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マルサス主義 マルサスシュギ

デジタル大辞泉の解説

マルサス‐しゅぎ【マルサス主義】

Malthusianismマルサスの唱えた人口食糧の関係に関する学説。人口は幾何級数的に増えるが、食糧は算術級数的にしか増えないことから、この結果起こる貧困と悪徳は一種の人口抑制要因として働く自然現象であって資本主義経済の欠陥によるものではないとし、その対策として、結婚年齢の延期という道徳的抑制を推奨した。

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世界大百科事典 第2版の解説

マルサスしゅぎ【マルサス主義 Malthusianism】

イギリスの古典派経済学者マルサスが主著《人口論》(初版1798)で主張した人口原理ないし人口政策のこと。マルサスの人口原理の骨子は,(1)人間の生存には食料が必要であること,(2)人間の情欲は不変であること,しかし(3)食料は算術級数的にしか増加しない(のちに〈収穫逓減の法則〉と呼ばれるに至ったもの)のに対し,人口は幾何級数的に増加すること,したがって(4)人口は絶えず食料増加の限界を超えて増加する傾向があること(なお,このようにして増加した人口は〈絶対的過剰人口〉と呼ばれ,マルクスの〈相対的過剰人口〉と区別される),(5)絶対的過剰人口はマルサスによって〈積極的抑制positive check〉と呼ばれた〈貧困と悪徳〉によって食料増加の限度内に抑圧される。

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大辞林 第三版の解説

マルサスしゅぎ【マルサス主義】

マルサスが「人口論」の中で説いた人口原理が労働者の貧困に帰着しないためには、道徳的抑制が必要であるという考え方。結婚を遅らせ、結婚後は産児制限をしないという内容。 → 人口原理新マルサス主義

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

マルサス主義
まるさすしゅぎ
Malthusianism

本来はマルサスが『人口論』(1798)で説いた人口と食糧との関係に関する学説をいう。マルサスによれば、人口はいつも食糧の限度以上に増加しようとする。だがさまざまの障害があってそれは抑えられる。第一は人口の増加率と食糧の増加率との違いから生ずる食糧不足(終極的制限)、第二は流行病、戦争、極端な貧困、激しい労働のような人間の寿命を縮める諸要因(積極的制限)、および、結婚を控えるといった意識的行為(予防的制限)である。どの国でも第二の直接的制限のうちのいずれかが作用して人口増加を抑えるから、終極的制限が作用するのは飢饉(ききん)の際のみである。それでもなお、人口は食糧以上に増加しようとしており、これが下層諸階級の生活改善を妨げている。資本主義の下での労働者の貧困は、社会制度によるのではなく人口法則に基づいている。マルサスは、W・ゴドウィンらの社会改革論に反対するため、以上のような主張を展開した。以後、過剰人口の脅威を唱える思想をマルサス主義とよぶようになった。
 マルサスに対する批判は、いち早くマルクス、エンゲルスによってなされたが、以後もマルサス主義論争は絶えることがない。F・オッペンハイマーは『マルサスおよび新国民経済学の人口法則』(1900)で、マルサスに続く予言的マルサス主義者としてラベンスタインErnst Georg Ravenstein、ワーグナーAdolf Heinrich Gotthilf Wagner、リューメリンGustav von Rmelinなどをあげ、批判した。第二次大戦後は、いわゆる発展途上国の人口激増に伴う重圧がマルサス的問題の最たるものと考えられている。[皆川勇一]
『T・R・マルサス著、高野岩三郎・大内兵衛訳『初版 人口の原理』(岩波文庫) ▽R・L・ミーク編、大島清・時永淑訳『マルクス、エンゲルス マルサス批判』(1955・法政大学出版局) ▽南亮三郎・館稔編『マルサスと現代』(1966・勁草書房)』

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