春日野(読み)カスガノ

デジタル大辞泉 「春日野」の意味・読み・例文・類語

かすが‐の【春日野】

奈良市春日山の麓一帯の野原。[歌枕
「―の飛火野守いでてみよ今いくかありて若菜つみてむ」〈古今・春上〉

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精選版 日本国語大辞典 「春日野」の意味・読み・例文・類語

かすが‐の【春日野】

  1. 奈良市、春日山の西側のふもと一帯の原野。現在の奈良公園の付近。若菜、シカツツジ名所。歌枕。
    1. [初出の実例]「春日野(かすがの)に朝居る雲のしくしくに我(あ)は恋ひまさる月に日に異(け)に」(出典:万葉集(8C後)四・六九八)

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日本歴史地名大系 「春日野」の解説

春日野
かすがの

現在春日野といわれる地は、若草わかくさ山・御蓋みかさ山の西麓に続く台地で、西方は奈良市街地に及ぶ。北は佐保川、南は能登のと川で限られ、東西約二キロ、南北は東部が約二キロ、西部が一キロとなり、海抜九〇―一一〇メートルで、盆地底(おもな市街地の地域)との比高は約一五―二〇メートルである。この台地はさらに北部吉城よしき川(上流水谷みずや川)、南部の尾花谷おばなだに川の小浸食によって三分される。北部には東大寺、中部には春日大社興福寺が建立され、南部の尾花谷川の谷にはあら池・さぎ池が築造され、その南側は高畑たかばたけから西方の瑜伽ゆが山にかけて標高一〇〇メートル余の小山が細長く延び、その先端部には現在奈良ホテルがある。

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改訂新版 世界大百科事典 「春日野」の意味・わかりやすい解説

春日野 (かすがの)

歌枕。奈良の春日大社の境内から東大寺・興福寺へかけてひろがる,平城京東郊の台地。現在の奈良市春日野町。《続日本紀》和銅5年(712)正月の条に見られるように,烽(とぶひ)を置いたので〈とぶひの〉とも称する。《万葉集》巻十〈春日野の浅茅が上に思ふどち遊ぶけふの日忘らえめやも〉,《古今集》巻一〈春日野の飛火の野守出でて見よいまいく日(か)ありて若菜つみてむ〉など多くの歌に詠まれた。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「春日野」の意味・わかりやすい解説

春日野
かすがの

奈良市街地東部、若草山、御蓋(みかさ)山(三笠(みかさ)山)西麓(せいろく)の台地で、北は佐保(さほ)川、南は能登(のと)川に限られ、東は奈良公園内一帯から市街地に及ぶ。洪積層からなる緩やかな波状の台地で、一面芝生で覆われ、老杉が茂りアシビが群生し、シカが群れ遊ぶ光景は奈良公園の象徴をなし、観光客に親しまれている。市街地との比高は約15~20メートルで、北部に東大寺、中央に春日大社、興福寺があり、石川郎女(いしかわのいらつめ)の「春日野の山辺の道を恐(おそ)りなく通ひし君が見えぬころかも」(『万葉集』巻4)、読人しらずの「春日野はけふはな焼きそ若草の妻もこもれり我もこもれり」(『古今集』)など、多くの歌集に詠まれている。

[菊地一郎]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「春日野」の意味・わかりやすい解説

春日野
かすがの

奈良市の市街地東部,東大寺春日大社の間に広がる奈良公園 (名勝) の主要部。ゆるやかな起伏の洪積台地で,芝生におおわれ,ところどころに老杉やアセビが茂り,シカが群れ遊ぶ景勝地。『万葉集』に詠まれた植物を集めた万葉植物園などがある。

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動植物名よみかた辞典 普及版 「春日野」の解説

春日野 (カスガノ)

植物。バラ科のウメの園芸品種

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世界大百科事典(旧版)内の春日野の言及

【興福寺】より

…興福寺の寺地は平城京の左京三条七坊(外京)を占め,官営工事も加わって天平盛代には七堂伽藍をそなえた。なお四条七坊の一画の猿沢池が園池として,また東松原27町(春日野)が寺地に付加されたため,南方は元興寺,北東方で東大寺と寺地を接するに至った。 平城廃都の打撃はほとんど受けず,813年(弘仁4)に藤原冬嗣が南円堂(本尊不空羂索観音)を建立して盛運を授かったと伝えられるなど,藤原氏一門の崇信をあつめた。…

※「春日野」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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