マルロー(英語表記)Malraux, André

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

マルロー
Malraux, André

[生]1901.11.3. パリ
[没]1976.11.23. パリ
フランスの作家,政治家。東洋語学校に学ぶ。考古学調査のためインドシナにおもむき,クメール文化遺跡の発掘に従事するとともに,安南および中国の革命運動に参加。その体験と思索をエッセー『西欧の誘惑』 La Tentation de l'Occident (1926) ,小説『征服者』 Les Conquérants (28) ,『王道』 La Voie royale (30) および『人間の条件』 La Condition humaine (33) に著わした。スペイン内乱に際しては共和派の義勇軍航空隊長として戦い,その体験を『希望』L'Espoir (37) に,また第2次世界大戦では負傷して捕虜となり脱走,それを『アルテンブルクの胡桃の木』 Les Noyers de l'Altenburg (43) に,それぞれ作品化した。対独レジスタンスの闘士としても活躍,戦後はドゴール政権下の国務大臣 (文化相など) をつとめた。『沈黙の声』 Les Voix du silence (51) 以下の美術評論でも,独自の思想を展開した。ほかに『反回想録』 Antimémoires (67) など。

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百科事典マイペディアの解説

マルロー

フランスの作家,政治家。1923年―1926年仏領インドシナ,中国に滞在。この体験から西欧の衰退を指摘する《西欧の誘惑》,小説《征服者》《王道》と《人間の条件》(1933年)が生まれる。反ファシズム闘争に参加,スペイン内乱のルポルタージュ形式の《希望》を発表。第2次大戦で捕虜となるが脱走,レジスタンスにベルジェ大佐の名で活躍,ド・ゴールと近づく。この間に内省的な《アルテンブルクのくるみの木》を書く。戦後ド・ゴール内閣の情報相,1959年―1969年文化相。そのかたわら《沈黙の声》《神々の変貌》等の美術論も書いた。1967年《反回想録》を執筆した。
→関連項目NRFオペラ座ガリマール[会社]行動文学ゴンクール賞実存主義パリ管弦楽団フォートリエ

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世界大百科事典 第2版の解説

マルロー【André Malraux】

1901‐76
フランスの作家。パリに生まれる。若くして前衛的な詩人,作家と交わったが,1923年フランス領インドシナでクメール王朝の遺跡を探検して盗掘嫌疑を受け,またジャーナリストとして同地民族運動を支援した。帰国と同時に,往復書簡体の東西文化論《西欧の誘惑》(1926)を刊行。さらに中国の広州コミューンをルポ風に描いた《征服者》(1928),密林の中の遺跡をめぐる冒険小説《王道》(1930)を発表して文名を高めた。

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大辞林 第三版の解説

マルロー【André Malraux】

1901~1976) フランスの小説家・政治家。スペインや中国の内乱に参加、その体験をもとに行動的人間のニヒリズムを描いた。第二次大戦後はド=ゴールの盟友として情報相・文化相を歴任。小説「征服者」「王道」「人間の条件」「希望」など。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

マルロー
まるろー
Andr Malraux
(1901―1976)

