ヤンバルクイナ(読み)やんばるくいな(英語表記)Okinawa rail

改訂新版 世界大百科事典 「ヤンバルクイナ」の意味・わかりやすい解説

ヤンバルクイナ (山原秧鶏)
Okinawa rail
Rallus okinawae

ツル目クイナ科の鳥。沖縄本島の特産種で,本島北部の山林留鳥として生息している。ヤンバルはこの種が発見された本島北部の国頭地方の別名。全長約30cm。頭上および背面は暗オリーブ褐色,顔とのどは黒く,眼の後ろに白斑がある。上胸以下の下面は黒と白の横縞模様で,くちばしと脚は赤い。幼鳥は顔の黒色部や下面の模様が成鳥ほど鮮明でなく,くちばしは黒っぽい。山林や湿地近くの茂みのなかに単独かつがいですみ,ほとんど地上で生活しているが,夜は木の上にとまって眠るといわれている。この鳥は飛翔(ひしよう)力がほとんどないらしく,かなり大きな翼をもってはいるが,飛ぶのを見た人はまだいない。食物は植物質の餌や穀物が報告され,おそらく昆虫類や小動物もとると考えられる。しかし,詳しい生態はほとんどわかっていない。巣と卵は1984年に発見された。

 ヤンバルクイナは1981年に新種として記載されたが,日本国内で新種の鳥が発見されたのは今世紀になって初めてのことである。そのため大きなニュースとして扱われ,一躍有名になった。現在天然記念物などに指定され,保護されているものの,生息数は多くなく,生態の解明と保護が重要な課題となっている。
クイナ
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヤンバルクイナ」の意味・わかりやすい解説

ヤンバルクイナ
やんばるくいな / 山原秧鶏
Okinawa rail
[学] Rallus okinawae

鳥綱ツル目クイナ科の鳥。全長約30センチメートル。頭上および背面は暗オリーブ褐色、顔とのどは黒く、目の後ろに白斑(はくはん)がある。上胸以下の下面は黒と白の横縞(よこじま)模様。嘴(くちばし)と足は赤い。飛翔(ひしょう)力はほとんどない。沖縄本島の特産種で、島の北部の山林に留鳥として生息している。ヤンバルは沖縄本島北部の国頭(くにがみ)地方の別名で、生息地を表している。この鳥は1981年(昭和56)に新種として記載されたが、日本国内で新種の鳥が発見されたのは、20世紀になって初めてである。1984年4月にみつかった巣は、シダ低木の生い茂った急斜面のシダの根元にあった。浅い皿状の地上のくぼみに枯れ葉や落ち葉を敷き、その中にクリーム色の地に褐色または淡青色の斑点のある5個の卵がみられた。発見の2日後に巣内には、多くのクイナ類の雛(ひな)と同様に黒色をした雛が3羽いたという。

[森岡弘之]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヤンバルクイナ」の意味・わかりやすい解説

ヤンバルクイナ
Gallirallus okinawae; Okinawa rail

ツル目クイナ科。全長約 30cm。頭上,背,尾,は褐色。喉の下嘴基部に近い部分,眼先,眼の後方部分は黒色で,眼の真下から側頸部にかけてよく目立つ白い筋模様がある。頸から腹は白と黒の細かい横縞模様。,脚,眼の虹彩は鮮赤色。沖縄島北部にのみ留鳥として分布する。1981年に死体と捕獲した個体によって新種として記載された。平地から低山の森林に単独かつがいで生息する。個体数は少なく,2011年現在 1000羽程度と推定されている。フィリピン諸島,スラウェシ島ニューギニア島北西部などに分布しているムナオビクイナ G. torquatus にきわめて近縁の種であると考えられている。和名の「ヤンバル」は,沖縄島北部の山地の呼称「山原」に由来する。1982年に国の天然記念物に,1993年に国内希少野生動植物種に指定されている。

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百科事典マイペディア 「ヤンバルクイナ」の意味・わかりやすい解説

ヤンバルクイナ

クイナ科の鳥で,1981年沖縄島北部で発見された新種。山階鳥類研究所員が同年6〜7月に与那覇岳(498m)の原生林で捕獲した。翼長約15cm,くちばしと脚が鮮紅色。沖縄本島北部の山原(やんばる)とよばれる地域だけの固有種で,ほとんど飛べない。地上で昆虫,カタツムリなど小動物を食べるとされる。天然記念物。絶滅危惧IA類(環境省第4次レッドリスト)。
→関連項目クイナ

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世界大百科事典(旧版)内のヤンバルクイナの言及

【遺存種】より

…種ばかりでなく,ファウナ(動物相)やフロラ(植物相),また個体群についても用いられることがある。ふつう沖縄本島のヤンバルクイナや西表(いりおもて)島のイリオモテヤマネコのように,島に孤立化している地理的に分布の狭いものが例にあげられているが,いろいろなカテゴリーのものが含まれている。すなわち,アメリカのバイソンのように,かつては個体数が豊富であったのに少数しか残存していないもの(数量的遺存種),メタセコイアのようにユーラシアの広い地域に分布していたものが,現在は中国四川省の限定された狭い地域にだけ生き残っているもの(地理的遺存種),シャミセンガイのように5億年もの間,ほとんど変化することなく例外的にゆっくりと進化したもの(系統的遺存種),ゾウのようにかつてはたくさんの類縁種があったのに,現在では2種しか存在せず類縁種の数が少なくなったもの(分類的遺存種)などである。…

※「ヤンバルクイナ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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