ヒメムカシヨモギ(英語表記)horseweed
butterweed
Erigeron canadensis L.

改訂新版 世界大百科事典 「ヒメムカシヨモギ」の意味・わかりやすい解説

ヒメムカシヨモギ
horseweed
butterweed
Erigeron canadensis L.

北アメリカ原産のキク科一年草ないし越年草明治の初期に渡来した帰化植物で,明治草(めいじそう),御維新草(ごいつしんぐさ)とも呼ばれ,鉄道の線路沿いに分布を広げたところから鉄道草(てつどうぐさ)とも呼ばれた。茎は直立し,高さ1~2m,葉とともに粗毛がある。茎葉は細長い披針形で,密に互生する。葉柄の両縁に開出した毛が生える。花期は8~10月。茎の上部で多数分枝し,大型の円錐花序に多数の小さな頭花をつける。頭花には小さいが白色の舌状小花があるので,オオアレチノギクConyza sumatrensis (Retz.)Walkerと区別できる。これも昭和の初期に帰化してきた越年草で,道ばたや荒地に多い。茎は直立し,高さ2mに達する。花期は8~10月,大きな円錐花序に多数の小さな頭花をつける。頭花の縁に3~4列,ごく短い舌状小花があるが,目だたない。これと似た小さい頭花をつけるアレチノギクC.bonariensis (L.) Cronq.も一年草ないし越年草の帰化植物である。オオアレチノギクより早く明治の中ごろに渡来し,一時はひじょうにはびこったが,近年少なくなってきた。茎は30~50cmで主幹がとまり,枝が主幹より高く伸びる。全体灰白色の毛が多い。花期は4~7月。頭花はオオアレチノギクに比べて一段と大きい。舌状小花は多数あるが,舌状部が小さく目だたない。明治の終りごろ帰化したホウキギクAster sublatus Michx.も,やや湿った道ばたや荒地に生える越年草。茎は高さ1m内外となる。頭花は径5~6mmと小さいが,淡紫色の舌状小花を1列つける点で,アレチノギクの頭花とは明りょうに区別される。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒメムカシヨモギ」の意味・わかりやすい解説

ヒメムカシヨモギ
ひめむかしよもぎ / 姫昔蓬
[学] Erigeron canadensis L.

キク科(APG分類:キク科)の一年草または越年草。茎は直立し、高さ1~2メートル、全草に粗い毛が多い。8~10月、円錐(えんすい)花序をつくり、径3ミリメートルの小さな頭花を多数つける。舌状花は小さいが、白色でやや目だつ。名は、小さな個体では全草がムカシヨモギに似るが、頭花がより小さいことに由来する。北アメリカ原産の帰化植物で、ヨーロッパには17世紀末に入り、日本には明治初年ころ渡来し、現在では世界に広く分布している。別名メイジソウ(明治草)、ゴイッシングサ(御一新草)というが、これは渡来した時期に由来する。またテツドウグサ(鉄道草)の名もあるが、これは鉄道に沿って生え広がったことに由来する。

 よく似た種にアレチノギクやオオアレチノギクがあるが、これらでは舌状花は数百個あるがたいへん小さく目だたない。どちらも帰化植物であるが南アメリカ原産で、ヒメムカシヨモギとは系統が異なる。草丈が低く、舌状花の顕著なムカシヨモギにより近い。

小山博滋 2022年3月23日]


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百科事典マイペディア 「ヒメムカシヨモギ」の意味・わかりやすい解説

ヒメムカシヨモギ

キク科の一〜二年草。北米原産で明治初期に渡来した帰化植物。路傍や荒地にふつうにはえる。全体に粗毛があり,茎は直立して,高さ0.5〜1.5m,披針形の葉を互生する。8〜10月,筒状花と舌状花からなる径3mmほどの白色の頭花を多数,円錐状につける。ゴイッシングサ,テツドウグサの名もある。

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