ミロ(読み)みろ(英語表記)Joan Miró

デジタル大辞泉 「ミロ」の意味・読み・例文・類語

ミロ(Joan Miró)

[1893~1983]スペインの画家。抽象的、記号的な形象と明るい色彩との調和により、天真爛漫らんまんで幻想的な画風を確立した。バレエの舞台装置・版画・彫刻・陶器などでも活躍。

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精選版 日本国語大辞典 「ミロ」の意味・読み・例文・類語

ミロ

  1. ( Joan Miró ジョアン━ ) スペインの画家。パリに出てフォービスムキュービズムの影響を受けたのち、空想とユーモアに満ちた独自のシュールレアリスム的画風を確立。彫刻・陶器・版画の作品もある。(一八九三‐一九八三

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミロ」の意味・わかりやすい解説

ミロ(Joan Miró)
みろ
Joan Miró
(1893―1983)

スペインの画家で、シュルレアリスムを代表する芸術家。4月20日カタルーニャのバルセロナに時計貴金属商の子として生まれる。商人にしたかった両親の希望に反して絵画を好み、一時生地のラ・ロンハ美術学校に籍を置いたのち、1912年からガリ画塾(アカデミー)で学び、18年に同市の前衛的なダルマウ画廊で初の個展を開いた。フォービスムの影響の強いその作品群にすでに、カタルーニャの風土と歴史に深く根ざしたミロ芸術の本質的な傾向が強く表れている。19年パリに出てピカソに会い、キュビスムの影響を受け、21年同市での初の個展を開く。22年にバルセロナ近郊モンロイの別荘を描いた傑作『農園』や、カタルーニャの風土をモチーフとした23年の『耕地』などで、シュルレアリスムに移行した。その傾向は、24年アンドレ・ブルトンを主唱者とするシュルレアリスム運動への参加で決定的となる。同じころの『アルルカンの謝肉祭』は、対象の記号化による自由なイメージとオートマティスムによる幻覚的なミロ芸術の出発点となった。オブジェやコラージュも試みるが、36年のスペイン内戦勃発(ぼっぱつ)前後から40年ごろまでの作品は暗さを増し、37年にはパリ万国博覧会のスペイン共和国館に、ピカソの『ゲルニカ』とともに『刈り入れ人』(逸失)を発表した。

 第二次世界大戦中はバルセロナに帰って『星座』の連作に取り組み、象形文字化された星や女や鳥などが夢幻的な空間を浮遊する詩情あふれる絵画世界を達成した。第二次大戦後はアメリカに行ってその前衛芸術の展開に寄与するとともに、マリョルカ(マジョルカ)、バルセロナ、パリを行き来しながら、絵画、版画、彫刻、陶器、オブジェと作域を広げ、つねに新しい造形を試みて若い芸術家に刺激を与え続けた。1983年12月25日マリョルカに没。

 ミロは、スローガンを掲げる芸術家でもなければ、制作を通じて観(み)る者に問題を押し付けることもしない。伝統あるカタルーニャの風土や人と動物、12世紀のロマネスク絵画、路傍や海辺に転がる老木や石ころにインスピレーションを得て、それらを現代的な記号に変え、優れた技術によって夢の世界を、ときには幼児のように純粋で、ときには独特の諧謔(かいぎゃく)とユーモアに満ちた夢の世界を、われわれに提示するのみである。バルセロナには、若い芸術家の創造的な実験の場としても開放されたミロ美術館(1976開館)がある。1966年(昭和41)と70年の2回日本を訪れ、70年には大阪万国博覧会のガス館のための陶板による大壁画を制作した。

神吉敬三

『J・ミロ、G・ライヤール著、朝吹由紀子訳『ミロとの対話』(1978・美術公論社)』『東野芳明解説『現代世界美術全集18 エルンスト/ミロ』(1971・集英社)』

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百科事典マイペディア 「ミロ」の意味・わかりやすい解説

ミロ

スペインの画家。バルセロナ生れ。同地の美術学校に学ぶと同時に,展覧会などを通じてフォービスムキュビスムの影響を受けた。1918年最初の個展を開き,翌年パリに出てピカソを知る。郷里のモントロイグの描いた《農園》(1921年―1922年)を最後に具象から離れ,シュルレアリスムの影響を受けた抽象的傾向の作品を発表。象形文字のようなフォルムと鮮明な色彩との美しい調和,童話的な幻想性と独特のユーモアが特色。コラージュやオブジェなどの新しい技法も試み,版画,陶器,舞台装置等の作品も多い。滝口修造との交友が知られる。
→関連項目カリグラフィーゴーキーマッソンユネスコ(UNESCO)

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改訂新版 世界大百科事典 「ミロ」の意味・わかりやすい解説

