改訂新版 世界大百科事典 「ヒマワリ」の意味・わかりやすい解説
ヒマワリ
sunflower
Helianthus annuus L.
夏に巨大な花が咲くキク科の一年草。ヒグルマ,ニチリンソウの名もある。中国名は向日葵。北アメリカ中・西部地方が原産地であるが,代表的な大型品種ロシアヒマワリは種子を油料,飼料にするために,旧ソ連地域諸国,インド,トルコ,メキシコなど各国で大栽培を行っている。茎は2~4mで直立し,心臓形の大きな葉を互生し,茎葉ともに粗毛がある。頭花は単生するもの,分枝して咲くものなどいろいろあるが,ロシアヒマワリは頭花の径が60cmに及ぶ。花の周辺は黄色の舌状花,内部の管状花は小さいが無数で,おしべ,めしべがあり,他家受粉して結実すると,花盤は下向きとなる。種子は大きく,ロシアヒマワリは白黒の条線があるが,他品種は黒色。観賞用の園芸品種には1茎多花のものがあるほか,舌状花が赤褐色のアカバナヒマワリ,切花用の花盤が黒色の黒竜(こくりゆう),太陽などがある。ヤエザキヒマワリは管状花の花弁も舌状化した万重咲きで,高性のサンゴールドSungoldと,草丈1mに足りない矮性(わいせい)のイェロー・ピグミーYellow Pygmyとがある。
ヒマワリは短日性植物で,4月に種をまけば7~8月に草丈高く咲くが,遅まきは低く咲く。暖地や温室で1~2月にまけば4~5月に開花する。葉の蒸散量が多くしおれやすいので移植をせず,一般には直まきとする。他の草花をヒマワリの近辺に植えても養水分を奪われて発育がよくない。種子の含油量は約30%と多く,カロリーはダイズ油に劣らない。油料のほか飼料,菓子用あるいはセッケン材料として利用される。ヒマワリの花は太陽を追って回転すると俗にいわれるが,花は明るい方に向かって咲き,とくに若い茎は向日性が強い。
別種のヒメヒマワリH.cucumerifolius Torr.et A.Grayは北アメリカ南東部地方原産の一年草で,茎に蛇紋があり,花は小さいが分枝が多く多花である。花壇用に春まきで夏に咲く。
執筆者:浅山 英一 ヒマワリという日本語は,つねに顔を太陽に向けている花という意味であり,漢字の向日葵,フランス語のtournesolも同じ意味である。しかし,ヒマワリはいつも太陽に向かっているわけではないので,英語のsunflower(太陽の姿に似た花)という名のほうが適当である。原産地メキシコやペルーでは,ヒマワリの花が太陽神の象徴として祭壇などに刻まれた。なおゴッホのヒマワリの絵も,天空の太陽のイメージを豊かに取り込んだものといえる。
執筆者:山下 正男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報