業者間の公正な競争を確保し、関連する国際約束を実施する目的で制定された。販売、サービスの提供に不可欠で、閲覧制限のある顧客名簿や製造ノウハウ、販売マニュアルなどを保護対象の「営業秘密」とし、不正な利益を得る目的での開示や漏えいを禁じている。営業秘密を不正に取得した場合、10年以下の懲役か2千万円以下の罰金、または両方が科される。
更新日:
出典 共同通信社 共同通信ニュース用語解説共同通信ニュース用語解説について 情報
不正競争行為を防止するため,そのうちの一定の主要な不正競争行為を規制する法律。1934年公布の旧法が1993年に全面改正された。当初は工業所有権の保護に関する1883年3月20日のパリ条約(通称〈工業所有権保護同盟条約〉)のハーグ改正条約(1925)に日本が加入するにあたり,条約上の義務を履行するための法律として制定された。その後の改正で,その私法的性格にしだいに公法的色彩が加わってきたが,禁止対象が限定的であるなど,不正競争防止に十分でなかったが,近年の改正で内容的に強化整備された。
不正競争防止法は,広義では,工業上または商業上の公正な慣習に反するすべての競争行為を規制する法を意味する。それは,各個の競業者のみならず,競業者全体,さらには消費者をも加えて構成される競争の場の公正を確保しようとするものである。不正競争防止法の発展は,フランス民法1382条を根拠としたフランス判例法の功績に帰せられている。これをさらに発展させ体系的に整序したのは,1909年のドイツ不正競争防止法に基づく判例法ならびに学説であるとされる。ドイツでは1909年法に至って,はじめて競争上善良な風俗に反するすべての行為を禁止する一般条項が制定され(1条),これにより包括的な不正競争防止に関する判例法が発展した。日本の不正競争防止法は,いまだこの一般条項を持たず,特定の行為のみを同法の不正競争行為として列挙するが,内容的に強化された。すなわち,1990年,93年の改正によって,一般条項は持たないものの,周知の氏名,商号,商標,包装など他人の商品表示と同一・類似のものの使用により商品・営業主体の混同をさせる行為(商品形態も周知となり出所を示すようになると表示であると解され,本法は特許法,意匠法に似た働きをする),著名な商品・営業表示と同一・類似のものの使用行為,商品形態の模倣行為,営業秘密の不正使用行為(例えばノウ・ハウの盗用行為),商品の原産地・出所地の詐称行為(例えば,ブドウ酒のシャンパン,コニャックなどの原産地名称),商品の品質,内容,製造方法,用途,数量の誤認を生じさせる行為(例えば誇大広告行為),虚偽事実の陳述・流布による営業誹ぼう行為,工業所有権保護同盟条約(パリ条約)同盟国などにおいて商標権を有する者の日本における代理人・代表者が,当該商標と同一または類似のものを正当の理由なく無断で使用する行為(エージェントの商標盗用など)等,広汎に不正競争行為が規定されている。
このような行為によって営業上の利益を害せられた者は,民事的救済として,行為の差止め(3条),損害賠償(4条),信用回復措置を請求することができる(7条)。差止請求(差止請求権)には,加害者の不正競争目的など主観的要件を立証する必要はない。損害賠償請求には,加害者に故意または過失のあることが必要である。信用回復措置のためには,新聞紙上への謝罪広告請求が一般に行われる。
不正競争防止法は,外国の一定の紋章,旗章など,あるいは,一定の国際機関の紋章,旗章などを,その国の官庁・当該機関に無断で商標として使用することなども禁止する(9条,10条)。
これは,公益保護規定であり,その違反に対しては,刑事的救済だけが定められている。刑事罰は,当初罰金刑のみであったが,その後の改正によって懲役刑も定められ(13条),法人については,1億円以下という高額のいわゆる両罰規定がもうけられた(14条)。罰則は特許法違反などと異なり非親告罪である。しかし,民事的救済の訴権は営業者に限定されている。ドイツ,スイスなどの不正競争防止法では営業者団体や消費者団体,さらには消費者にも訴権を認めている。不正競争防止法も,過去の競争業者の保護法から,競争秩序における不正行為禁止に関する基本法へ進展する途上にある。
→虚偽表示 →商標 →ノウ・ハウ
執筆者:小野 昌延
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
