改訂新版 世界大百科事典 「ヒミズ」の意味・わかりやすい解説
ヒミズ (日不見)
Urotrichus talpoides
本州,四国,九州の山地にすむ日本固有の原始的な小型のモグラ。食虫目モグラ科の哺乳類。体がモグラよりもはるかに小さくきゃしゃで,吻(ふん)は細く前足は小さいが,尾は長く付け根の細いバット状。黒色のビロード状の毛にはわずかに緑色の金属光沢が認められる。体長7.5~10cm,尾長3~4cm,体重は12~24g。ふつう標高1800mくらいまでの山地の林床に,直径3cmほどのトンネルを落葉層の下に掘って,ミミズ,昆虫,ムカデなどを捕食するほか,種子,根など若干の植物質も食べる。3時間ほどの周期で昼夜の別なく活発に動き,動作は敏しょうである。繁殖期は3~5月で,雌は1産2~5子を生む。約1ヵ月で巣立ちし,寿命は3年程度。
姿がよく似るが,いっそう小型で原始的な近縁種に,ふつう標高1500m以上の亜高山帯~高山帯に生息するヒメヒミズDymecodon pilirostrisがある。
執筆者:今泉 吉晴
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報