日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヨメナ」の意味・わかりやすい解説
ヨメナ
よめな / 嫁菜
[学] Aster yomena (Kitam.) Honda
Kalimeris yomena Kitam.
キク科(APG分類:キク科)の多年草。長い地下茎がある。茎は高さ0.6~1.2メートル、上部で分枝し、紫色を帯びることが多い。葉は披針(ひしん)形で粗い鋸歯(きょし)があり、表面はやや光沢がある。7~10月、分枝した枝先に径約3センチメートルの頭花をつける。痩果(そうか)は長さ3.5センチメートル、冠毛は長さ0.5ミリメートル。山野や田の畦(あぜ)などに普通に生え、本州から九州に分布する。コヨメナとユウガギクより大形の近縁種オオユウガギクとの交雑種と考えられている。昔から美味な食用野菜として知られ、若葉をゆでて食べる。
[小山博滋 2022年5月20日]
文化史
古名はオハギ(『出雲風土記(いずもふどき)』)あるいはウハギで、『万葉集』にはウハギの名で2首載る。春の摘み草の対象とされ、「春日野(かすがの)に煙(けぶり)立つ見ゆ娘子(おとめ)らし春野の菟芽子(うはぎ)採(つ)みて煮らしも」(巻10)と詠まれているように、よく食べられていたとみられる。江戸時代はヨメガハギともよばれ食用にされた(『菜譜』)。ヨメナは身近な野生菊の一つで、野菊の代表である。伊藤左千夫(さちお)の『野菊の墓』の野菊も、舞台となった千葉県松戸市の矢切(やぎり)近辺にありふれたカントウヨメナとみられる。
[湯浅浩史 2022年5月20日]