ブラウニング(その他表記)Robert Browning

デジタル大辞泉 「ブラウニング」の意味・読み・例文・類語

ブラウニング(Robert Browning)

[1812~1889]英国の詩人。ビクトリア朝時代の代表的詩人で、「劇的独白」とよばれる手法で心理描写新生面を開いた。作「ピッパが通る」「男と女」「指輪と本」など。

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精選版 日本国語大辞典 「ブラウニング」の意味・読み・例文・類語

ブラウニング

  1. ( Robert Browning ロバート━ ) イギリスの詩人。テニソンと並ぶビクトリア朝の代表的詩人。広く題材を求め、詩風は剛健・闊達で、難解な表現も多い。代表作は「指輪と本」。(一八一二‐八九

ブラウニング

  1. 〘 名詞 〙ブローニング

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改訂新版 世界大百科事典 「ブラウニング」の意味・わかりやすい解説

ブラウニング
Robert Browning
生没年:1812-89

イギリス,ビクトリア朝の詩人。宗教と科学の葛藤で懐疑主義が支配した時代にあって,主観を客観化して〈他我alter ego〉の声をつたえる〈劇的独白dramatic monologue〉の新詩をつくり出し,20世紀文学に多大の影響を与えた。銀行員の父と組合教会派の母の間に生まれ,1828年ロンドン大学に入学したものの理想と合わず中退。一時シェリーの思想に感染した。懐疑的宗教観をもつ処女作《ポーリン》(1833),富や愛欲と理想との葛藤を描く《ソーデロー》(1840)を発表,35-42年には俳優で劇場マネージャーのW.C.マックレディの影響で劇作品を書いたが,上演は成功しなかった。この間の劇作品を8分冊にまとめた《鈴とザクロ》(1841-46)の〈ピッパ通る〉は注目をひいた。純真な女工の歌により4人の悪人が改心する物語について,複数の登場人物が自分の立場から意見を述べる〈劇的独白〉の手法がいかされている。この作品は上田敏の《海潮音》に〈春の朝(あした)〉として訳出されている。

 46年には女流詩人エリザベスと結婚,フィレンツェで幸福な生活を送り,傑作《男と女》(1855)を完成させた。〈サウル〉など問題作を含むが,古戦場の塔の中で〈亜麻色の髪の乙女われを待ちぬ〉とうたう〈廃墟の恋〉は,晩年の《アソランドー》(1889)の〈至上善〉に通じる比類ない愛の賛歌である。詩人のいまひとつの特質といえよう。大正時代の青年層に広く歓迎された厨川(くりやがわ)白村《近代の恋愛観》(1922)もこの影響である。妻の死後,イギリスに帰り《劇的人物》(1864),《指輪と本》(1868-69)を出して最高の詩的円熟を示した。いずれも人物の精密な心理解剖により複雑な人間の心の動きを追求した大作である。このあと20年間,べネチアで死亡するまでに14冊の詩集を出したが,前作をしのぐものではなかった。ブラウニングの詩は,複雑難解な事件や極度の抽象性,安易なオプティミズムなどの欠点はあるが,当時の科学進歩思想もとり入れ,非個性的な劇的性格やプロットの創造,作品にちりばめられた抒情詩の小品で重要な貢献をした。芥川竜之介の《袈裟(けさ)と盛遠》(1918)は,事件の核心を複数の人物が独自の立場から述べるブラウニングの〈劇的独白〉の形式を用いている。ブラウニングが詩的〈腹話術師〉といわれるのも無理はない。
執筆者:


ブラウニング
Elizabeth Barret Browning
生没年:1806-61

イギリス,後期ロマン派の詩人。思春期に結核のため病人生活を送ったが,かえって彼女の鋭敏な感性が磨かれ,田舎での広範な読書も実って,1820年ごろからつぎつぎと詩集やエッセーを出した。しかし名声を高めたのは,夫ロバート・ブラウニングへのひたむきな愛をうたいあげた44編の詩集《ポルトガル人のソネット》(1850)である。40歳まで異性との愛をあきらめていた女の愛の歓喜を,神への信仰と死への恐怖を交錯させながら,巧みに表現したものである。46年に秘密結婚をしてイタリアのフィレンツェへ逃避したが,この解放感はトスカナの独立闘争を描いた《グイディ荘の窓》(1851)に表れている。傑作は〈小説詩verse-novel〉の《オーロラ・リー》(1857)であろう。恋物語の形をとりつつ,芸術の特質や価値,婦人の地位などの社会問題を扱った無韻詩である。詩人としてのビジョンや深い洞察に欠けるものの,その豊かな感性の詩は比類ないものである。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブラウニング」の意味・わかりやすい解説

