀初め東西交易の要地となり,3世紀ササン朝ペルシア,7世紀アラブ,11世紀セルジューク・トルコ,13~14世紀モンゴル,ティムールなどの侵攻をうけ,この間封建諸国家が興亡した。16~18世紀にはトルコ,イランが角逐を繰り返し,18世紀中葉ナヒチェバン・ハーン国が形成されたが,1826-28年のロシア・イラン戦争後,トルコマンチャーイ条約によりロシアに併合された。1906年エレバン~ナヒチェバン~ジュリファ(ジョルファー)間に鉄道が開通。17年の十月革命,内戦を経て,20年7月28日ソビエト権力樹立。23年2月ナヒチェバン自治区,24年2月ナヒチェバン自治ソビエト社会主義共和国となった。
自治共和国内の民族構成(1979)は,アゼルバイジャン人95.6%,ロシア人1.6%,アルメニア人1.4%などである。農業は,アラス川流域の綿花,タバコ,穀物,山麓地帯のブドウなどの果樹栽培,南部のオルドゥバト地区の養蚕である。山地での畜産業は羊,牛が主である。1980年の工業生産高は1940年比17倍。食品,繊維,鉱工業,電機,金属加工,木工,建材が中心である。
執筆者:高橋 清治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報