ハメット(英語表記)Hammett, (Samuel) Dashiell

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

ハメット
Hammett, (Samuel) Dashiell

[生]1894.5.27. メリーランド,セントメリーズ
[没]1961.1.10. ニューヨーク
アメリカの推理小説作家。 13歳からさまざまな職業につき,8年間ピンカートン探偵社に勤務,この経験に基づいて多くの推理小説を書いた。『赤い収穫』 Red Harvest (1929) ,『デイン家の呪い』 The Dain Curse (29) ,私立探偵サム・スペードが活躍する『マルタの鷹』 The Maltese Falcon (30) ,『ガラスの鍵』 The Glass Key (31) ,『影なき男』 The Thin Man (32) などによって,感傷を排したアメリカ独自のハード・ボイルド派を確立した。また 1930年から女流劇作家 L.ヘルマンと生涯にわたる親交を結び,左翼の政治運動に関係,投獄されたこともある。

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百科事典マイペディアの解説

ハメット

米国の推理作家。多様な職業につき,私立探偵社に勤めたこともあるが,《血の収穫》(1929年)でハードボイルドの創始者となる。《マルタの鷹》(1930年)《ガラスの鍵》(1931年)などのほか,映画化された《影なき男》シリーズも有名。L.ヘルマンは生涯のパートナーであった。
→関連項目暗黒小説ボガート

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世界大百科事典 第2版の解説

ハメット【Dashiell Hammett】

1894‐1961
アメリカの探偵小説作家。私立探偵だった経験を生かし,私立探偵コンティネンタル・オプ(コンティネンタル社探偵)やサムスペードの活躍する《血の収穫》(1929),《マルタの鷹》(1930)などを発表。なぞ解きではなく,人間存在の不条理を乾いたタッチで描くハードボイルド派の代表的作家となった。なお劇作家L.ヘルマンは彼の生涯の〈恋人〉であり,彼から大きな文学的影響をうけた。【島田 太郎】

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大辞林 第三版の解説

ハメット【Samuel Dashiell Hammett】

1894~1961) アメリカの推理作家。ハードボイルドの代表作家。サム=スペードを主人公とする「マルタの鷹」は有名。他に「血の収穫」など。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ハメット
はめっと
Dashiel Hammet
(1894―1961)

アメリカの推理作家。さまざまな職業を転じたのち、ピンカートン探偵局の探偵となり、そのときの経験を多くの作品に生かしている。1920年代からパルプ・マガジンの『ブラック・マスク』誌に短編を発表し始め、長編『血の収穫』(1929)で売り出し、彼の最高傑作といわれる『マルタの鷹(たか)』(1930)でその地歩を固め、ハードボイルドの旗手の1人となった。ここに現れる私立探偵サム・スペードSam Spadeも、またピンカートン探偵局をモデルにしたと思われるコンチネンタル・オプ探偵局の名もない探偵も、いかにもハードボイルドらしい非情なタフ・ガイである。ときには悪すれすれの線を歩み、皮肉屋ではあるが友情と真実に対しては忠実であり、政治や社会の腐敗には敢然と立ち向かっていく状況を、簡潔な文体で展開した。また映画の台本も書いた。彼はマルクス主義者であり、1930~40年代、社会運動に参加、赤狩りの時代には投獄される(1951)など迫害を受けた。劇作家L・ヘルマンは1930年以来彼の愛人であり、彼女の文学的影響は大きかった。[梶 龍雄]
『『血の収穫』(河野一郎訳・中公文庫/田中西二郎訳・創元推理文庫)』

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精選版 日本国語大辞典の解説

ハメット

(Samuel Dashiell Hammett サミュエル=ダシール━) アメリカの推理小説家。正統派の推理小説に対して、リアルな犯罪描写を特徴とする。ハード‐ボイルド派を創始。代表作「マルタの鷹」。(一八九四‐一九六一

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世界大百科事典内のハメットの言及

【推理小説】より

… デュパン以後の素人探偵が,あまりにも人生をゲーム視しすぎ,鼻につくほどの知性やペダンティズムを示すのに不満な現実派は,市井の泥沼で手足を汚すことを迫られる現職警官や素人探偵を主人公に置く。とくに社会不安が深刻になってきた1930年代から,タフな神経と肉体を持つ一匹狼が巨大な社会組織に立ち向かうという,いわゆる〈ハードボイルド〉小説,例えばD.ハメット,E.S.ガードナー(1889‐1970),R.チャンドラー,ロス・マクドナルド(1915‐83)など,アメリカ独特の作家の作品が広く世界中で歓迎され,同傾向の作家が各国に出現した。この種の小説の特色は,感情におぼれない,とくに女性の魅力に動かされない男の強烈な個性と,心理より行動に重点を置く簡潔な口語的文体である。…

【ヘルマン】より

…戦後の作品には,人間心理を鋭く分析した《秋の園》(1951)や《屋根裏部屋の玩具》(1960)があり,ほかにボルテールの小説を原作とするミュージカル《カンディド》(1956)の台本も書いた。 私生活では,進歩的な思想をもつハードボイルド作家D.ハメットとの30年にも及ぶ恋愛関係,共同生活でよく知られている。〈赤狩り〉旋風の吹き荒れたマッカーシー時代には,ハメットに続き,1952年,非米活動委員会に喚問されたが,勇気をもって弾圧に抗し,断固,証言を拒否した。…

【冒険小説】より

…彼らは挫折を経験し,正義とは何かという懐疑に襲われて悩み,ときには抹殺されることさえあるから,読者はただの熱狂や興奮ではなく人間対社会の非情な関係に対する関心や絶望も与えられる。ダシール・ハメット,グレアム・グリーンの作品などがその典型例である。未知なるものの探究・征服は,例えばかつてのアメリカ西部開拓物語やアフリカ探検物語の場合には,文明の名による未開人の教化であるとして素朴に是認されていたが,今日ではインディアンを悪者として安易に処理する西部劇は,だれからも信用されない。…

※「ハメット」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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