ノウハウ(読み)のうはう(英語表記)know-how

翻訳|know-how

精選版 日本国語大辞典 「ノウハウ」の意味・読み・例文・類語

ノウ‐ハウ

〘名〙 ⇒ノーハウ

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デジタル大辞泉 「ノウハウ」の意味・読み・例文・類語

ノウ‐ハウ(know-how)

《「ノーハウ」とも》
ある専門的な技術やその蓄積のこと。「仕事ノウハウをおぼえる」
技術競争の有力な手段となり得る情報経験。また、それらを秘密にしておくこと。
[類語]インフォメーション情報データ

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改訂新版 世界大百科事典 「ノウハウ」の意味・わかりやすい解説

ノウ・ハウ
know-how

ノウ・ハウは技術秘訣などと訳され,技術的ノウ・ハウtechnical know-how,とくに生産工程上の秘密情報をさすことが多いが,現在では,商業上または業務上のノウ・ハウcommercial or business know-howをも含む広い意味でも用いられている。ノウハウとも表記する。通常,ノウ・ハウは秘密ノウ・ハウsecret know-howでなければ価値がないので,一般に秘密のものをさす。しかし,製品をいちはやく完成するため,経験的に積み重ねられた秘密でないノウ・ハウが買い取られることもある。そこで厳密には,秘密性はノウ・ハウの保護要件ではあるが,本質的要素ではないとされる。これに対し,営業秘密trade secretsは,営業上の価値ある秘密情報であり,秘密を本質的要素とする。ノウ・ハウは経営の秘密,人事の秘密等とともに営業秘密の一対象である。

 ノウ・ハウの語は,実務上の用語であり,決定的な定義はない。国際的な定義の一例を挙げると,1961年に国際商業会議所が採択したノウ・ハウ保護基準条項では,〈単独でまたは結合して工業目的に役立つある種の技術を完成し,またはそれを実際に応用するのに必要な秘密の技術的知識と経験またはそれらの集積をいう〉とする。ノウ・ハウには有形的なもの(例えば,処方せん,図面,技術記録,材料表,工程マニュアル等)と,無形的なもの(例えば,実際的手法,無形情報,技術的訓練)とがあるが,それ自体は無形財である。第2次大戦後,ノウ・ハウは特許能力があるか否かを問わず,価値のある競業財産として重要視され,特許権とともに,あるいは単独で,実施契約の重要対象となっている。また,現物出資の対象として貸借対照表に計上される根拠も認められている。

 ノウ・ハウ保護の態様としては実施の非許諾者,従業者の不法使用,不法漏洩に対する契約法的保護,盗用者に対する不法行為法的保護,不正競業法的な保護がある。日本では,かつては前2者の方法による保護のみであったが,1990年の不正競争防止法改正によって,〈〈秘密として管理されている生産方法,販売方法其の他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって公然と知られていないもの〉〉が営業秘密として不正競争防止法によって保護がなされるようになった(同法2条1項4~9号)。

 ドイツでは,民法で営業秘密に対する営業権的保護,および,不正競争防止法による保護がされている。イギリス,アメリカにおいても,古くから判例法で多角的に保護している。ノウ・ハウないし企業秘密の刑事的保護については,刑罰を刑法に規定している場合と,不正競争防止法などの特別法に規定している場合,および,両者で規定する場合がある。アメリカではスパイ事件の起こった後で,規定を持つ州もでてきた。日本では,不正競争防止法に営業秘密の刑事的保護はなく,改正刑法草案で〈企業秘密漏示罪〉が提案されたが採用されておらず,一般的な窃盗,背任,横領罪の規定で規制されている。
不正競争防止法
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ノウハウ」の意味・わかりやすい解説

ノウハウ
のうはう
know-how

原意は方法を知るということであるが、そこから秘法や秘訣(ひけつ)をさす用語となった。国際商業会議International Chamber of Commerce(ICC)によれば、「産業目的に役だつある種の技術を、実際に応用するために必要とされる秘密の技術的知識、経験またはそれらの集積」をいう。この場合のノウハウは、製造設備の完成・運転に基本的に必要な技術的知識をいうことから、従来の技術と大差がなく、そのために特許にもなっていないが、実用上の価値のある技術的秘訣までの広い範囲をさしている。技師の派遣による技術指導をノウハウの提供とみる考え方などがこれである。ノウハウに技術情報という訳語をあてることも多いが、それは、ノウハウの内容が技術に関するものであるということのほか、技術提携の内容の多くが、ノウハウの提供とそれに対する技術情報料という対価支払いを定めているためである。

[森本三男]

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世界大百科事典(旧版)内のノウハウの言及

【工業所有権】より

…このため,〈産業的財産権〉の訳語を用いる者もいるが,一般には〈工業所有権〉の語が用いられている。日本では工業所有権は通常,それぞれ特許法,実用新案法,意匠法,商標法に基づく特許権,実用新案権,意匠権,商標権をさすが(いずれも特許庁が所管する),広義には特許庁の権限とは関係なく,前述の定義に該当するすべての権利をさし,営業秘密(〈ノウ・ハウ〉の項参照),植物新品種(品種)に関する権利,サービス・マーク商号,ハウス・マーク,原産地表示,表装・包装等が含まれる。
[工業所有権法成立の歴史]
 伝統的な財産法は,有体物に関する権利を中心に構成されてきたが近代になり債権も重要な意味を有するに至った。…

【知識】より


[手続き的知識と宣言的知識]
 知識の表現を考えるときに,知識を手続き的proceduralなものと宣言的declarativeなものとに分けることがある。手続き的知識とは〈~するときには~すればよい〉というノウハウknow how型の知識である。宣言型知識とは〈~と~は~の関係がある〉とか〈~は~である〉というノウホワットknow what型の知識である。…

※「ノウハウ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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