ベンゾキノン

デジタル大辞泉 「ベンゾキノン」の意味・読み・例文・類語

ベンゾキノン(benzoquinone)

ベンゼン環水素原子2個がそれぞれ酸素原子に置き換わった有機化合物キノンの一種。酸素原子の結合位置が異なる、オルトパラの2種類の異性体がある。化学式C6H4O2オルトベンゾキノンパラベンゾキノン

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化学辞典 第2版 「ベンゾキノン」の解説

ベンゾキノン
ベンゾキノン
benzoquinone

C6H4O2(108.10).ベンゼンジオンともいう.o-(1,2)-およびp-(1,4)-ベンゾキノンの2種類がある.【o-ベンゾキノン:カテコールエーテル中,無水硫酸ナトリウムの存在下,酸化銀で酸化すると得られる.Ag2CO3/Celite試薬を用いてベンゼン中2時間還流すると定量的(98%)に得られる.赤色の結晶.分解点60~70 ℃.クロロホルム中pH 3以下であれば安定である.ベンゼン,エーテルなどに可溶.不揮発性である.不安定で,水溶液中に放置すると1日で分解する.[CAS 583-63-1]【p-ベンゾキノン:天然には,ある種の昆虫のなかに存在する.合成的には,フェノールアニリンなどをクロム酸や過ヨウ素酸塩で酸化すると容易に得られる.また,ヒドロキノンをAg2CO3/Celite試薬と塩化メチレン中1時間還流しても定量的(97%)に得られる.黄色の結晶.融点116 ℃.1.318.昇華性がある.エタノール,エーテル,アルカリなどに可溶,水に微溶.非芳香族性であり,1,2-付加,1,4-付加を行い,さらにディールス-アルダー反応ジエノフィルとしてはたらく.酸化剤皮革のなめし,写真現像,染料の合成原料に用いられる.皮膚炎や眼の障害の原因になることがあるので,取り扱いには注意が必要である.LD50 130 mg/kg(ラット経口).[CAS 106-51-4]

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベンゾキノン」の意味・わかりやすい解説

ベンゾキノン
べんぞきのん
benzoquinone

ベンゼン環上の水素2原子を酸素で置き換えた構造をもつ化合物。キノンの一種であり、o(オルト)-ベンゾキノンとp(パラ)-ベンゾキノンの2種類の異性体がある。

 o-ベンゾキノンは不安定な赤色結晶で、ベンゼン、エーテル、アセトンに溶ける。

 p-ベンゾキノンは、アニリン、p-フェニレンジアミン、フェノールなどを酸化すると得られる。代表的なキノンで、単にキノンというとこの化合物をさす。

 キナノキの樹皮などに含まれているヒドロキシ酸であるキナ酸を酸化すると得られることが、古くから知られていたので、キナ酸の名にちなんでキノンの名が与えられた。黄色の刺激臭をもつ固体で昇華性がある。熱石油エーテル、アルカリ水溶液には溶けるが、水には溶けにくい。容易に還元されてヒドロキノンになる。酢酸ビニルスチレンなどの重合反応を停止させるので重合抑制剤になる。ほかに染料合成、皮なめしなどの用途をもつ。

[廣田 穰 2016年2月17日]


ベンゾキノン(データノート)
べんぞきのんでーたのーと

ベンゾキノン
o-ベンゾキノン

 分子式 C6H4O2
 分子量 108.1
 融点  60~70℃(分解)
 沸点  213.3℃
 密度  1.256g/cm3(20℃)

p-ベンゾキノン

 分子式 C6H4O2
 分子量 108.1
 融点  115.5℃
 沸点  (昇華)
 密度  1.318g/cm3(20℃)

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改訂新版 世界大百科事典 「ベンゾキノン」の意味・わかりやすい解説

ベンゾキノン
benzoquinone



ベンゼンから誘導されるキノンで,o-ベンゾキノンとp-ベンゾキノンがある。

 o-ベンゾキノンはカテコールをエーテル中無水条件下で酸化銀で酸化して得られる。赤色結晶で分解点60~70℃。ベンゼン,エーテル,アセトンによく溶ける。不安定で結晶,溶液いずれの状態でもかなり速やかに分解する。亜硫酸でカテコールに還元される。

 p-ベンゾキノンはアニリン,p-フェニレンジアミンなどを二クロム酸と硫酸で酸化して得られる。黄色結晶で融点116℃。昇華性があり蒸気は塩素臭がある。水蒸気蒸留ができ,エチルアルコール,エーテル,熱い石油エーテルに溶け,水には溶けにくい。アミン,アルコール,チオールなどと容易に1,4-付加反応を行うなどの共役ケトンとしての性質や,またヒドロキシルアミンとの反応でジオキシムをつくるなどの,ジケトンとしての性質を示す。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ベンゾキノン」の意味・わかりやすい解説

ベンゾキノン
benzoquinone

ベンゼンから誘導される化合物で,化学式 C6H4O2o 体と p 体とがある。 p-ベンゾキノンは単にキノンとも呼ばれる。刺激臭のある昇華性の黄色結晶。融点 116℃。アニリンを硫酸酸性で二クロム酸塩によって酸化するか,ヒドロキノンの酸化によって生成する。亜硫酸によってヒドロキノンに還元されるので,その製造原料となる。また,染料や皮革のなめしにも利用されるが,毒性が強いので注意が必要である。 o 体は暗赤色,分解点 60~70℃の結晶。ピロカテキンの酸化によって得られるが,p 体ほど重要ではない。

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百科事典マイペディア 「ベンゾキノン」の意味・わかりやすい解説

ベンゾキノン

ベンゼンの水素2個を酸素2個で置換した形の化合物C6H4O2。p‐,o‐の2異性体がある。p‐ベンゾキノンは単にキノンとも。黄色結晶。融点116℃。水に難溶,エタノールに可溶。アニリンなどの酸化により得られ,重合阻止剤として用いられる。o‐ベンゾキノンは赤色結晶で60〜70℃で分解。(図)
→関連項目キノン

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栄養・生化学辞典 「ベンゾキノン」の解説

ベンゾキノン

 C6H4O2 (mw108.10).

 酸化剤や化学合成の原料に使われる.

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世界大百科事典(旧版)内のベンゾキノンの言及

【キノン】より

…キノン類は,フェノール類,キノール類,芳香族アミン類の酸化によって容易に合成できる。代表的なものは,ベンゾキノン,ナフトキノン,フェナントレンキノン,アントラキノンなどであり,オルト位置,パラ位置が置換されたものをそれぞれオルトキノン(o‐キノン),パラキノン(p‐キノン)という。メタキノン(m‐キノン)は存在しない。…

※「ベンゾキノン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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