(読み)ちち(英語表記)milk

翻訳|milk

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説


ちち
milk

哺乳動物の雌が,分娩後しばらくの間乳腺から分泌する液体。子動物のための栄養物。分娩後1週間に分泌される初乳は,成乳に比べて蛋白質は4~5倍,その他無機物,糖質,脂肪のいずれも多いため,少量で栄養が足りる。人乳と牛乳の差は,人乳の蛋白質はアルブミングロブリンで,胃に入ってから微小球となり吸収しやすいが,牛乳はカゼインが主で,胃の中で粗大顆粒となり凝固し,吸収しにくい。人の場合,平均的な1日の授乳量は約1lとされている。

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デジタル大辞泉の解説

ち【乳】

ちち。乳汁(にゅうじゅう)。「兄弟」「添え
「みどり子の―乞ふがごとく」〈・四一二二〉
《形が乳首に似ているところから》羽織・幕・旗などにつけた、ひもやさおを通すための小さな輪。「ひもをに通す」
釣鐘の表面にある、いぼ状の突起。
乳房。乳首(ちくび)。「の下」
「胸をあけて―などくくめ給ふ」〈横笛
乳金物(ちかなもの)」の略。

ちち【乳】

哺乳(ほにゅう)類が、分娩(ぶんべん)後に、子を育てるために乳腺(にゅうせん)から出す乳白色の液体。乳汁。「母親の」「牛の
乳房(ちぶさ)。「が張る」
植物の茎や葉から出る白色液汁

にゅう【乳】[漢字項目]

[音]ニュウ(慣) [訓]ちち ち
学習漢字]6年
〈ニュウ〉
ちち。「乳牛乳製品牛乳搾乳授乳粉乳哺乳(ほにゅう)母乳離乳
ちち状の液体。「乳液豆乳
乳房。「乳癌(にゅうがん)乳頭
母のちちを飲む年齢。「乳歯乳児
〈ちち〉「乳色
〈ち〉「乳首乳房
[難読]乳母(うば・めのと)

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百科事典マイペディアの解説

乳【ちち】

哺乳(ほにゅう)類において出産後しばらくの間乳腺から分泌される子動物のための栄養物。乳汁とも。成分はヒトの成熟乳で水分88.2%,タンパク質1.4%,脂肪3.1%,炭水化物7.1%,ほかに無機質,ビタミン類をも含む。分泌は脳下垂体前葉および女性ホルモンによって調整される。ウシやヤギなどの乳は,そのまま,または乳製品に加工され,食料として利用される(牛乳)。なお,哺乳類以外の動物にも,ハトの【そ】嚢(そのう)乳のような乳汁様の物質分泌が知られる。

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世界大百科事典 第2版の解説

ちち【乳 milk】

哺乳類における乳腺分泌液で,子の理想的な食物である。乳汁の組成は動物の種類によって異なり,ウシでは乾燥重量で,タンパク質と脂肪がおのおの20%,糖が60%を占める。それぞれの量は,子の成長が早い種類ほど多い。子の体重が生まれたときの倍になるまでの平均日数は,アザラシが5日,アナウサギが6日,イヌが8日,ネコが9日,ヒツジが10日,ブタが18日,ウマが60日であるが,乳汁1l中のタンパク質の量(g)は,アザラシ119,アナウサギ104,イヌ97,ネコ95,ヒツジ70,ブタ37,ウマ20である。

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大辞林 第三版の解説

ち【乳】

乳汁。ちち。 「 -飲み児」 「お-の人(=乳母)」 「 -飲めや君が乳母おも求むらむ/万葉集 2925
乳房ちぶさ。また、乳首。 「両の-」 「いとけなき子の、なほ-を吸ひつつ臥せる/方丈記」
旗・幕・羽織・草鞋わらじなどの縁に、竿・ひもなどを通すためにつけた小さな輪。みみ。
釣り鐘の表面に多数並んだ小さな疣いぼ状の突起。 → 梵鐘ぼんしよう

ちち【乳】

哺乳動物が分娩後に、乳腺から分泌する白色不透明の液。脂肪・タンパク質・乳糖・無機物を含み、これによって子を養う。ち。ちしる。乳汁。 「 -を吸う」
ちぶさ。にゅうぼう。 「 -が張る」
植物の葉や茎を傷つけた時に出る、乳汁に似た白色液。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説