フランスの小説家、思想家。11月3日パリに生まれる。前衛芸術の雰囲気に触れて育ち、アポリネールの影響の色濃い、想像力により現実とは異質な美の世界を造型した幻想的散文『紙の月』(1921)によって文壇にデビューした。しかし1923年訪れたインドシナでクメール遺跡盗掘により投獄されたころから、別のマルローが顕現する。1926年の『西欧の誘惑』は、いまや西欧社会は凋落(ちょうらく)し神も人間も死んだという、大戦という大殺戮(さつりく)に立ち会った世代の悲劇的状況の認識を表明したものだが、それに続く、それぞれ中国革命とインドシナの遺跡探検に題材を得た小説『征服者』(1928)と『王道』(1930)は、人生の不条理を熟知したうえで行動に賭(か)けることによって悲劇的状況を脱出しようという、新しい時代の生き方を暗示するものにほかならなかった。とはいえ1933年の『人間の条件』は、行動によって死に抵抗する知識人の群像を描きながら、そこに人間の普遍的価値への信仰を導入することによって、さらに新しいマルローの変貌(へんぼう)を示唆する。それはむろん、1930年代の危機的現実のなかで、彼が1932年以後反ファシズムの闘士として活躍し始めることと無縁ではなかった。以後1939年の独ソ不可侵条約によってコミュニスムと決別するまで、彼は政治参画する西欧知識人の先頭にたち続ける。その間『侮蔑(ぶべつ)の時代』(1935)、『希望』(1937)などの作品により、普遍的価値を擁護する自らの行動を意識化するとともに、現実と拮抗(きっこう)する独自の全体小説をつくりだすのである。
 第二次世界大戦に従軍、捕虜となり収容所を脱出したあと、最後の小説『アルテンブルグのくるみの木』(1943)を書き、人間の普遍的価値に支えられた神話的時代への幻滅から、時代を超えて生き続ける原初的なものの発見に至る道程を跡づける。そして1944年レジスタンスに参加、マキ団の指導者として終戦を迎える。戦後のマルローの歩みはドゴールのそれと切り離すことはできない。1945年にドゴール政権の情報相(~1946)に迎えられ、1958~1969年の間ドゴール時代に新設された文化相の椅子(いす)を守り続ける。だが国家として芸術を保護し育成した文化相としてのその輝かしい業績は、『沈黙の声』(1951。邦訳名『東西美術論』)、『神々の変貌』(1957)といった戦後のユニークな芸術論とともに、『アルテンブルグのくるみの木』の予告した、原初的なものの認識に基づく、人間を人間たらしめるものとしての新しい文化の概念に深くかかわっていることを見落としてはならない。小説家マルローは文化の演出家に変貌を遂げ、1976年11月23日パリ郊外クレテーユで生涯を閉じた。その死は国葬をもって弔われた。ほかに作品として独特な自伝『反回想録』(1967)を逸することはできない。[渡辺一民]
『小松清・松浪信三郎訳『西欧の誘惑』(『世界の大思想 14』所収・1968・河出書房新社) ▽渡辺一民著『マルローの変貌』(『神話への反抗』所収・1968・思潮社) ▽小松清訳『征服者』(新潮文庫) ▽新庄嘉章他訳『新潮世界文学45 マルロー』(1970・新潮社) ▽村松剛著『評伝アンドレ・マルロオ』(1972・新潮社) ▽竹本忠雄訳『反回想録』全2巻(1977・新潮社)』

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世界大百科事典内のマルローの言及

【映画】より

…サイレントからトーキーへ移る混乱期が終わるころ(1933‐34)に《映画の文法》を書き,完全な映画は視覚的要素と音響要素から構成されると定義したイギリスのR.スポティスウッドは,〈映画芸術はまだ確立されていない〉といい,演出された映画は演劇の延長にすぎず,芸術として劣るものであると断言している。それとまったく同じ理由から,フランスの作家A.マルローは逆に〈映像と音を組み合わせた表現の可能性〉からこそ新しい芸術が生まれた,とその著《映画心理学の素描》(1941)で書いた。
[映画そのものの探究へ]
 こうして,映画の芸術性についての論議は結着をみないまま時代を経て続けられた。…

【スペイン内乱】より

…(3)スペインの進路は,宿命的にヨーロッパの掌中に握られていた。(4)内乱像は,外国の諸新聞や世界的に著名な作家(ヘミングウェー,マルローら)の手によって固定化した。これらは一様にスペイン文化を評価し,さらに共和国陣営からの見聞であった。…

【反ファシズム】より

…日独伊三国軍事同盟締結と大政翼賛会,大日本産業報国会の結成は,40年のことであったが,このときにはすでに反ファシズムの組織と言論は皆無に近かった。【鈴木 正節】
【国際的な反ファシズム文化運動】
 国際的な反ファシズム文化運動の先駆としては,反戦を掲げてロマン・ロランとバルビュスが呼びかけ,ゴーリキー,アインシュタイン,ドライサー,ドス・パソスらが発起人に名を連ねる,1932年8月アムステルダムの国際反戦大会に29ヵ国2200名を集め,翌年パリで第2回大会を開催した〈アムステルダム・プレイエル運動〉,フランスの急進社会党代議士ベルジュリが主唱し,J.R.ブロック,ビルドラックらの協力した33年5月結成の〈反ファシズム共同戦線〉,ジッド,マルローらによる〈革命作家芸術家協会〉の33年における反ファシズム運動などがあげられる。しかし,それが政治的立場を超えた知識人の統一運動として定着するのは,34年の2月6日事件をまたなければならない。…

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