『国民生活白書(平成15年版)』では、「15~34歳の若年(ただし、学生と主婦除く)のうち、パート・アルバイト(派遣等を含む)及び働く意志のある無職の人」と定義している。「フリーfree(英語。「自由な」の意)+アルバイターArbeiter(ドイツ語。「労働者」の意)」を省略した和製英語である。
前出の『国民生活白書』によれば、1990年に183万人であったフリーター人口は、1995年の246万人、1998年の323万人を経て、2001年には417万人に達した。フリーター比率(15歳から34歳までの若年人口の中で、フリーターの割合)も、1990年の10.4%、1995年の12.9%、1998年16.4%を経て、2001年に21.2%を占めるにいたった。
一般的に、青年は定職について就労に励むことが一人前になるための道とされてきた。それだけに、パートなどであちこちの仕事を渡り歩くフリーターは、半人前の生き方とみなされがちであった。しかし、1980年代後半ころから、好景気であったにもかかわらず、若者の間にフリーターとしての生き方を積極的にとらえようとする傾向が強まった。自分なりの生活目標をもち、それを達成するまで、生活費を稼ぐ手段としてパートタイムなどの就労形態を利用する。あるいは、自分の価値を大事にして、安易に企業に妥協せず、企業に拘束されない自由な姿勢を貫くフリーターこそが誠実な生き方だという主張も登場した。
しかし、1990年代からの不況が長引き、企業を取り巻く環境が厳しさを増し、正規社員の新規雇用を控える企業が増加しているいま、新規学卒者のなかには希望する職種につくことができず、結果としてフリーターの形で時を待っている若者も増えている。現在のフリーターのなかには、フリーターの価値を積極的に認めてというより、正社員になれずに、やむなくフリーターの状態でいる者が少なくない。
また、終身雇用を前提とした年功序列型の就労形態が崩れつつある現在では、正社員が準フリーター的な立場になる可能性もある。不安定な社会情勢のなかでは、企業に安住することなく、自分を磨き、よりよいチャンスを求めるという、よい意味でのフリーター的な姿勢が、これからの社会人に求められるように思われる。
[深谷昌志]
『『平成15年版 国民生活白書 デフレと生活――若年フリーターの現在』(2003・内閣府)』▽『小杉礼子著『フリーターという生き方』(2003・勁草書房)』
(桑原靖夫 獨協大学名誉教授 / 2008年)
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