フランスの詩人。ゴーティエに傾倒し,美の実現を形式の完璧性に求めた彼は,ギリシアの彫刻美に霊感を得た処女詩集《人像柱》(1842),さらに18世紀絵画にも影響された《鍾乳石》(1846)により成功を収めたが,《綱渡りのオードOdes funambulesques》(1857)では〈韻文のアクロバット〉ともいうべき彼の手腕のさえがみごとに発揮されて作詩技術の達人としての名声をほしいままにしサント・ブーブ,ボードレールらの賞賛を得た。彼は高踏派の技巧面での師匠としてベルレーヌ,マラルメら次代の詩人の自己形成期に鮮烈な影響を与えた。彼の詩法は後に《フランス詩法小論Petit traité de poésie française》(1872)にまとめられるが,バラード,ロンデル等の古詩形や民謡の見直しなどフランス詩の資源を広く再発掘した功績も認められねばならない。彼はまた多くの韻文喜劇,散文劇を創作したが,なかんずく《グランゴアール》(1866)は特に大成功を博した。また才智あふれる《わが回想録》(1882)や死後に出版された《評論集》(1917)に文芸評論家としての一面を見ることができる。
執筆者:松室 三郎
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フランスの詩人、劇作家。ムーランに生まれる。高踏派の先駆者の1人。『人像柱』(1842)、『鍾乳石(しょうにゅうせき)』(1846)以来、完全押韻を中心とする詩形式の完成に専心、また多様な詩型を試みるなど、内容よりも技巧に秀でた作品を書く。代表的詩集に『叙情小曲』(1856)、『綱渡りのオード』Odes funambulesques(1857)、『流謫(るたく)者』(1867)など。1872年詩法の研究をまとめ『フランス詩小論』を著す。劇作は、町の理髪師が王から詩人(押韻家)の才を認められ美しい娘の愛を得る『グランゴアール』Gringoire(1866)のほか数編を残している。童話集もある。
[遠山博雄]
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