大脳深部に血液を供給する細い動脈(穿通枝(せんつうし))の閉塞により生じる、径15ミリメートル以下の小さな脳梗塞。ラクナはラテン語で小窩(しょうか)(小さい空洞・くぼみ)の意味である。高血圧症による動脈硬化や加齢などが原因で、安静時や睡眠中、早朝起床時に発症頻度が高い。梗塞する部分が小さいためそれ自体が大きな発作を引き起こすことは少ないが、これが原因で脳卒中発作を起こすと、片麻痺(へんまひ)(半身麻痺)、純運動性片側感覚障害(半身のしびれ)、運動失調性片麻痺、構音障害などに陥る。ラクナ梗塞のなかでもとくに小さいものや発症する場所によっては、自覚症状がない場合もある。これは無症候性脳梗塞とよばれるもので、高齢者に多くみられ、高血圧症のほか糖尿病、脂質異常症などに伴うことが多く、梗塞の数の増加や大きな梗塞の発症により発見されることが多い。
脳梗塞はその原因によって、アテローム血栓性脳梗塞(頸部(けいぶ)から頭蓋(とうがい)内の比較的太い動脈に余分なコレステロールが沈着して動脈硬化が発生する)、心原性脳梗塞症(心臓にできた血栓が頸動脈を通り、脳動脈に至って血管を詰まらせる)、ラクナ梗塞に大別される。「脳卒中治療ガイドライン2009」によると、従来、日本人の脳梗塞はその約半数をラクナ梗塞が占めていたが、その割合は年々減少している。食生活の欧米化などにより、ラクナ梗塞以外の脳梗塞が増えているためとみられる。
[編集部]
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報
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