ベルギーの画家。P.デルボーとともに20世紀ベルギー絵画を代表する。ブリュッセルの西方,レシーヌ生れ。10歳ころから絵を始め,1916年から2年間ブリュッセルの美術学校に学ぶ。19年ころから未来主義やオルフィスムに強い関心を示し非象形的(ノン・フィギュラティフ)な絵画をめざすが,22年詩人ルコントMarcel Lecomteを通じて知ったキリコの《愛の歌》に衝撃をうけ,25年シュルレアリスムへ転ずる。27年パリ郊外に移りA.ブルトン,P.エリュアールらシュルレアリストと親交を結ぶ。30年ブリュッセルに戻る。マグリットの絵画は,ありふれたものを写実的に描きだしながら,現実にはありえないような組合せ,配置,関係を示すことで,非日常的で特異な世界を作り出している。ブルトンはそれを〈白日の光のなかのシュルレアリスム〉と評した。彼のこのようなトロンプ・ルイユ,つまり視覚を超えたいわば〈観念〉のトロンプ・ルイユは,同世代のシュルレアリストばかりでなく,ダインJim DineやC.オルデンバーグなど,のちのポップ・アートの作家にも少なからぬ影響を及ぼしている。
執筆者:千葉 成夫
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ベルギーの画家。11月21日エノー地方のレッシーヌに生まれる。ブリュッセルの美術学校に学び、キュビスム、未来派の影響を受けた作品を制作していたが、1922年デ・キリコの作品と出会いシュルレアリスムに転向。25年の『窓』にみられるような最初のシュルレアリスム風な作品を描く。26年ベルギーのシュルレアリスムのグループと「神秘協会」を結成し、翌年パリに出て、アンドレ・ブルトン、ポール・エリュアールらと親交を結び、29年シュルレアリスムの正式メンバーとなった。初期の作品には、事物の唐突な出会いを意図した「デペイズマン」dépaysementの手法が多くみられ、一見無関係と思える日常的なイメージを組み合わせ、あるいは超自然的な状況を設定することによって、斬新(ざんしん)な詩的・神秘的絵画空間を描出した。その後、ことばとイメージ、意味するものと意味されるものとの関係を追求した作品を制作したが、マグリットの主要なテーマ、手法は1930年代にほぼ出そろっており、一時期を除けばその後の本質的な変化はみられない。67年8月15日ブリュッセルで死去した。代表作に『アルンハイムの領土』(1960)などがある。
[徳江庸行]
『A・ハマハー解説、高橋康也訳『マグリット』(1975・美術出版社)』▽『小倉忠夫解説『現代世界美術全集22 アンソール/マグリット』(1974・集英社)』
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