化学親和力ともいう.化学変化の起こりやすさ(方向,平衡の位置または反応速度)を決める要素に対して与えられた古典的な語.親和力という語はすでに13世紀から用いられていた.18世紀には親和力として反応物質の量,正確には濃度がまず注目された.C.L. Berthollet(ベルトレ)(1803年)は,ある物質の化学的活性度は濃度のほかに,その親和力に依存するとした.C.M. Guldberg(グルベル)とP. Waage(ウォーゲ)(1864~1867年)は,かれらの質量作用の法則に出てくる定数を,最初,親和力係数とよび,これが親和力の比較の目安になるものとしたが,のちにこの定数を速度係数(現在の速度定数)とよびかえた.また,かれらは質量作用の法則から化学平衡の法則に到達した.一方,J. Thomsen(1854年)とP.E.M. Berthelot(ベルトロ)(1867年)は,多くの熱化学的実験から,反応熱が親和力の目安であり,化学反応は発熱の方向に進行すると結論したが,これが誤りであることは化学的可逆反応で吸熱の逆反応が起こることや,低温で起こらない吸熱反応でも高温で起こることから明らかである.J.W. Gibbs(ギブズ)(1876年)やJ.H. van't Hoff(ファントホッフ)(1886年)は,熱力学第二法則にもとづいて,化学反応は一定温度,一定圧ではギブズエネルギー減少の方向に起こることを明らかにし,また,化学平衡の法則を熱力学的に証明した.しかし,化学反応の速度は化学平衡とは一応別問題である.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
ドイツの作家ゲーテの小説。1809年刊行。標題は化学の概念からとられている。2種の化合物を互いに作用させると、もとの結合が壊れて別の化合物をつくることがある。人間の愛情の結び付きも同じ力によって危うくされることがあるが、無機物と違って人間には道徳的な力が与えられている。自然な愛情と理性との葛藤(かっとう)がこの小説のテーマである。エードゥアルトとシャルロッテ夫妻の家庭に、たまたま友人の大尉と少女オティーリエが加わることによって、夫婦の間柄は破れ、新たな結び付きができそうになる。シャルロッテと大尉は情熱を抑制するが、エードゥアルトはオティーリエへの愛におぼれる。オティーリエは罪を悔い絶食して死ぬが、エードゥアルトはその後を追う。冷静な筆致で問題を追究しながら、作者は情熱の暗い促しに心を震わせているように思われる。そこにこの小説の現代にも生きる新しさがある。
[小栗 浩]
『実吉捷郎訳『親和力』(岩波文庫)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…ギリシアでは古くエンペドクレスが,物質混成における支配原理としてこの2力を立て,プラトンは相異なるものどうしの間の引力を,アリストテレスは逆に相似るものどうしの間の引力を措定している。古代中国でも《周易参同契》など錬金(丹)術文献に同様の着想が登場することからもわかるように,こうした物質どうしの選択的な〈親和性〉もしくは〈親和力(引力)〉という概念は,その逆も含めて,錬金術的な自然学の中で永く生き続ける。ヨーロッパのルネサンス期以降,新プラトン主義やヘルメス思想に受け継がれたこの概念は,物質間の選択的な作用の説明に欠かせないものとなり,ニュートンも〈sociability〉という語でこの概念を利用している。…
※「親和力」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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