ブリュッヘン(読み)ぶりゅっへん(英語表記)Frans Brüggen

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブリュッヘン」の意味・わかりやすい解説

ブリュッヘン
ぶりゅっへん
Frans Brüggen
(1934―2014)

オランダリコーダーおよびフルート奏者、指揮者。アムステルダム生まれ。同地の音楽院でケース・オッテンKees Otten(1924―2008)に師事し、さらにアムステルダム大学で音楽学を学ぶ。ソロ活動のかたわら、1956~1969年にはハーグとアムステルダムの音楽院で古楽の指導にあたる。1967年にブリュッヘン・コンソートを結成したほか、2人の弟子との前衛アンサンブル「サワー・クリーム」の組織など、幅広い活動を行う。1972年(昭和47)初来日。リコーダーという素朴な楽器の可能性を限りなく広げた名手で、古楽譜の校訂・出版も行っている。アンサンブル指揮者としても活動していたが、1981年にオリジナル楽器を用いた古楽オーケストラ「18世紀オーケストラ」を結成、本格的な指揮活動を開始した。指揮者としてのその才能は広く注目されるところとなり、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団など、モダン楽器を使用するオーケストラへの客演も多い。

[岩井宏之]

『フレデリック・モルガン著『フランス・ブリュッヘン収蔵リコーダー図録』(1983・全音楽譜出版社)』『佐々木節夫著『古楽の旗手たち――オリジナル楽器演奏のめざすもの』(2000・音楽之友社)』『吉田秀和著『吉田秀和作曲家論集2 シューベルト』(2001・音楽之友社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「ブリュッヘン」の意味・わかりやすい解説

ブリュッヘン

オランダの指揮者,リコーダー奏者,フルート奏者。生地アムステルダムでリコーダーと音楽学を修める。1956年,21歳でハーグ王立音楽院教授就任。学究活動の一方,リコーダーおよびフラウト・トラベルソフルート)奏者として世界各地で演奏し,レオンハルトビルスマらと共演。かつては〈子供の楽器〉と蔑視(べっし)されたリコーダーの表現力を再認識させ,古楽再興の一翼を担う。ブリュッヘンの登場により,ベリオほか現代の作曲家によるリコーダー作品も生まれた。1981年にはオリジナル楽器の名手を集めてアムステルダムで〈18世紀オーケストラ〉を結成し,指揮者に就任。J.ハイドンモーツァルトの作品を中心に世界各地で演奏活動を繰り広げている。1973年にリコーダー奏者として初来日。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

改訂新版 世界大百科事典 「ブリュッヘン」の意味・わかりやすい解説

ブリュッヘン
Frans Brüggen
生没年:1934-

オランダのフルート奏者,指揮者。生地アムステルダムの音楽学校で学び,また大学で音楽学を修める。彼の〈フルート〉はいわゆる縦笛リコーダー)を含み,これを用いたバロック音楽の演奏で早くから頭角を現した。彼は歴史的な演奏様式や,演奏に伴っていた諸習慣を,文献面を含む多様な視点から追究している。楽器もまた,当時の作あるいはその精密な複製を用いる。しかし彼の実際の演奏は,卓越した技術と抜群の直観力によって常に生気を与えられる。一方,彼はリコーダーのための新作をも前衛的立場のものまで取り上げて演奏し,ベリオらの作曲活動に刺激を与えている。合奏の指揮も行い,ハーグ音楽院その他で後継者の養成にも努めている。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ブリュッヘン」の意味・わかりやすい解説

ブリュッヘン
Brüggen, Frans

[生]1934.10.30. アムステルダム
[没]2014.8.13. アムステルダム
オランダのリコーダー奏者,フルート奏者,指揮者。アムステルダム音楽院でケース・オッテンにリコーダーおよびフルートを,アムステルダム大学で音楽学を学んだ。その後フルートをフーベルト・バルワーザーに師事。ハーグ王立音楽院とアムステルダムの音楽院で,リコーダーとバロック音楽演奏法の教授を務めた。リコーダーの名手として知られ,ルチアーノ・ベリオやルイ・アンドリーセンらがリコーダーのための現代曲を捧げた。1981年に古楽器で演奏する 18世紀オーケストラを設立,指揮者としても活躍した。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のブリュッヘンの言及

【オランダ】より

…20世紀の主要作曲家として,パイパーW.Pijper(1894‐1947),アンドリーセンH.Andriessen(1892‐1981),バディングスH.Badings(1907‐ ),ファン・バーレンK.Van Baaren(1906‐70)があげられる。 近年注目されるのはルネサンス・バロック音楽の再興で,リコーダーのF.ブリュッヘン,チェンバロのG.レオンハルトなどの演奏家のめざましい活躍により,オランダは古楽器の演奏と研究でヨーロッパの中心となっている。 民族音楽は,カトリック圏にとどまった南部ネーデルラント(ベルギー,ルクセンブルクなど)が,宗教的年中行事に伴う伝統音楽,土俗的な楽器・舞踏などを地方色豊かに今日まで伝えているのに比べて,禁欲的なカルバン派に転じた北部(オランダ)では,特徴的なものは少ない。…

※「ブリュッヘン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android