ロシア・ソ連の育種家。コズロフ(現、ミチューリンスク)に生まれる。当時の貧しいロシアを「花咲く大地」に変える努力をし、約300種の優良品種(おもに果樹)を育成した。
ミチューリンの育種法の特徴は、交雑種の選択と雑種植物の育成法にある。交雑を新品種育成の出発点と考え、雑種の特徴は両親の遺伝的形質によるだけでなく、その多くが両親や雑種植物の育成過程の生活条件(管理)によること、とくに植物の生育初期が可変性、適応性に富んでいることを実証した。おもな育種法に遠隔交雑法とメントール(養育者)法がある。前者は地理的あるいは類縁的に離れた交雑親を選ぶことで、後者は接木(つぎき)変異を誘起させる場合、影響を与えようとする台木は成熟したものを選び、影響を受ける側の穂木は若い実生(みしょう)苗を選ぶことで、望ましい形質を子孫に導入する方法である。また遠縁交雑を容易にするための混合花粉受粉法、栄養接近接木法なども考案した。日本には彼の名にちなんだ「日本ミチューリン会」(東京)がある。
[柳下 登]
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…土壌肥沃度,単一土壌形成,牧草輪作体系などを中心として研究を展開したV.R.ウィリヤムス(1863‐1939)も土壌学者であり農学者であった。また果樹の品種改良を中心に,独自の方法を開発した園芸育種家I.V.ミチューリン(1855‐1935)の存在も見落とせず,さらに栽培植物の起源を問い,世界各地から栽培種,野生種を収集した遺伝学者N.I.バビロフ(1887‐1943)は,旧ソ連が現在保有する豊富な遺伝資源の礎を築いている。ただ若き日には優れた〈植物生育発展段階説〉を提唱したT.D.ルイセンコ(1898‐1976)が,一方でメンデリズムを否定し,さらに農学研究を忘却して政治的に動いたのは残念であった。…
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