バクソン文化(読み)バクソンぶんか

改訂新版 世界大百科事典 「バクソン文化」の意味・わかりやすい解説

バクソン文化 (バクソンぶんか)

ベトナム北部,ハノイ北東約100kmに位置するバクソンBac Son山地の,多数の石灰岩洞窟遺跡から発見された遺物指標とする文化。1920年代にH.マンシュイやM.コラニらによって調査され,中石器時代または新石器時代初期の文化とされる。打製の礫器などはホアビン文化と類似するが,局部磨製石斧や両面加工のものが,ホアビンに比して多いのが特徴である。ほかに骨角器や,それを砥いだと思われる溝石などがある。土器は伴出しないとされるが,少なくとも終末において共存する可能性は強い。ホアビン文化の発展した文化ととらえるのが妥当であるが,その間をはっきりと区別することは困難であり,ホアビン文化と異なって東南アジア全般に分布するものでもないので,ホアビン文化のベトナム北部での最後の段階を示す一類型と考えるべきかもしれない。ただし局部磨製石斧をすべてバクソン文化の所産とすれば分布は広がる。著名な遺跡にはフォービンザーPho Binh Gia,ケオファイKeo Phay,バサBa Xaなどの洞窟がある。
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百科事典マイペディア 「バクソン文化」の意味・わかりやすい解説

バクソン文化【バクソンぶんか】

ベトナムのトンキン平野北部を中心とする中石器時代から新石器時代の文化。1906年バクソンBac-son山地のフォービンザー洞穴発見を契機に,フランスの考古学者コラニによる周辺遺跡の調査で明らかにされた。刃部だけをみがいた長方形の局部磨製石斧(バクソン型石斧)が特徴。ほかに礫斧,石杵,溝石,骨角器を伴い,貝塚を形成することが多い。
→関連項目ホアビン文化

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「バクソン文化」の意味・わかりやすい解説

バクソン文化
ばくそんぶんか
Bac-Son

東南アジア新石器時代前期の文化。ベトナムのハノイ北東のバクソン山地で1920年代にフランスのマンシュイ、コラニらが多数の洞窟(どうくつ)、岩陰(いわかげ)遺跡を調査し、この文化の概要を明らかにした。独立(1976)後はベトナム考古学者による調査も行われている。洞窟内には食料遺残である淡水産貝類や獣骨の層を伴うものが多い。特徴的な遺物は、扁平(へんぺい)な礫(れき)を周囲から打ち欠き、先端を磨いて刃をつけたもので、バクソン型石斧(せきふ)または原新石器とよばれている。半割した竹か管骨(かんこつ)の先端を磨くのに用いられたと思われる跡が残る「溝石(みぞいし)」も多い。ほかに打製だけの礫器、凹石(くぼみいし)、砥石(といし)、単純な形の骨角器もある。土器は一般に伴出しないが、この文化に近似した石器を有するダ・ブート貝塚では粗雑な土器を伴っている。バクソン山地の遺跡でも上層に本格的な新石器時代の文化層が存在するものがあるが、これはバクソン文化からは除外すべきものである。

[今村啓爾]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「バクソン文化」の意味・わかりやすい解説

バクソン文化
バクソンぶんか
Bacson culture

インドシナの中石器または新石器時代初期の文化で,ベトナム北部のトンキン平野の北,バクソン山塊の洞窟にこの文化の遺跡が発見されたことにより命名された。トンキン平野の南,ホアビン州の遺跡に現れたホアビン文化と関係があり,最近では両文化をまとめてホアビン文化と呼び,バクソン文化はその地方的様相とみる説もある。ホアビン文化と同様,片面加工の打製石器もあるが,自然礫の刃部だけを磨き,一部打製のバクソン式石斧もある。貝と野獣をおもな食料としたと考えられる。

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