改訂新版 世界大百科事典 「バクソン文化」の意味・わかりやすい解説
バクソン文化 (バクソンぶんか)
ベトナム北部,ハノイ北東約100kmに位置するバクソンBac Son山地の,多数の石灰岩洞窟遺跡から発見された遺物を指標とする文化。1920年代にH.マンシュイやM.コラニらによって調査され,中石器時代または新石器時代初期の文化とされる。打製の礫器などはホアビン文化と類似するが,局部磨製石斧や両面加工のものが,ホアビンに比して多いのが特徴である。ほかに骨角器や,それを砥いだと思われる溝石などがある。土器は伴出しないとされるが,少なくとも終末において共存する可能性は強い。ホアビン文化の発展した文化ととらえるのが妥当であるが,その間をはっきりと区別することは困難であり,ホアビン文化と異なって東南アジア全般に分布するものでもないので,ホアビン文化のベトナム北部での最後の段階を示す一類型と考えるべきかもしれない。ただし局部磨製石斧をすべてバクソン文化の所産とすれば分布は広がる。著名な遺跡にはフォービンザーPho Binh Gia,ケオファイKeo Phay,バサBa Xaなどの洞窟がある。
執筆者:重松 和男
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