デジタル大辞泉
「ヘルパンギーナ」の意味・読み・例文・類語
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ヘルパンギーナ
- 〘 名詞 〙 ( [英語] herpangina ) ウイルスの感染によって起こる乳幼児の病気。特有な症状として、小さな水疱や潰瘍(かいよう)が咽頭の前面に生じ、夏風邪の原因となることがある。
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ヘルパンギーナ
Herpangina
(感染症)
毎年7月ごろをピークとして4歳以下の小児、とくに1歳代に流行することが多い夏かぜの代表疾患です。高熱と口腔内の発疹(のどの奥に紅暈で囲まれた小水疱が現れる)が特徴的です。
原因ウイルスは多種類ありますが、多くはコクサッキーAウイルス(CA)、とくに4、6、10型が多いといわれています。そのほか、CA2、3、5、8、16型、コクサッキーBウイルス、エコーウイルスなども、ヘルパンギーナを起こすことがあります。
2~4日の潜伏期ののち、突然の高熱で発症します。口蓋垂(のどちんこ)の上周辺に紅暈を伴った多数の小水疱が認められます。水疱が破れて潰瘍を作ることもあり、幼小児では痛みのために水分摂取が不足し、高熱とも相まって脱水症状を起こすことがよくあります。
発熱に伴って熱性けいれんを合併することもありますが、一般的に数日の経過で回復し、予後は良好です。まれに無菌性髄膜炎や心筋炎を合併することがあります。
高熱と特徴的な口腔内の症状から、ほとんどが臨床的に診断されます。原因ウイルスを特定するには、患者さんの咽頭ぬぐい液、便などからウイルスを直接分離することが最も有効です。最近ではRTPCR法を用いてウイルス遺伝子(RNA)の検出を行うこともあります。抗体価を測定することもありますが、交差反応(別のものにも反応する)を認めることが多いので一般的ではありません。
区別すべき病気として、手足口病、単純ヘルペスウイルスによる口内炎、アフタ性口内炎などがありますが、その他の症状なども考慮すれば、臨床症状から診断されることがほとんどです。
通常、対症療法だけで回復します。飲食ができなくなったり脱水症を併発した場合は、輸液(点滴)を必要とする場合があります。合併症を併発した場合は、入院が必要となる場合があります。
高熱が出て経口摂取が十分できなくなる場合も多いため、早めにかかりつけの小児科を受診してください。流行時には、うがい、手洗いの励行、患者さんとの接触を避けることなどが予防につながります。ワクチンはありません。
患者さんは便中に1カ月近くウイルスを排泄していることが多いため、排便あるいはおむつ交換後の手洗いを徹底します。学校、幼稚園、保育所などでは登校・登園停止の疾患にはなっていませんが、その症状から、急性期は自宅での安静が必要です。
多屋 馨子
ヘルパンギーナ
Herpangina
(子どもの病気)
夏かぜ疾患のひとつで、熱とともに口腔粘膜に水疱、潰瘍ができ、痛みのため飲んだり食べたりすることが普段より落ちる病気です。夏季(主に4~10月ころ)に多く、幼児を中心に流行します。
主にコクサッキーA群ウイルスによります。ポリオウイルスやエコーウイルスと同じグループで、これらをまとめてエンテロウイルス、腸管ウイルスとも呼びます。
経口、経気道感染でウイルスが侵入し、3~6日の潜伏期ののち、急に高い熱が出て発病します。熱は1~4日続き、口蓋弓、軟口蓋、口蓋垂に小さな水疱ができ、破れると1~4㎜程度の潰瘍をつくります。これらは4~6日で治りますが、この間、痛みを伴うことが多く、食欲不振や不機嫌になり、よだれが出ます。
高熱が続いたり、機嫌が極めて悪くなったり、何かいつもとかなり違うような時には、無菌性髄膜炎を合併していることもあるので注意が必要です。
診断に役立つ特別の検査はありません。夏の流行期に口内所見が認められれば診断できます。
このウイルスに対する特効薬はありません。対症療法が中心になります。
すぐに小児科医の診察を受けてください。口のなかが痛くて食べることや飲むことが難しくなります。とくに高熱や飲むことができなくなるため、脱水症に注意してください。刺激の少ない、固くない物、たとえばヨーグルトやアイスクリームなどを与えてください。
浅野 喜造
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
家庭医学館
「ヘルパンギーナ」の解説
へるぱんぎーな【ヘルパンギーナ Herpangina】
[どんな病気か]
コクサッキーウイルスA群の感染でおこる夏かぜの1つです。
●かかりやすい年齢
かかるのは、90%以上が5歳以下の乳幼児です。
●流行する季節
晩春から夏にかけて多発します。
[症状]
3~5日の潜伏期を経て発病します。急に39℃前後の熱が出て、ふきげんになって食欲がなくなり、嘔吐(おうと)したりします。年長児の場合は、のどの痛みのほか、腹痛や頭痛を訴えることがあります。