ブラウニング(Robert Browning)
ぶらうにんぐ
Robert Browning
(1812―1889)

イギリスの詩人。テニソンとともにビクトリア朝のイギリス詩を代表する人物。人間性に対する信頼と楽天主義を表現した。「神、そらに知ろしめす。/すべて世は事も無し。」(上田敏(びん)訳。『ピッパが通る』)はこの思想の表明としてあまりにも有名である。

 1812年5月7日、ロンドン近郊のキャンバウェルで生まれる。イングランド銀行に勤める父親と敬虔(けいけん)な信仰をもつ母親はともに教養の高い人であり、そのため、正規の教育は当時新設のロンドン大学に短期間在学した程度であるが、少年時代から文学・美術・音楽に関する深い教養を身につけた。詩人としてたつ決心をしたのもこのためである。38年と44年のイタリア旅行は、イタリアに対する終生変わらぬ愛情の源となった。33年に処女作『ポーリーン』を出版したあと、歴史上の人物を主題とした『パラケルスス』(1835)、『ソルデロ』(1840)を発表する一方、当時劇壇で勢力のあったW・C・マクリーディの勧めで『ストラフォード』(1837)から『ルリア』(1846)までの劇を約8年間書いた。これらはあまり成功しなかったが、彼の「劇的独白」の手法を発展させるのに役だった。

 1841年から46年にかけて『鈴とザクロ』という表題で8冊の小冊子(詩も劇もあり、『ピッパが通る』が第一冊)を出版。これが契機となってエリザベス・バレットと知り合い、彼女の父親の反対を押し切って46年9月ひそかに結婚し、その直後にイタリアへ行きフィレンツェに住んだ。このあと『男と女』(1855)、『登場人物』(1864)、最高傑作『指輪と本』(1868~69)などの代表作を次々に発表。61年に夫人を亡くしてからはロンドンに住み、大詩人として世間の尊敬と名声に包まれて暮らしたが、『指輪と本』以後20年間に出版した十数巻の詩集は、以前のような叙情の高まりを示す優れた詩もあるが、概して冗漫で、先にあげた代表作には及ばない。89年秋にイタリア旅行中12月12日ベネチアで客死し、ウェストミンスター寺院に葬られた。

[戸田 基]

『大庭千尋訳『男と女』(1975・国文社)』『日夏耿之介訳『世界詩人全集3』(1955・河出書房)』


ブラウニング(Elizabeth Barret Browning)
ぶらうにんぐ
Elizabeth Barret Browning
(1806―1861)

イギリスの女流詩人。富裕な地主バレット家の12人の子のうちの長子として生まれ、幼時から古典を学び、詩をつくった。虚弱であったが知力は優れ、1845年R・ブラウニングに会うまでに数巻の詩集やアイスキロスの翻訳を発表した。2人の恋愛と46年の結婚の結果生まれた『ポルトガル語より訳せるソネット集』(1850)と長詩『オーローラ・リー』(1857)が代表作。結婚後はフィレンツェに住み、同地で没した。

[戸田 基]


ブラウニング(John Moses Browning)
ぶらうにんぐ

ブローニング

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ブラウニング」の意味・わかりやすい解説

ブラウニング
Browning, John Moses

[生]1855.1.23. アメリカ合衆国,ユタ,オグデン
[没]1926.11.26. ベルギー,ヘルスタル
アメリカ合衆国の銃器設計家。いわゆる「ブローニング銃」の設計者。モルモン教徒の家に生まれた。幼少の頃から発明の才があり,13歳で銃を製作,1879年に単発ライフル銃の特許をとり,ウィンチェスター・リピーティング・アームズに売却した。最も有名な製品は,レバーアクション・ライフルのウィンチェスターM1886,自動装填式散弾銃のレミントンM1905,自動拳銃のコルトM1911。ブローニング自動小銃 BARは 1918年から 1950年代までアメリカ陸軍の制式小銃(→自動小銃)。1920年頃から 1980年代までアメリカ軍は,ほぼブラウニング製の拳銃,小銃,機関銃,機関砲のみを用いた。21世紀になってもこれらの銃砲は改良されたものが各国で使用されている。(→コルトレミントン

