イギリスの批評家。1862年オックスフォード大学を卒業。65年同大学ブレーズノーズ・カレッジの個人指導教師となり,以後ほとんどここを離れることなく,死ぬまで思索と著作の独身生活を送った。批評家として最初に注目されたのは,1873年発表の《ルネサンス》で,これにより〈芸術のための芸術〉の擁護者,いわゆる〈印象主義批評〉の祖とみなされることとなった。O.ワイルドをはじめ,19世紀末の唯美主義文学者たちに強い感化を及ぼしたが,宗教や道徳を無視するとして非難を受けたこともある。批評論としてはほかに《批評論集》(1889),《プラトンとプラトニズム》(1893),遺稿を集めた《ギリシア研究》(1895)などがある。小説としては,マルクス・アウレリウス帝時代のローマ帝国を舞台に,マリウスという人物の精神の遍歴を描いた《エピクロス哲学の徒マリウス》(1885)が,作者自身の内面生活の発展を描いた教養小説として重要である。そのほかに短編小説集《架空の肖像》(1887),未完の長編小説《ガストン・ド・ラトゥール》(1896)などがある。ペーターは単に感覚的な美と快楽を求めたのではなく,精神的な美の追求を説いた。彼の散文は小説,批評論を問わず,身を削る苦心の結果生まれた完璧な文章表現であり,みずから主張する芸術美の結晶であった。日本にも大正時代以後大きな影響を及ぼした。
執筆者:小池 滋
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…彼らは父子間の血のつながりを知らないにもかかわらず,社会的な父親の存在を認めていることになる。このようなことのため,一般に,社会的な父親と自然的な父親が区別され,前者はペーターpater,後者はジェニターgenitorと呼ばれる。 今日の社会では,受胎から出生に至る自然のしくみを前提とするかぎり,自然的な親子関係と社会的な親子関係とは通常は一致する。…
…通常,〈系譜関係〉が親族の社会的関係に移行するには,それぞれの民族において特有の社会的承認が必要であり,人びとの社会的承認を経て合法的な地位―役割関係をもち,権利―義務関係をもった社会関係として親族関係が表現される。そこで〈ジェニター〉は社会的承認のある父親〈ペーターpater〉となり,〈ジェニトリックス〉は社会的承認のある母親〈メーターmater〉となるのである。しかし,男親に関しては,〈ジェニター〉必ずしも〈ペーター〉にあらずという例が多く,双方が同一人物とはならない例が世界各地に認められる。…
…この作品を伝える写本はただ一つしかなく,パリ国立図書館蔵となっている。ウォルター・ペーターがその著《ルネサンス》(1873)の中でルネサンスの先駆的作品として,同じ13世紀フランスの作品《アミとアミル》と共にこの作品を取り上げて以来,広く一般の関心を集めたため,日本にも早くから紹介され(1894年《文学界》第16号に平田禿木が《オーカシンの君》の読後感を述べているのが最初),邦訳も数種出ている。【松原 秀一】。…
…当然ながら,文芸批評の側にもそれに並行する動きがみられた。イギリスのW.H.ペーターの印象主義批評などが,その典型的な例である。 そのような文芸批評の内部にひそんでいた問題を最も明確なかたちで提示したのは,おそらく,1910年代に新しい文芸批評の運動を起こしたロシア・フォルマリズムに属する人々であろう。…
…イギリスの批評家W.H.ペーターの批評論集。《文芸復興》とも訳されている。…
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