イタリアの画家。レッジョ・エミリアに生まれる。同地の美術学校で地方画家のプロスペロ・ミンゲッティに学び,1848年トリノへ出てイタリア独立戦争に参加。除隊後はスイスに滞在するが,55年のパリ万国博覧会を機にパリへ出て,コローやテオドール・ルソーらバルビゾン派の画家たちの作品に親しみ,またラビエAuguste Ravierをはじめリヨン派の画家とも親交を結ぶ。各地に旅行して制作。風景画のなかにロマン主義の精神によって高揚された生命感を導入。とりわけ1865-66年のロンドン滞在で,コンスタブルとターナーの作品に感銘。詩情豊かな牧歌的風景画に,光学的な感覚と色彩の科学を見いだす。69年トリノのアルベルティーナ美術学校の風景画教授になる。76年,日本政府が工部美術学校を創立して,本格的な西洋美術教育を実施するに際して,〈御雇外国人教師〉の一人として,ラグーザ,カペレッティとともに来日。石膏像,画学教科書,画材などを携帯してきて,デッサン,油彩の基礎教育を行う。日本人の通訳を介して,ヨーロッパの画家たち,なかでもバルビゾン派のコローやミレーの話をしている。
病のために2年間の滞日であったが,その人間的な魅力は多くの生徒から敬愛され,また初歩的な段階にあった日本の洋画技法を正則な軌道にのせる役目を果たした。生徒には小山正太郎,松岡寿,浅井忠,五姓田義松,山本芳翠らがいる。帰国後は療養のかたわらトリノの美術学校で教え,多くの風景画を描いた。19世紀イタリアの最もすぐれた風景画家の一人として,高い評価を得ている。
執筆者:酒井 忠康
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イタリアの画家。明治時代に来日して日本洋画の育成に貢献した。北イタリアに生まれる。郷里のレッジョ美術学校卒業後、フランス、イギリスなどヨーロッパ各地を遊学した。バルビゾン派風の風景画に一家をなし、1868年ルッカ美術学校校長、翌1869年には王立トリノ美術学校教授に進んだ。1876年(明治9)日本政府に招かれて工部美術学校画学科の教師に就任。その本格的な西洋画法の伝授は、浅井忠(あさいちゅう)、小山正太郎(こやましょうたろう)、松岡寿(まつおかひさし)、山本芳翠(やまもとほうすい)、五姓田義松(ごせだよしまつ)、中丸精十郎(なかまるせいじゅうろう)(1840―1895)ら、初期洋画壇の多くの俊秀を育てた。病を得て1878年辞職して帰国、トリノに没。『不忍池(しのばずのいけ)』(東京国立博物館)、『牧牛図』(東京芸術大学)などがある。
[小林 忠 2018年8月21日]
(三輪英夫)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報
1818.2.23~82.4.17
イタリアの画家。レッジョ・エミリア生れ。同地の美術学校に学ぶ。バルビゾン派の画家たちと交流し,各地を旅行,19世紀イタリア風景画の代表的作家と目された。トリノの王立アルベルティーナ美術学校教授。1876年(明治9)日本政府の招請で来日。開設された工部美術学校の画学教師となり,西洋の正則カリキュラムによって,小山正太郎・松岡寿(ひさし)・浅井忠らを指導した。病により2年後帰国,トリノで死去。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報
…高橋はここで油絵,水彩画の実技指導を受ける。さらに76年新政府が西欧の科学技術摂取のために置いた工部大学校(東京大学工学部の前身)には,付属して工部美術学校が開設されたが,その主任教授として来日したイタリア人風景画家A.フォンタネージの教示を受けるようになって,高橋の画技は急速に進んだ。高橋はその代表作《鮭》《なまり節》(ともに1877)など,日常生活の身近な事物を題材として,また遠近法や明暗法をとり入れた《浅草遠望》(1878),《不忍池》(1880)などの風景画によって,写実主義を移植し,天絵楼(てんかいろう)画塾を開いて後進を指導した。…
※「フォンタネージ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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