ミロ
Joan Miró
生没年:1893-1983

シュルレアリスムの代表的な画家。スペインのバルセロナに生まれ,同地の美術学校で学ぶ。1918年バルセロナで最初の個展。翌年パリに出る。はじめは静物や風景を素朴な感情で克明に描いていたが,24年ころから対象の外観にとらわれず記号に近いイメージを自由に描くようになる。同時にブルトンらと出会い,シュルレアリスム運動に参加。即興的な表現はしだいに自在さをましてゆき,明るい色調でオートマティックにあらわす形体から独特なユーモアがあふれ出る。1935-40年ごろの一時期はスペイン内乱や第2次大戦などが反映し,作風が暗くなった。油絵や水彩,版画などのほかにもオブジェや彫刻,陶器なども手がけ,多作である。代表作に《農園》(1921-22)やグアッシュの連作《星座》(1941)など。天真爛漫で自発的な表現は戦後アメリカの若い画家たちにも強い影響を与えた。56年以降はスペインで旺盛な制作活動を続けた。日本に2度来訪。
執筆者:


ミロ
Titus Annius Milo
生没年:?-前48

共和政末期のローマの政治家。ポンペイウスの勢力をバックにクロディウスP.Clodiusの民衆扇動を妨害すべく前57年の護民官に就任,以来両者の率いる暴徒,剣奴(グラディアトル)団の街頭衝突により首都は数年間混乱に陥った。訴訟戦の末プラエトルとなってからはコンスル職をねらってポンペイウス派を離脱。前52年,プラエトル立候補中の宿敵クロディウスをアッピア街道上に襲撃して殺害し,有罪とされてローマ市を退去したが,前48年再び騒擾を企て処刑された。
執筆者:

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ミロ」の意味・わかりやすい解説

ミロ
Miró, Joan

[生]1893.4.20. バルセロナ
[没]1983.12.25. パルマ
スペインの画家,彫刻家。生地バルセロナの美術学校に 14歳で入学,次いで同地のアカデミー・ガリで学んだ。 1918年最初の個展を開き,当時は具象的であるが激しい色彩の反アカデミズム的作風を示した。翌 19年パリに行き,ピカソやキュビスムの画家,ダダイストのグループと交わり,A.ブルトンの理論に共鳴,シュルレアリスムの運動に加わった。 1920年代後半から超現実主義的幻想に装飾性を加味したユーモア感覚のある曲線と色彩による独自の画風を展開し,またコラージュも手がけた。バレエの舞台装置や壁画の創作でも活躍。 38年のパリ万国博覧会ではスペイン館にピカソの『ゲルニカ』と並んで壁画『刈入れ人』を描く。第2次世界大戦を機にスペインに戻り,バルセロナとマヨルカ島の農園で制作を続け,44年にはフランスで陶器と彫刻に没頭し,47年以降はアメリカでも活躍。 53年から版画も制作し,70年の大阪万国博覧会に壁画『笑い』を出品した。バルセロナにミロ美術館がある。主要作品『農園』 (1921~22) ,連作『オランダの室内』 (28,ニューヨーク近代美術館ほか) 。

ミロ
Milo, Titus Annius

[生]?
[没]前48. コサ
古代ローマの政治家。ポンペイウス派に属し,カエサル派の L.クロディウスと無法者や剣闘士奴隷 (グラディアトル ) を率いて抗争。前 54年には執政官 (コンスル ) 職当選を目指して壮大な競技を主催した。前 52年クロディウスを殺し,マッシリア (現マルセイユ) に追放された。のちユリウス・カエサルに対抗した M.カエリウス・ルフスに組して殺された。妻ファウスタは L.スラの娘。

ミロ
Miró, Gabriel

[生]1879.7.28. アリカンテ
[没]1930.5.27. マドリード
スペインの小説家。詩的な暗示に富んだ絶妙の散文で,スペインのレバンテ地方の世紀末風俗を描写した。代表作は,悲恋にまつわる怪奇的なロマン『墓地のさくらんぼ』 Las cerezas del cementerio (1911) ,イエスにかかわる人物たちのスケッチ集『わが主キリスト受難の絵巻』 Figuras de la pasión del Señor (16~17) ,印象主義的な小説『われらの神父サン・ダニエル』 Nuestro Padre San Daniel (21) ,その後編ともいえる『癩病みの司教』 El obispo leproso (26) 。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「ミロ」の解説

ミロ
Joan Miró i Ferrà

1893~1983

スペイン,カタルニャの画家,彫刻家。バルセロナの生まれ。初期の画風はフォーヴィズムの影響を受けた表現主義だったが,のちに超現実主義の影響を受け,記号に近い自由で天真爛漫な画風の世界を開拓した。

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旺文社世界史事典 三訂版 「ミロ」の解説

ミロ
Joan Miró

1893〜1983
現代スペインの画家・版画家
シュールレアリスムに属し,明るい色彩と自由で単純なフォルムによる幻想絵画の世界を開いた。代表作は,スペイン内戦を題材にした「刈入れ」(壁画),「星座」シリーズ,「アルカンの謝肉祭」などがある。また,絵画のほかに彫刻・版画・陶器などでもすぐれた作品を残している。

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デジタル大辞泉プラス 「ミロ」の解説

ミロ

2026年にミラノ・コルティナダンペッツォで開催予定の冬季パラリンピックの公式マスコット。茶色いオコジョ。名称は開催地のミラノにちなむ。オリンピックのマスコット「ティナ」とはきょうだい。

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