汎用セラミックスと呼ばれる陶磁器,ガラス,セメントなどが物質的にはケイ酸塩,機能的には容器に限られていたのに対し,ケイ酸塩以外の非金属無機質固体を用い,容器以外の機能を生かそうとする技術上の動きによってつくり出された一群のセラミックスをさす。代表的なものに,アルミナAl2O3を原料として,従来の陶磁器製造法を援用して焼結させたものがある。アルミナの硬いという特性を生かしたセラミックスがアルミナ切削工具であり,従来の金属系切削工具に比べ性能が飛躍的に向上した。石器のもっていた硬いという機能と土器をつくる手法を進歩させて生みだされたものであり,石と土という対照的な非金属無機質素材の特徴を優性遺伝的に受け継いだものといえる。石器時代の石器が天然の熱処理によってつくられたものであるのに対し,アルミナ工具は人為的な熱処理によってつくられたものであるから人工石器とも呼ばれる。一方,アルミナの絶縁性という特徴を生かしたものが絶縁スペーサーであった。やがてこれは集積回路基板へと発展する。切削工具が精密機械工業を育てる原動力となったのに対し,絶縁体は電子情報産業の礎石となった。
第2次石器時代がセラミックス時代とも呼ばれるその中身が,精密機械と電子情報というところからスタートしたのは興味深い。アルミナ以外にニューセラミックスの仲間入りをしたものには,炭化ケイ素SiC,窒化ケイ素Si3N4,チタニアTiO2,チタン酸バリウムBaTiO3などがある。しかしこれらの非金属無機質固体はいずれも焼き固めることがきわめて困難であり,やむをえず焼結助剤として陶磁器における長石の役割を果たす成分を添加する。一般に焼結助剤にはアルカリ分を含むものが使われ,骨格となる成分より低い温度で融解することによって焼結を助けている。このため耐熱性は骨格とする成分より悪くなるし,耐薬品性も低下してしまう。焼結のために用いた手段が,各種の非金属無機質固体の本来示すはずの優れた特性を犠牲にしてしまっているのである。焼結助剤なしに,あるいは加えても特性劣化に結びつかない焼結助剤を見いだすことができるようになるためには,ニューセラミックスの段階より技術がもう一段階進歩する必要があった。こうして生まれたものがファインセラミックスである。しかし,ニューセラミックスの歴史的な意味である物質的にケイ酸塩以外のものへの拡大,機能的にも容器性以外にもセラミックスを用いるということで,ファインセラミックスをもニューセラミックスに含めて使う人たちも多い。
執筆者:柳田 博明
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