ちち

哺乳(ほにゅう)類の雌親の乳腺(にゅうせん)から分泌される液体。新生子は一定期間、乳のみを養分として育つ。組成は種によって異なるが、牛乳では水87%、タンパク質3%、脂肪4%、糖分(主として乳糖)4.5%、無機物0.7%で、そのほかに微量のビタミン類を含む。タンパク質の大部分はカゼインで、炭水化物としてはラクトースを含む。1キログラム当り約660キロカロリーの熱量をもつ。人乳は牛乳よりタンパク質が少なく、糖分が多い。一般に成長速度の速い動物の乳ほど、タンパク質の含有量が多い。出産直後(ヒトでは4~5日)の乳は初乳(しょにゅう)とよばれ、白血球や脂肪粒を含み、また免疫グロブリンAを相当量含んでいる。免疫グロブリンAは新生子の腸で吸収されて、粘膜表面における感染防御に役だつといわれる。乳腺の発達と乳の分泌は、主としてプロラクチンと黄体ホルモンのバランスによって支配されている。プロラクチンは乳腺の発育を促進し、乳の分泌を開始させるが、妊娠中は黄体ホルモンが高濃度に存在して泌乳を抑制する。分娩(ぶんべん)時に黄体ホルモンが減少して泌乳が始まる。ただし、プロラクチンも黄体ホルモンも単独で作用することはなく、数種類のホルモンが共同して働く。ヒトの新生子(児)の場合、母乳を与えるのがもっとも理想的なのは当然であるが、最近は母乳と粉乳、あるいは粉乳のみを与えることも多くなった。粉乳は牛乳を乾燥したものに適当な養分を加えたものである。[八杉貞雄]

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精選版 日本国語大辞典の解説

ち【乳】

〘名〙
哺乳動物が子を産んだ後に、その乳房から分泌する、産んだ子を養うための乳白色の液体。ちち。乳汁(ちしる)。ちちのしる。
※万葉(8C後)一八・四一二二「緑児(みどりこ)の 知(チ)乞ふが如く 天つ水 仰ぎてそ待つ」
※名語記(1275)三「牛のちをにうとて仏に供する」
② 乳房。また、乳房の先端の乳首(ちくび)
※源氏(1001‐14頃)薄雲「ふところに入れて、うつくしげなる御ちをくくめ給ひつつ」
※滑稽本・浮世床(1813‐23)二「乳下(チのした)より両足まで全身泥にまみれて」
③ 乳を飲んでいる頃の幼児。乳飲み子。
※曾我物語(南北朝頃)三「なんぢ、いかなるむくいにて、ちのうちにして、父におくれ」
④ (形が乳首に似ているところから) 竿(さお)・綱・紐(ひも)などを通すために、旗・幟(のぼり)・幕・蚊帳・羽織・草鞋(わらじ)などのふちにつけた小さな輪。みみ。〔十巻本和名抄(934頃)〕
浮世草子西鶴織留(1694)一「此(この)蚊帳を見れば、〈略〉乳(チ)毎に五色の房を付」
釣鐘の表面に多数並んでいる疣(いぼ)状の突起。音響効果を大きくするために付ける。にゅう。また、それに形の似た突起。〔名語記(1275)〕
※良人の自白(1904‐06)〈木下尚江〉前「乳打ったる厳めしき表門に」

ちい【乳】

〘名〙
① 乳汁。また、乳房。ちち。ち。
※南海寄帰内法伝平安後期点(1050頃)二「乳(チイ)高くして内に起てりとも、誠に過無きに在り」
乳母(うば)をいう小児語。
咄本・昨日は今日の物語(1614‐24頃)上「乳房にも酒をぬらねば飲みつかなんだと乳(チイ)がいふ」

ち‐ち【乳】

〘名〙 (「ち(乳)」を重ねた語)
哺乳動物が分娩後に、子を育てるために乳房の乳腺から分泌する乳白色不透明の液体。ち。ちしる。ちちしる。にゅうじゅう。
※狂言記・子盗人(1700)「うばがちちをしんぜませふ」
※収穫(1910)〈前田夕暮〉上「風暗き都会の冬は来りけり帰りて牛乳(チチ)のつめたきを飲む」
② 乳房(ちぶさ・にゅうぼう)
※浮世草子・西鶴織留(1694)六「心をしづめて食なと喰れたらば乳(チチ)もはるべし」
③ 植物の茎や葉に傷をつけたとき出る白色の液汁。ちちしる。
④ (幹や枝から下垂する気根が乳房状になるところから) イチョウの気根の俗称
茶壺の肩部に付けられた耳をいう。四耳が一般的だが、蓋を抑える紐を通すためのものと考えられている。

