イスラム法で,奴隷や土地に対する所有権を意味する語。その所有者をマーリクmālikという。歴史的には個人の私有地を指す用語として用いられることが多い。屋敷地,菜園,果樹園が私有の対象となったほか,村落の全体やその一部がカリフやスルタンから分与地(カティーア)として授与されることもあれば,荒蕪地や湿地帯が有力者により私領地(ダイア)として囲い込まれることもあった。カティーアとダイアにはミルクの権利が認められ,ともに売買,相続,贈与の対象とすることができた。アッバース朝時代に入り商業経済が発達すると,これらの手段を用いて商人,官僚,軍人などによる大土地所有が徐々に形成されてゆく。ミルクとされた土地の用益権についてみると,その所有者の取り分(ハック・アッラカバ)と小作人の取り分(ハック・アルアクラワ)のほかに,政府の取り分(ハック・バイト・アルマール)があり,これが税制上のウシュルに相当する。ウシュルの率は時代と地域によって異なり,1/10から1/3の間を前後していた。このようにミルク所有者がウシュルの納入と引換えに土地の完全な処分権を保持していたのに対して,国有地であるハラージュ地の農民には土地の私有権はなく,収穫物のおよそ1/2を地租として国家に納入することが義務づけられていた。エジプトについてみれば,ハラージュ地の農民に私的土地所有権が認められるようになるのは,19世紀後半になってからのことであった。
執筆者:佐藤 次高
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…哺乳類における乳腺の分泌液で,子の理想的な食物である。乳汁の組成は動物の種類によって異なり,ウシでは乾燥重量で,タンパク質と脂肪がおのおの20%,糖が60%を占める。それぞれの量は,子の成長が早い種類ほど多い。子の体重が生まれたときの倍になるまでの平均日数は,アザラシが5日,アナウサギが6日,イヌが8日,ネコが9日,ヒツジが10日,ブタが18日,ウマが60日であるが,乳汁1l中のタンパク質の量(g)は,アザラシ119,アナウサギ104,イヌ97,ネコ95,ヒツジ70,ブタ37,ウマ20である。…
…日本の来訪神には三つの形態がある。ひとつは仮面仮装した異形の姿で来訪するものであって,秋田のナマハゲ,能登のアマメハギ,三陸のナモミ,ヒガタタクリ,甑島(こしきじま)のトシドン,吐噶喇列島悪石島のボセ,宮古のパーント,八重山のアンガマ,アカマタ・クロマタ,ミルク(弥勒),マユンガナシ,フサマラーなどがある。仮面仮装する者の多くは若者であり,また特別の資格を備えた村人である。…
…【重松 伸司】
【中東】
イスラム法においては,土地はすべて信徒共同体(ウンマ)のものとされ,農民はムスリム,非ムスリムの別なくハラージュ(地租)を国家に納めることを原則とし,耕地の私有は認められていなかった。しかし現実には,カリフやスルタンから授与される分与地(カティーアqaṭī‘a)や荒蕪地などの開発によって得られる私領地(ダイアḍay‘a)には,所有権(ミルク)が認められ,これらの土地では奴隷や小作人などを用いた経営が行われていた。この私有地所有の伝統を基礎にして18~19世紀以降,アラブ,イラン,トルコの各地域において,広く大土地所有と小作人を用いた経営とが見られるようになる。…
※「ミルク」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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