多くは35~50歳で発症します。本症は脳の
例外なく遺伝子によって規定される病気で、原因遺伝子がわかっています。遺伝性はほぼ100%で、家族内での発症率が高い病気です。進行の度合いは家系により異なります。
40歳前後に不随意(ふずいい)運動(コラム)で発症し、ゆるやかに進行します。初めは手足に現れ、次第に顔面や
病気の進行に伴い、怒りっぽい、
家族内発症がみられることと、頭部CT、MRI検査での尾状核の
原疾患そのものを治したり、予防することはできません。ハロペリドール(セレネース)などの薬が異常運動を抑えるのに有効です。病気は進行しながらも10数年は経過します。
この病気自体は生命に直接関わることはないのですが、激しい不随意運動のために体力を消耗したり
不随意運動にはさまざまなものがあるので、専門医(神経内科)の診察を受けてください。本症は遺伝性で発病前に気づくこともあり、遺伝性疾患のカウンセリングを受けるのが望ましいと思われます。
出井 ふみ, 黒岩 義之
ハンチントン病は
HD遺伝子内の3塩基の繰り返しが伸びることが原因です。通常26回以下の繰り返しが36回以上になると発症します。その中間の繰り返しの場合は、発症する場合と発症しない場合があります。この病気は優性遺伝ですが、ほとんどの場合、父か母にも同様な繰り返しがあります。繰り返し数は世代間で変化する場合があり、父や母が必ずしも発症しない場合もあります。
約3分の2は最初に神経症状が出て、約3分の1に精神症状が認められます。神経症状としては、手足や顔、体幹に制御でない動きが出現して(
類似した症状を示す病気は比較的多く、確定診断は遺伝子検査でHD遺伝子内の繰り返し配列の有無を調べることで得られます。
舞踏病や精神症状に対して薬物療法を行いますが、その効果は限定的です。
神経内科、精神科の専門医に診てもらうことが大事です。家族がこの病気を疑われた場合など、遺伝に関する相談は遺伝カウンセリング外来のある病院を受診することをおすすめします。
後藤 雄一
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
基底核と大脳皮質に病変のある遺伝性のまれな疾患で、成人期以降に舞踏病様運動と知能低下とをおこすのが特徴である。1872年にアメリカの医師ハンチントンGeorge Summer Huntington(1851―1916)が、祖父および父と3代の医師で観察したこの病気の家族の症状を詳細に記述した。ハンチントン舞踏病といわれていた。病理解剖によると、基底核の尾状核と被殻、および大脳皮質に著明な萎縮(いしゅく)がみられる。また脳を生化学的に検査すると、基底核の淡蒼(たんそう)球と中脳の黒質のγ(ガンマ)‐アミノ酪酸が特異的に減少している。発病年齢は40歳前後以降であり、常染色体顕性の遺伝性疾患で、男女差はない。医療費助成対象疾病(指定難病)に指定されている。
舞踏病様の不随意運動と精神知能低下の二大症状は、かならずしも同時期に発現するとは限らず、普通は不随意運動が先行する。舞踏病様運動は唐突におこり、不規則に繰り返し、速い。精神的に緊張したり、随意運動をしようとすると不随意運動がおこり、目的とする運動が妨げられる。多くは顔面または上肢に潜在性に現れ、顔をしかめたり、肩をすくめたりするが、だんだんひどくなり、しだいに全身に及ぶ。発語の際に口角がひきつれたり、眉間(みけん)にしわが寄ったりしてしかめ面のようになり、ついには会話も著しく障害される。歩行時には足を引きずったり、体をくねらせたり奇妙なしぐさを示す。これは一見、踊るようにみえるので舞踏病様運動とよばれる。進行すると、不随意運動によって歩行が困難となり、しばしば転倒し、起立もできなくなって日常生活動作に著しい支障を生ずるようになる。
精神症状としては、抑うつ、人格の変化、興奮などがみられ、自殺を図ることも少なくない。また、計算や記憶も障害され、判断力や理解力は低下し、ついには人格の維持が困難になる。多くは10~15年前後の経過で死亡するが、直接の死因としては感染症が多い。
特別な治療法はない。不随意運動に対しては、レセルピン、フェノチアジン系およびブチロフェノン系の薬が使われる。精神知能障害に対する治療法は現在のところない。両親が60歳以上になっても発病しないときには、その子供の発病はまずない。このほか、小児には、筋硬直が強くて不随意運動の少ない若年型のハンチントン病がある。
[海老原進一郎]
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