日本大百科全書(ニッポニカ) 「ホウボウ」の意味・わかりやすい解説
ホウボウ
ほうぼう / 魴鮄
竹麦魚
hobo gurnard
red gurnard
[学] Chelidonichthys spinosus
硬骨魚綱スズキ目ホウボウ科に属する海水魚。北海道南部以南、東シナ海、黄海、渤海(ぼっかい)、南シナ海に分布し、水深5~615メートルの泥地や貝殻まじりの砂地にすむ。頭は堅い骨板で包まれ、吻端(ふんたん)に短い棘(とげ)がある。背びれの棘(きょく)状部と軟条部の基底に小棘のある骨板が1列に並ぶ。胸びれは長くて広く、その下部3軟条は肥大して互いに離れ、歩行索餌(さくじ)に用いられる。体表は微細な円鱗(えんりん)で覆われ、体色は紫色を帯びた紅色で、赤紅色の大きな斑紋(はんもん)が散在する。胸びれの内側の地色は淡緑色で縁辺部は鮮青色、下半部に多数の青色の小斑紋が散在して美しい。幼魚では下半部に大きな黒色斑がある。全長40センチメートルになる。
おもに小エビ、カニ、シャコ、小魚などの底生動物を食べて成長し、生後1年で約15センチメートル、2年で22センチメートル、5年で32センチメートル余りになる。全長30センチメートルぐらいから成熟し、産卵期は12~5月で、海域によって異なる。卵は油球1個をもつ分離浮性卵で、受精後4日で孵化(ふか)する。孵化仔魚(ふかしぎょ)は3.1~3.3ミリメートル。うきぶくろに付いた発音筋を振動させてぐぐっぐう、ぐうぐう、ぼうぼうなどと発音するので、地方によってはコトヒキ(琴弾き)ともいう。底引網などによって漁獲される。肉は白くて味が淡泊であり、高級魚として取り扱われる。鍋物(なべもの)のほか、刺身、蒸し物、焼き魚、吸い物などにする。
[落合 明・尼岡邦夫]