マナヅル(英語表記)Grus vipio; white-naped crane

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マナヅル」の意味・わかりやすい解説

マナヅル
Grus vipio; white-naped crane

ツル目ツル科。全長 112~127cm。眼のまわりが大きく裸出して赤く,その周囲や額が黒い。喉や頭上から後頸は白い。耳羽は暗灰色。頸側から前頸に伸びて胸につながる帯や,胸から腹,背,肩は黒灰色。初列風切羽や次列風切羽は黒く,雨覆羽と,尾羽を覆って後方に長くたれる三列風切羽は灰白色は緑褐色で,脚は赤紫色。中国東北部,モンゴル北東部と隣接するロシア南東部,ウスリー川アムール川流域に分断して繁殖し,日本,中国南東部,朝鮮半島で越冬する。巣は湿原低地草原につくり,雑食性で植物質から小動物まで食べる。日本ではかつて全国に渡来したが,近年では鹿児島県出水市が主要な越冬地で,ほかの地域には渡来してもごく少数である。2013年現在,世界の個体数は推定で 5000~6000羽。国の特別天然記念物(→天然記念物)で,環境省のレッドデータブックでは絶滅危惧II類に,「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」(種の保存法)では国際希少野生動植物種に指定されている。ワシントン条約附属書I適用鳥。

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改訂新版 世界大百科事典 「マナヅル」の意味・わかりやすい解説

マナヅル (真鶴/真那鶴)
white-naped crane
Grus vipio

ツル目ツル科の鳥。全長約130cm。体は石板灰色で,頭頸とうけい)部は白く,顔は皮膚が裸出して赤い。初列・次列風切は黒いが,雨覆と三列風切は灰色で,三列風切は長くのびて体のうしろをおおっている。脚は暗赤色くちばしは黄色ないし緑黄色。繁殖地はシベリア南東部と中国東北部の湿地であるが,繁殖地の状態や繁殖生態は詳しく調査されたことがない。日本,朝鮮半島,中国の長江揚子江河口などの湿地・水田・農耕地などで越冬している。なかでも日本はこの種の主要な越冬地で,鹿児島県出水市とその周辺に約2200羽(1996)が越冬している。周辺部の農耕地に出て生活するナベヅルとは対照的に,マナヅルはほとんどの個体が保護区内の餌場兼就塒(しゆうじ)地と近くの干拓地で生活している。食物は,水生植物の根,サツマイモ穀物などで,小魚や水生動物も見つけしだい食べる。
ツル
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百科事典マイペディア 「マナヅル」の意味・わかりやすい解説

マナヅル

ツル科の鳥。翼長58cm。後頭,頸白く,背面は青灰色。シベリア南東部,中国東北北部等で繁殖し,冬は中国,朝鮮,日本に渡る。日本では鹿児島県出水市のツル渡来地にナベヅルとともに生息数の半数近い約2000羽が渡来する。特別天然記念物。家族群で生活し,水田,沼沢地,干潟などでドジョウ,タニシ,草の根などを食べる。渡りや長い移動の時には大きな群を作り,隊列を作って飛ぶ。クルルルと大きな声で鳴く。絶滅危惧II類(環境省第4次レッドリスト)。
→関連項目ツル(鶴)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「マナヅル」の意味・わかりやすい解説

マナヅル
まなづる / 真那鶴
white-naped crane
[学] Grus vipio

鳥綱ツル目ツル科の鳥。全長約1.25メートル。タンチョウよりやや小さい。頭頸(とうけい)部は白く、体と胸から頸側にかけてスレート灰色。顔は皮膚が裸出して赤い。嘴(くちばし)はオリーブ緑色、足は暗赤色である。シベリア南東部の湿原で繁殖し、日本、朝鮮半島、中国東部で越冬するが、おもな越冬地は日本である。鹿児島県出水(いずみ)市などに毎年渡来する。その数は約3000羽(2010年1月調査)である。越冬地では群れをつくって生活し、水田や湿地で水生昆虫、小魚、タニシ、穀物、水生植物やサツマイモの根などをあさっている。巣は、他のツル類と同じく、湿地の地面に枯れ枝や枯れ茎を集めてつくり、普通、1腹2個の卵を産む。

[森岡弘之]


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世界大百科事典(旧版)内のマナヅルの言及

【ツル(鶴)】より

…また,タンチョウとマナヅルは日本画に描かれる代表的な鳥の一つである。
[種類]
 シベリア,中国北部で繁殖する種がいちばん多く,マナヅルGrus vipioナベヅルG.monachaタンチョウG.japonensis,ソデグロヅルG.leucogeranus,クロヅルG.grus,カナダヅルG.canadensisの6種を数える。アジアでは,このほかタンチョウが日本で,オグロヅルG.nigricollisがカシミール,チベット,中国北西部の高地で,オオヅルG.antigoneが南アジアで,アネハヅルAnthropoides virgoがアジア中央部で繁殖している。…

【ツル(鶴)】より

…熱帯や南半球のものは留鳥だが,北半球の高緯度地方で繁殖する種は,冬季南へ渡って越冬する。日本では,タンチョウ(イラスト)が北海道に留鳥としてすみ,マナヅル(イラスト),ナベヅル(イラスト),クロヅル,カナダヅル(イラスト),アネハヅル,ソデグロヅルの6種が冬鳥または迷鳥として渡来している。 全長70~150cm。…

※「マナヅル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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