ハン(恨)(読み)ハン

百科事典マイペディアの解説

ハン(恨)【ハン】

社会的抑圧に発する諦念と悲哀の情緒が自己の内部に沈殿し,積もった状態をさす朝鮮語。具体的な復讐の対象を措定する〈怨(ウォン)〉とは区別される。一方,挫折した夢をかなえ,望むべき新たな生を実現させようとする感情の営みを〈解き(ハンプリ)〉という。この〈恨―恨解き〉の連動は,長い受難の歴史の中で抑圧された朝鮮民衆の抵抗意識を生み,時には民衆蜂起という形で発現した。韓国の民衆神学では,〈恨〉をイエスに表象された〈民衆〉の受難と死,〈恨解き〉を民衆蜂起としてあらわされる〈民衆〉の復活であると説く。さらに民衆神学者の徐南同は,弱者の抱く敗北意識や虚無感などの昇華された〈消極的恨解き〉と,弱者たちの生に対する執念が積極的に作用する〈積極的恨解き〉を区別する。前者は巫俗儀礼などの優れた芸術的行為を生み,後者は受難と抵抗の朝鮮史をつき動かしてきた。南北分断後の現代では〈民族としての恨〉が語られ,それは分断時代の社会的矛盾に呻吟する貧しい〈民衆〉の姿に表象される。したがって労働者や農民,都市貧民の運動,これと連帯する学生の運動などは,分断の〈恨解き〉を実践する民衆運動であるといえる。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

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