翻訳|market share
市場で販売されるある生産者の特定商品がその市場全体のなかで,どのくらいの大きさを占めているかを示す指標。市場占拠率,市場占有率ともいう。たとえば,ある商品の生産量をs,その商品の市場全体の生産量をSとするとマーケット・シェアMは次の式で計算される。
s/S×100=M(%)
ただし,実際に数量的に測定するとき次のような問題が存在する。第1に,相互に競争関係にある商品の範囲をどこまでとるのが適切かということがある。大企業の販売する商品は製品差別化の進んでいるものが多いので,それらの間で代替可能性の高いものをまとめて市場を確定しなければならない。第2に,今日では多くの商品が海外からの競争圧力を受けている。したがって輸入される競合商品としての外国製品を十分に考慮に入れなければならない。第3に,市場が確定されたとしても,その規模を何によって測定するかということがある。生産量,販売量,出荷量などのデータのなかから分析の目的に適したものを選ばなくてはならない。
産業組織の分析では,企業の市場支配力という概念が用いられるが,この市場支配力を示す一つの指標として,マーケット・シェアが重視される。価格の決定において,プライス・リーダーシップをとる企業はマーケット・シェアの最も大きい企業であることがしばしばあるからである。またマーケット・シェアを上位数社について集計したものを市場集中度market concentration ratioと呼び,市場における競争の程度を示す指標とすることが多い。
執筆者:南部 鶴彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ある企業がその属する市場において、どれだけの生産量ないし供給量を占めているかという比率(パーセンテージ)。市場占有率、市場占拠率ともいう。マーケット・シェアを最大の企業から順に累積したものが集中度である。
経済分析においてマーケット・シェアが問題になるのは、次の二つの理由による。第一に、寡占企業は一般にマーケット・シェアの拡大を求めて競争するからである。それが上昇すれば、従業員の志気(モラール)の向上、金融市場の信用の上昇、規模の経済が達成されやすくなる等々の利益が生ずるので、それを求めて新製品の開発・創出、価格形成、市場展開などの経営戦略ないし市場行動が展開される。第二に、それが寡占産業の市場構造を左右するからである。マーケット・シェアの大きい企業、集中度の高い産業ほど、その売上利潤率、資本利潤率が高いだろうし、その価格に占める販売費用が大きく、それを利用して製品差別が行われやすく、参入阻止も行われやすいという市場構造が形成される。
[一杉哲也]
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