日本大百科全書(ニッポニカ) 「フッ化カルシウム」の意味・わかりやすい解説
フッ化カルシウム
ふっかかるしうむ
calcium fluoride
カルシウムとフッ素の化合物。天然に蛍石(ほたるいし)として産出する。カルシウム塩の水溶液とフッ化ナトリウムなどの水溶液を混合するとコロイド状の沈殿として得られるが、精製が困難である。結晶を得るには、炭酸カルシウムまたは水酸化カルシウムをフッ化水素酸に溶解したのち蒸発濃縮する。無色の硬い結晶で加熱すると紫色の燐光(りんこう)を発する。硬さ四で、モース硬度の標準となっている。水にはほとんど溶けないが、アンモニウム塩水溶液や薄い無機酸にはわずかに溶ける。フッ化水素酸にも溶解し、その溶液からフッ化水素酸カルシウム六水和物Ca(HF2)2・6H2Oが晶出する。濃硫酸と熱するとフッ化水素が発生する。
フッ素化合物の製造原料、ガラスおよびほうろう工業における原料、製鉄用融剤などのほか、赤外および紫外分光器の光学系の材料として用いられる。
[鳥居泰男]