リチウムイオン Li+ が電極反応に関与している電池.旧来は金属リチウムを負極とする一次電池および二次電池のことをリチウム一次電池,リチウム二次電池とよび,それらの総称をリチウム電池とよんでいた.しかし,1990年代に入り,金属リチウムを用いず,リチウムを含む化合物をそれぞれ正極・負極に用いたリチウムイオン電池が実用化されると,それらを含めてリチウム電池と称するようになった.リチウムは非常に軽く,酸化還元電位が水素標準電極に対して-3.04 V と非常に低いため,適切な正極材料を用いることにより,電池1個当たり3 V 以上の放電電位が得られ,単位重量当たりでは非常にエネルギー密度の高い電池を構成することが原理的に可能である.負極を金属リチウムとし,正極材料をAとすると,リチウム一次電池の放電反応の電極反応式は下記のとおりとなる.
負極 xLi → xLi+ + xe-
正極 A + xLi+ + xe- → LixA
全体 A + xLi → LixA
金属リチウムを負極,酸化物あるいは硫化物を正極,リチウム塩を有機溶媒に溶解させた有機電解液を負極とするリチウム一次電池が1960年代より検討されはじめ,1970年代に実用化された.現在でも,電卓や時計の電源として用いるコイン型や,カメラ用の円筒型のリチウム一次電池が広く用いられている.リチウム二次電池に関しても,1960年代より研究が開始され,1980年代に負極に金属リチウムを用いたものが一時期実用化されたことがあるが,安全性および可逆性の問題から使用されなくなった.その後,1990年代に入り,金属リチウムを一切用いないリチウムイオン二次電池が実用化され,ノートパソコン,携帯電話などの携帯機器用の電源として幅広く用いられるようになった.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
リチウムを陰極に用いた電池。リチウムは金属のなかで最も軽く,標準電極電位も-2.91V(水素電極基準)と最も卑なので,リチウムを陰極に用いた電池は起電力が大で,軽量であることが大きな特徴である。高エネルギー密度の小型電池として将来の用途が注目されており,現在のところ電子機器用電源,ペースメーカー用電源などに用いられている。しかしリチウムは水と激しく反応して水素を発生するので,電解質には水溶液を用いることができず,プロピレンカーボネートなどの有機質非プロトン性溶媒に過塩素酸リチウムLiClO4などの電解質を溶解させた非水溶液,あるいはヨウ化リチウムLiIなどの固体電解質が用いられる。表におもなリチウム一次電池を示す。硫化チタンTiS2などを陽極活物質に用いた電池は放電時にその結晶にLi⁺が侵入し,充電すると可逆的にLi⁺が電解質中へ追い出されるので,二次電池としての可能性が研究されている。また,リチウム-水系の注水電池の開発も行われている。
執筆者:笛木 和雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
突発的に発生し、局地的に限られた地域に降る激しい豪雨のこと。長くても1時間程度しか続かず、豪雨の降る範囲は広くても10キロメートル四方くらいと狭い局地的大雨。このため、前線や低気圧、台風などに伴う集中...