ブラウニング
Browning, Robert

[生]1812.5.7. ロンドン
[没]1889.12.12. ベネチア
イギリスの詩人。 1846年エリザベス・バレットとイタリアへ駆落ちしたが,61年妻に先立たれて帰国,その頃から名声が高まって,ついにテニソンと並ぶビクトリア朝の代表詩人となった。好んで劇的独白の手法を用いて人間の性格や心理を力強く表現した。主要作品『クリスマス前夜と復活祭日』 Christmas-Eve and Easter-Day (1850) ,『男と女』 Men and Women (55) ,『登場人物』 Dramatis Personae (64) ,『指輪と書物』 The Ring and the Book (68~69) ,『劇的牧歌』 Dramatic Idyls (79,80) 。

ブラウニング
Browning, Elizabeth Barrett

[生]1806.3.6. ダラム近郊
[没]1861.6.29. フィレンツェ
イギリスの女流詩人。早熟の詩才に恵まれ 14歳で『マラトンの戦い』 The Battle of Marathon (1820) を出版。その後事故で脊髄を痛め長期間病床にあったが,『天使の群れ,その他の詩』 The Seraphim and Other Poems (38) などで文名を確立した。 1846年父親の反対を押切って R.ブラウニングと結婚,イタリアへ駆落ちして,47年以後はフィレンツェに住んだ。傑作『ポルトガル語から訳したソネット』 Sonnets from the Portuguese (50) は夫への愛情を告白したもので,慎み深く翻訳であるかのように見せかけたもの。

ブラウニング
Browning, Tod

[生]1882.7.12. ケンタッキー,ルイビル
[没]1962.10.6.
アメリカの映画監督。 1925年から 39年にかけて怪奇映画を多く作った。おもな作品は『ドラキュラ』 Dracula (1931) 。

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百科事典マイペディア 「ブラウニング」の意味・わかりやすい解説

ブラウニング

米国の映画監督。ケンタッキー州生れ。サーカスやボードビルの世界をへて,1913年映画界入り。D.W.グリフィス監督の《イントレランス》(1916年)に出演するとともに助監督をつとめる。その後主にメロドラマを監督するがふるわず,B.ストーカー原作の《魔人ドラキュラ》(1931年)で注目される。以降映画会社ユニバーサルは怪奇映画を次々と製作するようになった。続いて,旅回りの見世物興行の一座を描いた《怪物団(フリークス/神の子ら)》(1932年)を発表し話題を呼ぶが,上映打ち切りとなった。

ブラウニング

英国の詩人。劇詩《パラセルサス》(1835年)によって認められ,のち長詩《ソーデロー》,詩集《男と女》(1855年)《登場人物》(1864年),かつて起きた殺人事件をいろいろな視点から物語った長詩《指輪と本》(1868年―1869年)などを発表し,ビクトリア朝の代表的詩人となった。〈劇的独白〉といわれる独自の詩法を駆使して,人間と美に対する楽天的心情を力強く歌った。
→関連項目テニソンブラウニング

ブラウニング

英国の詩人。R.ブラウニングと1846年に結婚。病身のため結婚後はフィレンツェに住んだ。夫とのロマンスを歌いあげた恋愛詩集《ポルトガル人のソネット》(1850年)と物語詩《オーロラ・リー》(1857年)が代表作。

ブラウニング

米国の銃砲技術者。鉄砲職人の子。25歳のとき新式単発銃を発明,以後,自動小銃,拳銃,機関銃の発明と改良を続け,自動火器の父と称される。その設計になる小火器は多く米国軍隊の制式に採用された。なお日本では,銃の名称は〈ブローニング〉とするのがふつう。

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旺文社世界史事典 三訂版 「ブラウニング」の解説

ブラウニング
Robert Browning

1812〜89
イギリスのヴィクトリア女王時代の代表的詩人
最初ロマン主義の感化を受けたが,しだいに宗教思想を深め,魂と情熱の葛藤 (かつとう) ,信仰の問題などをうたう詩を書いた。妻エリザベスも詩人として有名。代表作『男女』『劇の登場人物』『指輪と本』など。

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世界大百科事典(旧版)内のブラウニングの言及

【イギリス文学】より

…やがて産業資本家たちの自然,そしてダーウィンの自然へと移っていったからである。テニソンやブラウニングは,まだビクトリア朝の思想,道徳,哲理を彼らの詩作品に歌いえたが,そのあと,新しい科学思潮と,肥大した商工業社会の成長の渦に巻きこまれて,詩人の声は急激な変質を余儀なくされた。かつては社会,政治,思想,知識,道徳,信仰に直接〈参加〉する声であったものが,自分ひとりでささやく声へ変質していったのだといえよう。…

※「ブラウニング」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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