マルタン

デジタル大辞泉 「マルタン」の意味・読み・例文・類語

マルタン(Pierre Émile Martin)

[1824~1915]フランス製鋼技術者。ジーメンスの蓄熱式反射炉の原理を利用して平炉製鋼法(ジーメンスマルタン法)を発明転炉法より炭素の少ない鋼鉄を得ることに成功した。

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百科事典マイペディア 「マルタン」の意味・わかりやすい解説

マルタン

スイス作曲家,ピアノ奏者,ハープシコード奏者。牧師の息子としてジュネーブに生まれ,少年時代にJ.S.バッハ傾倒。同地でピアノや作曲を学ぶ。1918年―1925年チューリヒ,ローマ,パリで暮らしたのち1926年生地に落ち着き,室内音楽協会を設立してピアノおよびハープシコード奏者として活動。またジャック・ダルクローズと知り合い,1928年から10年余その研究所で即興演奏法やリズム理論を講じた。調性と12音技法(十二音音楽)を溶け合わせた特有のスタイルで知られ,新古典主義的な整然とした形式感の中に澄んだ抒情性をたたえた名作を数多く残している。作品に,ハープ,ハープシコード,ピアノと2つの弦楽オーケストラのための《小協奏交響曲》(1944年−1945年,改訂1946年),オラトリオ《魔法の酒》(1938年−1941年),同《ゴルゴタ》(1945年−1948年),《バイオリン協奏曲》(1951年),《ハープシコード協奏曲》(1952年),声と管弦楽のための《レクイエム》(1971年−1972年)などがある。→ハープシコード
→関連項目合奏協奏曲キリスト教音楽シュトックハウゼンフルニエ

マルタン

フランスの製鋼技術者。父の製鋼工場で働いていたが,1864年シーメンズ式の蓄熱反射炉(平炉)による製鋼に成功,平炉はシーメンズ=マルタン炉と呼ばれる。晩年は貧窮,全欧の製鋼業者から年金を得た。
→関連項目シーメンズ

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改訂新版 世界大百科事典 「マルタン」の意味・わかりやすい解説

マルタン
Pierre Martin
生没年:1824-1915

屑鉄を用いる平炉製鋼法を発明したフランスの冶金技術者。ブールジェ生れ。鉱山学校卒業後,シルールにあった父エミールEmileの製鉄所で働いた。1864年にシーメンズ式の平炉(W. シーメンズとF. シーメンズの兄弟が1861年に発明)を用い,溶融銑鉄に屑鉄を加えることによって,銑鉄中の炭素分を下げ鋼を製造することに成功した。66年にはシーメンズ兄弟とマルタン父子との間で平炉稼行の契約が成立した。マルタンの製品鋼は67年パリ博覧会で金賞を得た。89年建設のエッフェル塔の構造材料もシーメンズ=マルタン鋼であった。のち没落し,1910年にパリの場末で見いだされ,平炉法発明50周年を期に年金を送られた。
執筆者:


マルタン
Frank Martin
生没年:1890-1974

スイスの作曲家。スイス,イタリア,フランスに学び,1926年に生地ジュネーブに居を定め,室内楽協会を設立。鍵盤奏者として活躍する。一方,É.ジャック・ダルクローズ研究所で即興演奏法とリズム理論を教えたり,私立音楽学校長を務めるなど教育者としても活躍した。30年代以降に十二音技法や新古典主義的語法による重要作を生み出している。代表作は《バイオリン協奏曲》(1951)などの協奏的管弦楽曲である。
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ピティナ・ピアノ曲事典(作曲者) 「マルタン」の解説

マルタン

1890年ジュネーブに生まれる。作曲家。8歳の頃から作曲を始める。音楽の機関では教育を受けておらず、和声と作曲、ピアノをヨーゼフ・ラウバーに師事。1926年ジャック‐ダルクローズ研究所にて音楽理論と作 ...続き

出典 (社)全日本ピアノ指導者協会ピティナ・ピアノ曲事典(作曲者)について 情報

世界大百科事典(旧版)内のマルタンの言及

【鉄】より

…ベッセマーもはじめスウェーデン銑を使用したが,のちにイギリス,カンバーランドのヘマタイト(赤鉄鉱),スペインのビルバオ鉱石などから優秀なベッセマー銑を製造し,ベッセマー法の大規模な発展が始まる。 転炉法に続いて64年,フランスのP.マルタンが平炉法を工業化した。ジーメンス兄弟,次男のウィルヘルム(1823‐83)と三男のフリードリヒ(1826‐1904)の発明した蓄熱方式の反射炉による製鋼で,転炉法と並ぶもう一つの溶鋼法である。…

【鋼】より

…一方,18世紀ころから鋳鉄の製造法として反射炉が用いられはじめ大砲などが鋳造されていたが,イギリスのコートHenry Cort(1740‐1800)は,反射炉をさらにくふうして銑鉄の溶融だけでなく,溶融した銑鉄をかくはん(攪拌)することによって半溶融状の可鍛鉄をつくることに成功した。この反射炉はとくにパドル炉と呼ばれるが,19世紀後半W.シーメンズ,P.E.マルタンの努力によって反射炉はさらに改良され,溶融状態の鋼を容易に製造できる平炉がつくられた。それより少し前の1856年,H.ベッセマーは転炉法を発明したが,これは溶けた銑鉄を炉の中に入れ炉の底から空気を吹き込むことにより,銑鉄中の炭素やケイ素を酸化させ,その際発生する熱を利用して溶けた鋼をつくるというものである。…

※「マルタン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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