にゅう【乳】

〘名〙
① 子を養うために母体から分泌する液体。ちち。ち。
※宝物集(1179頃)「たとへば牛馬羊之乳(ニウ)の中に師子之乳入れば」 〔漢書‐張蒼伝〕
② 乳頭状をした突起。
③ 釣鐘の疣(いぼ)状の突起。ち。
※太平記(14C後)一五「隠しける九乳(ニウ)の鳧鐘(ふしょう)も取る人なければ」

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世界大百科事典内のの言及

【梵鐘】より

…俗に鐘,釣鐘(つりがね)とも呼ぶが,古くからその形状や由縁によって多くの異称がある。おもなものに突鐘(つきがね),洪鐘(こうしよう),撞鐘(どうしよう),鴻鐘(こうしよう),蒲牢(ほろう),鳧鐘(ふしよう),九乳(くにゆう),青石(せいせき),華鯨(かげい),霊鐘(れいしよう)などがあげられる。インドの仏寺で用いた打楽器をさす犍稚(かんち∥けんち)(犍椎(かんつい∥けんつい))も梵鐘の異称となっているが,インドには金属製の鐘がなかった。…

【ミルク】より

…イスラム法で,奴隷や土地に対する所有権を意味する語。その所有者をマーリクmālikという。歴史的には個人の私有地を指す用語として用いられることが多い。屋敷地,菜園,果樹園が私有の対象となったほか,村落の全体やその一部がカリフやスルタンから分与地(カティーア)として授与されることもあれば,荒蕪地や湿地帯が有力者により私領地(ダイア)として囲い込まれることもあった。カティーアとダイアにはミルクの権利が認められ,ともに売買,相続,贈与の対象とすることができた。…

【食事】より

…ひづめが分かれていず,胃袋で反芻(はんすう)することをしない動物の食用が禁じられているので,ブタやウマを食べることは許されないし,うろこ,ひげのない魚であるエビ,カニ,イカ,タコもユダヤ教徒は食べてはならない。動物の料理のしかたにもおきてがあり,ミルクや乳製品と肉をまぜてはならないとされるので,肉をバターでいためたり,肉とチーズをいっしょに料理することも戒律に反する。食物にたいする宗教的規制が比較的ゆるやかであるとされるキリスト教でも,かつては灰の水曜日から復活祭前夜までの46日間は,日曜日以外は肉食が禁じられていたし,現在でも金曜日には肉食をせず,代りに魚を食べる習慣を守る人々も多い。…

【料理】より

…現在では家庭における飯炊きは精白米を計って洗うことから始まるが,米屋が出現するまでは脱穀,精白などの作業が飯炊きの延長上にあるしごととして家庭で行われていたのである。また,多くの先進社会においては,バター,チーズなどの乳製品をつくる作業は食品産業の一部門となっているが,以前は専業の職人のしごととされ,それ以前の段階では家庭でなされる料理の一部であった。漬物などの保存食品や発酵食品,みそ,しょうゆなどの調味料つくりも日本の家庭の台所しごとであったものだが,食品加工の分野にとって代わられつつある。…

【三角縁神獣鏡】より

…たとえば,鏡銘に魏の景初3年(239)や正始元年(240)の紀年をふくむ鏡は,重列式神獣鏡と同じ配列を用いている。獣形の前後肢の基部を環状に表現しているので,環状乳神獣鏡とよぶ鏡の内区を模作したものもある。 しかし,先行する神獣鏡から借用したのは内区の図文のみであって,内区の外周をめぐる半円方形帯や,平縁(ひらぶち)の外区を飾る画文帯などを再現することは,三角縁神獣鏡ではきわめてまれである。…

【梵鐘】より

…俗に鐘,釣鐘(つりがね)とも呼ぶが,古くからその形状や由縁によって多くの異称がある。おもなものに突鐘(つきがね),洪鐘(こうしよう),撞鐘(どうしよう),鴻鐘(こうしよう),蒲牢(ほろう),鳧鐘(ふしよう),九乳(くにゆう),青石(せいせき),華鯨(かげい),霊鐘(れいしよう)などがあげられる。インドの仏寺で用いた打楽器をさす犍稚(かんち∥けんち)(犍椎(かんつい∥けんつい))も梵鐘の異称となっているが,インドには金属製の鐘がなかった。…

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