ヘビイチゴ(読み)へびいちご

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヘビイチゴ」の意味・わかりやすい解説

ヘビイチゴ
へびいちご / 蛇苺
[学] Potentilla hebiichigo Yonek. et H.Ohashi
Duchesnea chrysantha (Zoll. et Mor.) Miq.

バラ科(APG分類:バラ科)の多年草。茎は細くて長く、節から発根して地表をはい、群生する。葉は長い柄があって互生し、3出複葉で小葉は倒卵形、縁(へり)に深く切れ込む鋸歯(きょし)がある。葉質は薄く、黄緑色で、托葉(たくよう)がある。4~6月、葉腋(ようえき)から細長い花柄を出し、黄色で径約1センチメートルの5弁花を1個開く。花期後、花托は肥大し、いちご状果となる。果実球形痩果(そうか)で、表面にしわがある。赤色に熟すが、海綿質でおいしくはない。山野や平野の道端に普通に生え、日本、および朝鮮半島、中国、インドからインドネシアに分布する。近縁ヤブヘビイチゴは、全体が大形で、ヘビイチゴが二倍体であるのに対し一二倍体である。分布は同じであるが、より日陰の所に生育する。

 ヘビイチゴ属はアジアに約6種あるといわれるが、学説ははっきりと定まっていない。オランダイチゴ属やキジムシロ属といっしょにされていたことがあるが、現在は別属とされる。茎ははい、花弁は黄色で、赤色のいちご状果をつくるが、美味でないのが特徴である。中国では本属の植物を薬用とする。

[鳴橋直弘 2020年1月21日]

 分子系統学的な解析ではヘビイチゴ属はキジムシロ属とするのが適当とされる。

[編集部 2020年1月21日]


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改訂新版 世界大百科事典 「ヘビイチゴ」の意味・わかりやすい解説

ヘビイチゴ (蛇苺)
Duchesnea chrysantha Miq.

匍匐(ほふく)枝をのばし群生し,初夏に真赤なイチゴ状果をつけるバラ科の多年草。原野や田のあぜによく見られ,葉は3出複葉で互生し,長い柄がある。春,葉腋(ようえき)から長い柄をのばし,上向きに1個の花をつける。花弁は5枚,黄色で,萼片および副萼片がある。おしべ20本,めしべ多数で,開花後,花托は球形にふくらむ。その上に多数の瘦果(そうか)をつける。

 ヘビイチゴのイチゴ状果は有毒であるといわれているが,実際は無毒である。オランダイチゴと形は似ているが,そのイチゴ状果は多汁質でなく,甘さも香りもない。中国では,全草が薬用として利用される。非常に似た種にヤブヘビイチゴD.indica (Andr.) Fockeがある。これはやや大型で,葉の緑色も濃く,瘦果はほとんどしわがなく光沢がある。

 ヘビイチゴ属Duchesneaはキジムシロ属やオランダイチゴ属と類縁が近く,外国では庭園などに植栽される。
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百科事典マイペディア 「ヘビイチゴ」の意味・わかりやすい解説

ヘビイチゴ

日本全土,東アジアの低地の路傍や田の畔(あぜ)などに多いバラ科の多年草。茎はつる状にのびて地をはい,卵円形の小葉3枚からなる葉を互生する。4〜6月,葉腋から1本の花柄を出し,頂に黄色5弁で径約1.5cmの花を1個つける。花後,イチゴのように花托が肥大し,球状の径約1cmの果実をつくり,表面に小さな分果を多数散生する。分果にこぶ状の突起がある。花托は,海綿質で甘味がなく,無毒であるが食用にならない。近縁のヤブヘビイチゴは全体に少し大きく,分果は滑らかで光沢があり,やぶや山中の草原にはえる。

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