精選版 日本国語大辞典 「高野岩三郎」の意味・読み・例文・類語
たかの‐いわさぶろう【高野岩三郎】
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統計学者。労働運動への助言・指導と労働者教育の分野でも先駆的役割を果たす。高野房太郎の弟。明治4年9月2日長崎県西彼杵(にしそのぎ)郡長崎区銀屋町(長崎市)に生まれる。東京帝国大学法科大学卒業後、大学院で労働問題と統計学を専攻し、在学中の1897年(明治30)桑田熊蔵、小野塚喜平次らと社会政策学会を創立、その中心的世話役となった。99年より4年間ドイツに留学、社会統計学および経済学を学んで帰国し、東大の教授となって同大学で初めて設けられた統計学の講座を担当、社会統計学の研究と普及に努めた。1910年(明治43)国勢調査準備委員となり、日本最初のセンサス実施を指導し、また16年(大正5)わが国最初の試みとして「二十職工家計調査」を実施した。彼はまた東大法科大学より経済学部を独立させるため努力し、19年これを実現させた。この年、国際労働会議の代表に選任されたが、手続上の不備から労働組合の反対にあって断念、責任をとって東大を辞職した。これを機に大原社会問題研究所の所長となり、社会問題の研究調査や学者養成に尽力。また労働運動、無産政党運動の助言者となり、他方、大阪労働学校の経営委員長としてその運営に献身した。25年学士院会員、38年(昭和13)国際統計協会正会員となる。
戦後、「日本共和国憲法私案要綱」を発表して天皇制廃止と共和国大統領制を主張、また安部磯雄(あべいそお)、賀川豊彦(とよひこ)らと連名で社会主義政党結成を呼びかけ、のち日本社会党の顧問となる。1946年(昭和21)より49年4月5日に没するまで日本放送協会会長として放送民主化に尽力した。統計学に関する代表的著作に『統計学研究』(1915)、『社会統計学史研究』(1925)などがあり、また監訳書に『統計学古典選集』11巻(1941~49)、ウェッブ夫妻著『産業民主制論』(1927)などがある。
[大島 清]
『大島清著『高野岩三郎伝』(1968・岩波書店)』▽『法政大学大原社会問題研究所編『大阪労働学校史』(1982・法政大学出版局)』▽『多田吉三編『家計調査論集』(1992・青史社)』
統計学者。高野房太郎の弟。長崎に生まれ,1895年東京帝大法科卒後ヨーロッパに留学,おもにG.マイヤーの指導を受け,帰国後東大教授となり統計学を担当した。1910年国勢調査準備委員となって日本最初のセンサス実施を指導し,また16年東京において日本で初めての職工家計調査を実施した。さらに,東大の法科大学から経済学部を独立(1919)させることに尽力した。19年東大辞職後大原社会問題研究所の所長となり,社会問題の研究指導と学者養成に努め,無産政党運動,労働運動,労働者教育運動にも助言し援助した。第2次大戦後,〈日本共和国憲法私案要綱〉を発表し共和制を主張した。晩年はNHK会長(1946-49)として放送民主化に貢献した。主著《統計学研究》(1915),《社会統計学史研究》(1925)。
執筆者:大島 清
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(藤井隆至)
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1871.9.2~1949.4.5
大正・昭和期の社会統計学者・社会運動家。長崎県出身。房太郎の弟。東大卒。ヨーロッパに留学後,東京帝国大学教授。日本の統計学の創始者で,日本初の組織的な家計調査・社会調査を実施。労働組合問題・無産政党問題にも関与。大原社会問題研究所初代所長。第2次大戦後,日本共和国憲法私案要綱を発表。NHK会長も務める。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
…第1次大戦後米騒動勃発にみられる社会問題の深刻化のなかで,社会を科学的に調査研究するための機関として設立された。大原は初代所長高野岩三郎を信頼して,20年にわたって私財を投じつづけた。高野のもとに,櫛田民蔵,大内兵衛,森戸辰男,久留間鮫造,細川嘉六,笠信太郎らが所員となり,研究嘱託の長谷川如是閑ほか多くの研究者が参加し,日本の社会科学研究・社会調査に大きな貢献をした。…
※「高野岩三郎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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