バイルシュタイン

デジタル大辞泉 「バイルシュタイン」の意味・読み・例文・類語

バイルシュタイン(Friedrich Konrad Beilstein)

[1838~1906]ロシアの化学者。有機化合物叢書をなす「有機化学便覧」を最初編集ニトロトルエン合成ハロゲン検出法のバイルシュタイン法の発明などの業績もある。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

化学辞典 第2版 「バイルシュタイン」の解説

バイルシュタイン
バイルシュタイン
Beilstein, Friedrich Konrad

ドイツ系のロシアの化学者.サンクトペテルブルクでの中等教育の後,西欧に遊学し,1858年ゲッチンゲン大学のF.W. Wöhler(ウェーラー)のもとで学位を取得.1860年実験助手になり,1865年員外教授に昇進した.1866年父親の急死で急きょサンクトペテルブルクに戻り,同地の技術高等専門学校教授に就任した.このとき,就任の条件に従って,ロシア国籍になった.1870年代から既知のすべての有機化合物のデータを原論文から採録した便覧執筆を開始し,総ページ2200ページに及ぶ2巻本の“有機化学便覧”Handbuch der organischen Chemieを完成(1881~1883年)させた.さらに独力で第2版(1885~1889年),第3版(1899~1906年)を出版した.死後,事業はドイツ化学会に引き継がれ,現在では,有機化合物のデータを収録した最大規模の叢書となっており,そのオンライン・データベース版もある.1868年創立のロシア化学会の創立会員の一人であるが,1880年のD.I. Mendeleev(メンデレーエフ)の科学アカデミー正会員落選事件からロシア化学界のロシア派とドイツ派の対立に巻き込まれ,とくに1886年にかれ自身が科学アカデミー会員に選出されてからはドイツ派と見られ,ロシア化学界で孤立した.そのため,かれは便覧作成に没頭したといわれている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「バイルシュタイン」の意味・わかりやすい解説

バイルシュタイン
ばいるしゅたいん
Фёдор Фёдорович Бейльштейн/Fyodor Fyodorovich Beyl'shteyn
(1838―1906)

ロシアの化学者。サンクト・ペテルブルグでドイツ系ロシア人の家庭に生まれる。ハイデルベルクミュンヘンゲッティンゲンパリ各地を遊学し、1866年、ペテルブルグ工科大学の教授職を得るとともに帰国。1881年ロシア科学アカデミーの会員に選ばれる。バイルシュタインの主たる業績は、有機化合物の分類・体系化にあるが、とりわけ、彼の編集した『有機化学便覧』Handbuch der organischen Chemie(1880~1882)は現在まで、有機化学研究者にとって必須(ひっす)の知識を提供する最良の情報源の一つとなっている。また、ハロゲン検出法のバイルシュタイン反応を考案するなどの業績も残した。

[井山弘幸]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android