事業者の公正な競争を促すため、製品を模倣したり、顧客名簿や設計図などの営業秘密を不正に取得したりする行為を規制(禁止)する法律。平成5年法律第47号。不競法と略すこともある。映画、音楽、小説などは著作権法、発明技術は特許法、ブランドは商標法で保護されているが、これらの法律で保護しきれていないビジネス上の知的財産権・ノウハウ・営業秘密などを保護する目的がある。グローバル化やデジタル技術の進展にあわせ、頻繁に改正されている。不正競争行為には、①他人の商品等の表示(氏名、商号、商標、包装、容器等)と同一または類似のものを使って他人の商品・営業と混同させる、②他人の著名な商品等の表示を自己の商品等の表示として使用する、③他人の商品等を模倣する、④他の事業者の営業秘密を取得・使用・開示する、⑤「限定提供データ」(営業秘密には該当しないものの、ID・パスワードによって制限された情報)を不正に取得・使用・開示する、⑥営業上の閲覧者制限技術の効果を妨げる装置・プログラムを提供する、⑦不正利益の取得や他の事業者に損害を与えるため他の事業者のドメイン名を取得・保有・使用する、⑧原産地などを誤認させる、⑨競合関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽事実を告知・流布する、⑩外国の商標権利者の代理人が本国の許可を得ずに、同一・類似の商標を使用した商品等を譲渡・輸出する、などが該当する。以上とは別に国際条約などに基づき、①外国の国旗・紋章などの商業上の不正使用、②国際機関の標章の商業上の不正使用、③外国公務員等への贈賄、も禁止行為に定めている。未遂も刑事罰の対象で、不正に取得した利益(犯罪収益)は没収される。また、被害を受けた事業者の告訴がなくても起訴できる(非親告罪)。
不正競争防止法の起源は、工業所有権の保護に関するパリ条約(1883)のヘーグ改正条約(1925)に加入する必要から、1934年(昭和9)に制定された旧不正競争防止法にさかのぼる。世界知的所有権機構(WIPO)が1992年、不正競争防止法の国際的な整合性を加盟各国に求めたことから、1993年(平成5)に全面改正され、類似表示や模倣行為が規制された。その後、1998年に外国公務員への贈賄禁止が盛り込まれ、デジタル化の進展に対応するため、ドメイン名による不正行為(2001)、限定提供データに関する不正行為(2018)、デジタル空間での模倣品提供行為(2023)などを不正競争行為に追加した。近年、産業スパイだけでなく、退職・転職者による営業秘密の漏洩(ろうえい)事件が相次いでおり、2003年(平成15)に営業秘密の刑事的保護規定を導入し、保護規定の強化(2005)、刑事罰の強化(2006、2009、2015)、被害企業(原告)の訴訟手続の整備(2011、2023)などの改正がなされている。
[矢野 武 2025年1月21日]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
(桜井勉 日本産業研究所代表 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 (株)ジェリコ・コンサルティング流通用語辞典について 情報
…さらに製品分化がある寡占や独占的競争市場では,品質の選択や情報提供のための広告費の増減による非価格競争や新技術導入のための競争が行われることも特色である。【川又 邦雄】
[企業間競争の法的規制]
日本の現行法の中で,直接に企業間競争にかかわる規制をなすことを目的とする代表的な法律に,独占禁止法や不正競争防止法がある。不正競争防止法は,営業者が自己の広く知られた氏名,商号,商品等を他人によって用いられ,営業上の利益を害されることを差止めによって防ぐことを目的とするもので,一般に,商業道徳ないしは商業倫理の観点から利潤獲得の手段としての競争をとらえ,同業者間の利害を調整するための法と解されている。…
※「不正競争防止法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
4月1日の午前中に、罪のないうそをついて人をかついでも許されるという風習。また、4月1日のこと。あるいは、かつがれた人のこと。四月ばか。万愚節。《季 春》[補説]西洋もしくはインドに始まる風習で、日本...