のどの前口蓋弓(ぜんこうがいきゅう)から軟口蓋(なんこうがい)にかけての粘膜(ねんまく)に、直径2mm前後の小水疱(しょうすいほう)(水ぶくれ)が数個から十数個みえます。また、これがつぶれて小潰瘍(しょうかいよう)になったものが混在していることもあります。
熱は2~3日で下がり、のどの潰瘍も少しおくれて回復し、およそ1週間ですっかり治るのがふつうです。
[治療]
有効な薬はないので、解熱薬(げねつやく)を用います。
やわらかく、味の薄い、冷たい食事にします。乳幼児は、食欲不振と高熱のために脱水症(だっすいしょう)におちいり、輸液(点滴)が必要になることもあります。
[予防]
病人の咽頭分泌物(いんとうぶんぴつぶつ)や糞便(ふんべん)中のウイルスが飛沫感染(ひまつかんせん)、あるいは経口感染(けいこうかんせん)します。予防接種がないので、手洗いやうがいなどの一般的な予防法を守るほかはありません。
出典 小学館家庭医学館について 情報
ヘルパンギーナ
へるぱんぎーな
herpangina
おもにコクサッキーA群のウイルスの感染によっておこる乳幼児の夏かぜの一種で、咽頭(いんとう)粘膜に小水疱(すいほう)を生じ、のどが狭まるところから水疱性口峡炎ともよばれる。5歳までの乳幼児が90%を占め、晩春から夏にかけて多発する。ウイルスは咽頭分泌物や糞便(ふんべん)中に存在し、飛沫(ひまつ)感染あるいは経口感染する。
潜伏期は3~5日で、急に39℃前後の熱が出て2~3日続く。不機嫌になり、食欲がなく、嘔吐(おうと)したりする。すこし年長児の場合には、咽頭痛や嚥下(えんげ)痛のほか、腹痛や頭痛を訴える。他覚的には、咽頭粘膜が発赤して腫(は)れ、咽頭炎を呈するが、特徴的には前口蓋弓(こうがいきゅう)から軟口蓋にかけての粘膜に、直径2ミリメートル前後の灰白色の小水疱が数個から十数個みられる。この小水疱が破れて小潰瘍(かいよう)になったものが混在していることもある。
一般に軽症で予後はよく、1週間以内に症状はなくなる。病原ウイルスに効く薬はなく、解熱剤など対症療法を行う。乳幼児では高熱による拒食のため脱水症をおこし、輸液を必要とすることもある。したがって、食事は軟らかで味の薄い冷たいものを与える。ワクチンなど的確な予防対策はまだないので、患者との接触を避けるようにする。
[柳下徳雄]
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ヘルパンギーナ(コクサッキーウイルス,エコーウイルス,エンテロウイルス)
2)ヘルパンギーナ(herpangina):
ヘルパンギーナは突然の発熱と咽頭痛,嚥下痛で発症し,軟口蓋中心に発赤を伴う直径2~4 mmの小水疱が1~数個認められ,水疱は潰瘍化する.病変は口腔後方に集中し,ヘルペスウイルスによる口内炎のように歯肉炎を伴うことがない.鼻かぜ様の上気道症状はない.通常1週間で治癒する.原因ウイルスはA群コクサッキーウイルス(A2~A6,8,10,B1~5),エンテロウイルス9,16,17などである.毎年夏季に1歳をピークに5歳未満の小児に流行し,年間患者数は130万人程度と推定されている.ヘルパンギーナは感染症法における五類感染症・定点把握疾患であるが,学校伝染病には含まれていない.[中込 治]
■文献
Palacios G, Casa I, et al: Human enteroviruses. In: Infectious Diseases 3rd ed (Cohen J, et al eds), pp1528-1538, Mosby-Elsevier, 2010.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報
ヘルパンギーナ
主に乳幼児に発症する、発熱と口腔粘膜に現れる水疱性発疹を特徴とする病気。エンテロウイルスと呼ばれるウイルス群による感染症で、主に「コクサッキーウイルス」が原因となって発症する。いわゆる夏風邪の一種で6月~9月ごろにかけて流行する。1歳くらいからかかりやすくなり、多くは3~5歳以下に見られる。感染から発症までは3~5日、突然38~40度の高熱が出て、炎症を起こし赤くなった喉の奥・口蓋垂の根元付近に小さな水疱が数個~十数個できる。予防・治療薬はなく、対症療法として解熱剤を用いることもあるが、特に治療をしなくても1週間ほどで自然に治癒する。
出典 朝日新聞出版知恵蔵miniについて 情報
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「ヘルパンギーナ」の意味・わかりやすい解説
ヘルパンギーナ
39℃前後の発熱があり,咽頭(いんとう),口内粘膜,舌などに小さい水疱ができ,潰瘍(かいよう)となって痛む病気。夏,幼児に多く,4〜5日でなおる。病因はウイルス(コクサッキーA)で,治療は発熱に対する対症療法。食事は牛乳や流動食がよく,しみるもの等刺激物は避けたほうがよい。
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